聞こえないように
カタクリと父親が何か話しているが、アンズは酷い眠気に襲われていた。何を話しているのか聞きたいのに、意識が飛びそうな眠気に立っているのがやっとだ。
だが、そんな状態で意識を保っているのも限界がきたらしく、アンズはとうとう寝てしまった。
風が頬を撫でる。草木が揺れる。
アンズはまだ眠たそうな目を擦りながら目を覚ました。
隣にはカタクリが規則正しい寝息をたてて眠っている。父親と会話していた時に付けていた面は外れていた。
アンズ達が寝ていた場所は鎮守の沢だった。地面には短く切り揃えられた草、所々小さな花が咲いている。
「あれ、、、お父さんは、、、?」
さっきまでカタクリと話していた父親の姿が見付からないことに気付いて、辺りを見渡す。
見渡してもカタクリしかいない。
それもそうだ。父親はカタクリが山の外に送り返したのだから、、、。そんなことを知らないアンズはカタクリを起こさないようにそっと移動する。
拝殿や摂社など、境内のあちこちを探すが見付からない。
「何処に行ったんだろう?」境内を探しても見付からないので、摂社に行く。
文机の前に座りながら 、カタクリのことを考える。
カタクリの行動は、全てアンズを守る為の行為だった。悲しむことがないよう、寂しくないよう、傷付けないように、子供の成長を見守るような感覚でずっとアンズの側にいた。
突然の眠気も、父親との会話を聞かせないようにカタクリが仕組んだことだった。
しばらくしてカタクリが戻ってきて、父親のことを聞いたら山の外に送り返した。と、ひと言。
「何でお父さんと話す時、面をしていたの?」「姿が見えないというのは不都合だろう」カタクリは面をしていたら村人でも姿が見えるという。実際、父親も面を付ける前まではカタクリの姿はおろか、気配さえも感じられなかった。
「でも、表情が分からないよ」
「そうだな」
カタクリは少し笑った。
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