人面ワシ
ある晴天の日、ワザワイはある森の近くを歩いていた
ワザワイ「この町ではどんな都市伝説を生み出そうかな?」
そう呟いて考えるように顎に手を当てた。すると森から一羽の真っ白なワシが飛んできて、切り株の上に止まった
ワザワイ「あ、そうだ…!」
ワザワイは何かを思いついたような顔になりゆっくりワシ近づく。そしてしゃがんで目線を合わせた。
ワザワイ「君を利用させてもらうよ」
そう言ってワザワイはワシに手のひらを向ける。するとワシは突然光り、住宅街の方へ飛んで行った
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朝、中学1年生の國谷 真守(くにたに まもる)は2組の教室の扉を開けた
まもる「おはよー…ってなにごと?」
教室に入ると、みんなが1箇所に集まっていたのだ。まもるは首を傾げていると、集まってる中の1人の女子、荒井 雪華(あらい せつか)が駆け寄ってきた。
せつか「まもる!やまとが今日の朝人間の顔をした鳥を見たんだって!!」
まもる「はぁ?」
まもるは信じられないというような表情でみんなに囲まれている堀江 大和(ほりえ やまと)を見た。
まもる「やまと、それ本当か?」
やまと「本当だよ!」
まもる「それって都市伝説?」
やまと「多分そうなんだよ!」
まもる「やっぱりそうだった」
やまとは都市伝説が好きでよくクラスメイトに都市伝説の話をする。それにみんな興味を持って聞くから人気なのだ。
やまと「身体が鳥で、頭は男の人の顔だったんだ!そして全身真っ白で大きさは全長3メートルくらいあったんだ!!それで、思い当たる都市伝説があるんだ!」
クラスメイト「なになに〜?」
クラスメイトたちは一斉にやまとに身を乗り出した
やまと「それが、"人面ワシ"っていう都市伝説なんだ」
せつか「それはなにか危険なこととかあるの?」
せつかがそう聞くとやまとは首を横に振った
やまと「ごめん、最近知った都市伝説だからそれがまだわかんなくてさ〜!情報入ったらみんなに教えるね!」
クラスメイト「そっかー」
クラスメイト「待ってるねー!」
まもる「…ばかばかしいなぁ」
まもるは都市伝説に興味津々なみんなに呆れ、自分の席へと行った
次の日の朝、まもるが教室に入るとなんだか騒がしかった。せつかがまもるに気付いたようで慌てて駆け寄ってくる
せつか「まもる、大変!やまとが事故に遭っちゃったんだって!」
まもる「えっ、まじ?!」
せつか「うん、車に轢かれちゃったらしくて、今意識不明の状態なんだって」
まもる「うそだろ…」
まもるは昨日まで元気だったやまとがそんな状態になったことに衝撃を受けた
まもる「…意識戻るといいな…」
せつか「そうだよねぇ…」
まもるとせつかは不安な表情の顔を見合わせた。その時、クラスメイトの1人が声を上げた
クラスメイト「俺、絶対人面ワシのせいだと思うんだ!」
まもる「…お前急にどうしたの?」
クラスメイト「俺、人面ワシについて調べてみたんだ。そしたら…」
すると突然、喋るのをやめてしまった。それにまもるやせつかなど、クラスメイトたちは不安が増す
せつか「そしたら何よ…早く言って…!」
クラスメイト「うん、ごめん…。そしたら…その顔を見た人は失明をしたり事故に遭ったりするって書いてあったんだ…!」
せつか「えぇ…」
まもる「まじかよ…」
みんな言葉を失い、クラスは静まり返った。
せつか「ね、ねえまもる、今日一緒に帰らない?1人で帰るのなんか怖くて…」
放課後、帰る準備をしているまもるのもとにせつかが来た
まもる「あぁ、いいよ。俺も1人で帰るのなんか嫌だったからちょうどいいや!」
せつか「本当?!ありがとう!」
まもるは急いで準備し、せつかと共に校門を出た
せつか「やまと、大丈夫かな…」
まもる「さぁ…早く意識が戻るといいな」
せつか「まもるはさ、あの都市伝説信じる?」
まもる「あの人面ワシってやつか?」
せつか「そう」
するとまもるは「うーん…」と唸り、少し考えた
まもる「信じてないけど…本当にいるなら実際に確認したいかな」
せつか「実際やまとがこうなっちゃうと、いつも絶対信じないまもるもそうなるか〜」
まもる「たまたまやまとが事故に遭っちゃっただけかもだけど、一応気をつけることにするよ」
まもるがそう言った瞬間、バサッ…という音が背後から聞こえ、風が吹いた
せつか「なんだろう…?」
せつかとまもるは後ろを見た。そこには後ろ向きの真っ白な大きな鳥がいる。その鳥の頭部は人間のような後頭部をしていた
せつか「あれって…」
まもる「せつか、目を伏せろ!」
せつか「えっ」
せつかは状況が掴めずとりあえず目を伏せた。するとまもるはせつかの腕を引いた
まもる「せつか、ここから早く逃げよ!たぶんあれが人面ワシだよ!」
せつか「う、うん!」
まもるとせつかは走り出した
せつか「なんで目を伏せるの?」
まもる「人面ワシの顔を見たら失明したりするんだろ?」
せつか「あ、そういえばそう言ってたね…!」
2人はやがて公園まで来た。そこで立ち止まり、辺りを見回す
まもる「いなさそうだね」
せつか「良かったぁ…」
せつかはほっとして胸を撫で下ろした
まもる「せつかは家ここら辺だよな?」
せつか「うん!」
まもる「じゃあ早く帰ったほうがいいよ!」
せつか「えっ、いいの?まもる1人になっちゃうよ!」
するとまもるは笑った
まもる「大丈夫だよ!せつかよりは怖がりじゃないよ!」
せつか「そ、そっか〜!ならお言葉に甘えて帰るね!」
まもる「うん、気をつけてね!」
せつか「まもるもね!じゃあまたねー!」
せつかは走って帰っていった。まもるはそれを見送ると、「ふぅ…」とため息をついた
まもる「よし、俺も帰ろ」
まもるは走って公園を出た。家は公園から走って1分ほどで着く。まもるは家の前に着くと周りを見回した。
まもる「いなさそうだな…!良かった!」
まもるは安心して前を向いた。すると目の前に真っ白な肌の男の人の顔があった
まもる「うわぁ!」
まもるは思わず尻餅をついてしまった
まもる「いたたた…なんだ?」
まもるはお尻をさすりながら顔をあげると、先ほどの男の人の顔がこっちを向いている。その人の身体はワシだった。大きさは全長3メートルほどある。人面ワシだ。人面ワシは一歩ずつまもるに近づいてきた
まもる「く、くるな!」
まもるはじりじりと後退りをする。人面ワシはどんどん近づいてくる
まもる「やめろ…くるな…!」
まもるは恐怖で声が震える。さらに後ずさった。
その時_____
ブゥゥゥゥゥン!!
という大きな音が響いた。まもるはハッとして横を見ると、一台の大型トラックが迫ってきていた。自分のいるところを確認するとそこは道路で車道のど真ん中だった。後退りをしたせいでここまで来てしまったのだ。トラックの運転手はまもるに気づかず、そのまま走ってくる。やがて目の前まで迫ってきた
まもる「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
辺りにまもるの悲鳴が響き渡った
しばらくして、そこの周りにたくさんの人が集まっていた。周辺にはパトカーや救急車が止まっている。
まもる「人面…ワシが…人面ワシ…が…」
担架で運ばれながらまもるはうめいている
母「まもる…!まもる…!」
母親は泣きそうになりながらうめく息子の名前を叫び続けていた。そんな様子を少し離れたところからワザワイは見つめていた
ワザワイ「これで20人目…順調だね」
ワザワイは不敵な笑みを浮かべると、その場に背を向ける。
ワザワイ「もう少しこの町にいようかな!」
そう言うとワザワイはこの場を去っていった
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