生き方
それからまた月日が流れ、桜の花が咲き誇る時期になった。
「桜が咲いたね〜」
「花見も良いな」
「やった〜!」
境内にそびえ立つ満開の桜の木。地面は散った花びらで埋め尽くされている。
風が枝を揺らす。花びらが数枚散り、地面に落ちる。
「もう十六年か、小さかったお前も随分と大きくなった」
「うん」
私は昨日、誕生日を迎えた。
境内しか知らない世界。知り合いなどいないし親もいない暮らし。それでも、カタクリがいるから頑張れたんだと思う。
「カタクリ、ありがとう」
「こちらこそ」ふわり優しい笑みを浮かべるカタクリ。
カタクリは優しい神様だ。
沢山の人々に寄り添い、願いを聞き受けてきたのだろう。全てを叶えることは出来なくても、、、。
この山で生まれ、この山で育った。、、、きっと本当に小さな世界だ。
それでも此処は私にとって大切なものが沢山ある。
此処から見える外の景色は私を悲しい気持ちにさせたけど、同時に愛しい気持ちにもさせた。
カタクリがいて、美しい山も綺麗な水も、、、大切なこの場所にいたい。
「お母さんには私達が見えてるかな?」
「きっと見えてるよ。そして笑ってるだろうな」
「そっか、良かった!」
拝啓、お母さん。桜が舞い散るこの日に私は、生まれ育った大好きな山でカタクリと共に自分の人生を歩んで行こうと思います。
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