ブリッジマン

わたる「なぁ、"ブリッジマン"って知ってる?」


学校からの帰り道。小学3年生の小林 和樽(こばやし わたる)は隣で小石を蹴っている親友の大河 真祐(おおかわ しんすけ)に問いかけた


しんすけ「ブリッジマン?なにそれ?」


わたる「学校にいる都市伝説の怪人で、ブリッジしながら子供を追いかけるんだって!」


しんすけ「へー!捕まったらどうなっちゃうの?」


わたる「えー、わかんない」


しんすけ「わかんないの?!」


しんすけは呆れてため息をつく


わたる「だってネットに書いてなかったもん」


しんすけ「なんだ、ネットで見つけたんだね」


わたる「でもね、助かる方法は書いてあったんだ!!」


わたるが食い気味に言ってきて、しんすけは驚いて目を丸くした


しんすけ「ど、どうやったら助かるの?」


わたる「家庭科室と理科室の間に行って『坊ちゃん』って3回言うと、坊主の男の子の幽霊が現れて、ブリッジマンを倒してくれるらしいんだ!」


しんすけは「へ〜」と相槌を打ちながらあることを思った


しんすけ「ねぇ、もしうちの学校で現れたらどうするの?」


2人が通う学校は理科室が1階にあり、家庭科室は2階にあるのだ。間がどこなのかがわからない


わたる「確かに…大体間だったらいいんじゃね?」


しんすけ「そうなのかなぁ?」


わたる「どうせ都市伝説だから、実際に現れるわけないしその心配はしなくていいじゃん」


わたるは笑いながら言う


しんすけ「なんだよ、信じてないのかよ!」


わたる「あれ、信じてると思われてた?」


しんすけ「突然ブリッジマンの話するから、てっきり信じてると思ってた!」


しんすけは頬を膨らませる。それを見てわたるは笑った


わたる「あははっ!ただ話したかっただけ!」


しんすけ「もー…でも、ちょっと面白かったかも」


わたる「ほんと!?ねぇ、しんすけは都市伝説信じる?」


しんすけ「信じないよ!でもいたら面白そうだなって思ってる!」


わたる「そっか!確かにいたら面白そう!…じゃあ俺こっちだから、また明日ね!」


しんすけ「あぁ、じゃあな〜!」


わたるとしんすけは別れ、それぞれ家へ帰った





翌日の昼休み、しんすけは読書をしているとわたるが駆け寄ってきた


わたる「ねぇねぇ!家庭科室と理科室の間がどこなのか調べてみよ!!」


しんすけ「えっ?」


わたる「ブリッジマンが本当にいたときに役立つかなって思ってさ!でも本読んでいたいならやらなくてもいいよ!」


わたるがニカッと笑う。しんすけは、「うーん…」と唸りながら考えると、読んでいた本を閉じた


しんすけ「僕行くよ!面白そうだし!」


わたる「本当!?行こー!」


わたるは嬉しそうにしんすけの手を引いて廊下に出る。そして家庭科室の前まで来た


しんすけ「どうやって調べるの?」


わたる「うーん…何歩か数える?」


しんすけ「それしかないよね〜」


わたる「よーし!一緒に歩こう!」


2人は家庭科室で横に1列に並び、わたるが「せーの」と合図を出す


わたる&しんすけ「「1、2、3、4…!」」


声を揃えて大体同じ歩幅で進んでいく


わたる&しんすけ「64、65、66、67…」


2階から1階への階段の踊り場まできた


わたる「やっとここまできた!」


しんすけ「もうちょっと頑張ろう!」


2人は再び声を重ねて数え始める。やがて理科室が目の前に見えてきた


わたる&しんすけ「125、126、127…!」


息切れ混じりの声が響く


わたる&しんすけ「…133!」


2人は同時に叫んで立ち止まった。理科室前にたどり着いたのだ


わたる「やっと着いたー!!」


しんすけ「133ってことは半分の数が分かればいいんだね!」


わたる「えっと…133の半分は…」


2人は必死に考えるがわからない。


しんすけ「これ、割り算だよね?僕たちまだ習ってないからわからないよ!」


わたる「どうしよ〜!」


2人が困っていると、理科担当の土方先生がやってきた


土方先生「あれ、わたるくんとしんすけくんじゃないか!2人ともどうしたんだい?」


わたる「あー!ちょうどよかったー!」


しんすけ「土方先生!133の半分って何ですか?」


土方先生「133の半分?」


土方先生は突然の質問に不思議そうに首を傾げる。しかし、すぐ笑顔で2人を見た


土方先生「66.5だから大体67だな!」


わたる「先生ありがとうございます!!」


しんすけ「助かりましたー!」


土方先生「お、おう」


走り去っていく2人を土方先生は不思議そうに見つめた




わたる「67って確か階段の途中だったよな?」


しんすけ「うん!踊り場のところだった!」


2人は走って踊り場へ向かう。そしてたどり着くと立ち止まった


わたる「ここかー!」


しんすけ「わかりやすくていいね!!」


わたる「そうだね!!」


2人は息切れをしながら満足そうな笑みを浮かべた。その時___


キーンコーンカーンコーン


チャイムの音が響いた


わたる「えっ授業始まっちゃうじゃん!!」


しんすけ「やばいよ!急ご!!」


わたるとしんすけは猛ダッシュで教室へ戻っていった





放課後、さようならの挨拶をするとわたるとしんすけは一緒に昇降口へ向かった


しんすけ「5時間目はまじで危なかったよな!」


わたる「ね!しかも移動教室だったから本当にやばかった〜」


話しながら階段を下りていく。すると、誰かが上がってくるような音がした。2人は先生だろうと思い、気にせず階段を下りていく。


わたる「やっぱ時計ちゃんと見ないとだめだね!」


しんすけ「そうだね!」


2人は目線を前に戻す。すると階段を上がってきた人物が目の前に現れた。


わたる「うわぁぁぁ!」


わたるが突然叫んで後ろに倒れる


しんすけ「わたる?!大丈夫?!」


しんすけはしゃがんでわたるの肩に手を置く。わたるは階段を見下ろして怯えた表情になっていた。しんすけは階段の下をみると、血走ったギョロっとした目をこっちに向けてブリッジをしている男の子がいた


しんすけ「うわぁぁ!!なんだよあれ!」


しんすけがそう叫ぶと、ブリッジをした男の子が階段を上がってきた


わたる「に、逃げよう!!」


しんすけ「う、うん!!」


2人は素早く立ち上がり、階段を上った


しんすけ「なんだよあいつ!?」


わたる「もしかしたらあいつがブリッジマンかも!!」


わたるはちらっと後ろを見る。後ろにはブリッジのまま追いかけてきている男の子がいる


しんすけ「捕まったらたぶんやばいよね」


わたる「とにかく逃げ切らないと!」


2人は懸命に廊下を走った。





しんすけ「はぁ…はぁ…ちょっと…休憩しない…?」


しんすけが息を切らして苦しそうに言う。2人は5分ほど走りっぱなしだ。


わたる「そうしたい…けど…まだあいつが後ろに…」


後ろをみるとまだ男の子が追いかけてきている。休憩するために教室に入ってもバレてしまう


しんすけ「僕…もう無理だよ…!」


わたる「しんすけ…!頑張って…!」


わたるは助けを求めようと周りをみる。しかし、誰もいなかった。


わたる(そういえば、なんで先生が誰もいないの?)


職員室前や各教室前を通ったはずなのに先生たちに全く会っていないのだ。しかし、駐車場には先生の車はちゃんとある


わたる「帰れなかったら…どうしよう…」


わたるは泣きそうになる。すると、疲れで足がもつれてしまい、転んでしまった


しんすけ「わたる!!」


しんすけは慌ててわたるを立たせ、再び走る。しかし、疲れでスピードが遅くなってしまってブリッジの男の子との距離が縮まってくる。2人がもうだめだと諦めかけた時、誰かに腕を掴まれ、教室の中に引き寄せられた。


少年「こっちだ!」


腕を引いただろう人物をみると、その正体は青い瞳をした中学生くらいの見知らぬ少年だった。少年は後ろを睨む。そこにはブリッジをした男の子が教室に入ってきていた。少年はわたるとしんすけの腕を引いて反対側のドアから教室を出て走る


わたる「お、お兄ちゃんは…だれ…?」


少年「僕のことはどうでもいい!走ることに集中するんだ!」


少年はわたるとしんすけを見る


少年「あれはブリッジマンだ!!家庭科室と理科室はどこにある?」


しんすけ「家庭科室と理科室…?」


少年「あぁ!その間で『坊ちゃん』と3回唱えれば助かるはずだ!」


それを聞いてわたるとしんすけはハッとした


わたる「俺たちその教室の間の場所知ってるよ!!」


しんすけ「2階と1階の間の階段の踊り場だ!!」


2人は前を走っていた少年を抜かし、踊り場へ向かう。やがて踊り場へたどり着くと、わたるとしんすけは同時に息を吸った


わたる&しんすけ「坊ちゃん、坊ちゃん、坊ちゃん!」


シーン…


何も起こらない。他の幽霊が来る気配が一切しない。


わたる「あれっなんで?!」


しんすけ「助けてくれる幽霊が出るんじゃないの?!」


少年「まさか、あいつが…!!」


少年は険しい顔をすると悪態をつく


わたる「お兄ちゃん、あいつって?」


少年「都市伝説を生み出している奴がいるんだ…『怪夢 ワザワイ』って奴が…」


しんすけ「その…怪夢 ワザワイってやつのせいなの?」


少年「たぶんね。そいつが都市伝説の内容を変えたんだ」


少年は拳を強く握りしめている。その後ろにブリッジマンが現れた


わたる&しんすけ「うわぁぁぁ!!」


わたるとしんすけは叫びながら1階へ逃げ出す。それを見て少年は慌てて振り返る。するとブリッジマンは高くジャンプし、階段を飛び降りようとした。そんなブリッジマンに少年は手を伸ばし、何かを唱えた。すると、ブリッジマンが光だした



1階の階段下、わたるとしんすけが焦っていた


わたる「どうしよう!お兄ちゃんが下りてこないよ!」


しんすけ「僕たち、あのお兄ちゃんを置いてきちゃったよ!!」


わたる「あのままだとブリッジマンに襲われちゃうよ!」


2人は心配で階段を見上げる。すると、あの少年がゆっくり下りてきた


少年「もう大丈夫、ブリッジマンはいなくなったよ」


わたる「えっ?」


しんすけ「お兄ちゃんが倒したってこと?」


少年「まぁ…そういうことになるのかな?」


少年は優しく微笑む。


わたる「すげぇー!」


しんすけ「お兄ちゃんかっこいいー!」


少年「ありがとう。君たち、気をつけて帰ってね」


少年はそう言うと、学校から去っていった


わたる「僕たちも帰ろう!」


しんすけ「そうだね!」


2人は仲良く靴に履き替えると家へ帰っていった




数分後、1階から2階の階段にある踊り場にツノが生えた赤い瞳の少年____ワザワイが立っていた。悔しそうに踊り場を見つめている


ワザワイ「せっかく坊ちゃんの制度を無くしたのに…結局先にやられちゃったか…」


ワザワイは振り向いて階段を見下ろす


ワザワイ「一体誰が邪魔をしてるんだ…?」


すると怯えた表情へと変わる


ワザワイ「このままじゃ…僕はずっと…」


ワザワイは胸の方に手をもってくるとクシャッと服を強く握り、身体を震わせた

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