神に縋る者

 それから、拝殿に誰かが来る度に柱の陰から見ている。あの男性と話をしてみたいという感情が高ぶるなか、カタクリに真実を問いただしてみても上手くはぐらかされ話を脱線させられる。

 数週間後、拝殿にまた男性が来た。

果物や栗などを奉納し、手を合わせて子供を返して下さいと何度も願う。

「お願いします。どうか子供をお返し下さい。責任を持って育てますので、、、、どうか、子供に会うことでもお許し下さい」

それは、聞いていくうちに胸が締め付けられていく内容だった。

 行方不明になった子供に会いたい、話がしたい。それを手伝うことが出来たならきっと、カタクリも本当のことを話してくれるだろうか。


「で、あの男の娘を探したいのか?」

夜、カタクリに言うと怪訝そうな顔をされる。

「だって、、、、可哀想だよ、、、、」一生懸命、拝殿に手を合わせて帰る男性が脳裏を過ぎる。

「もし仮に娘が見付かったとして、お前はどうするんだ」

「勿論、会わせる!」当たり前と言うように胸を張って言うと、カタクリはため息をついた。

「なら、その娘と会わせられない」

 その解答は即ち、カタクリはその子供の居場所を知っているということになる。え、その解釈で良いんだよね?

それに、男性は『子供』と言っていた。それなのにカタクリはハッキリと『娘』と言い切っている。

でもカタクリはこの社から出たことがないって言ってたし、、、、ならその子供は前に話してくれた生き神の少女ということになる。

 だけど生き神の少女はもう亡くなっているから会わせられない。でもカタクリの言い方から会おうと思えば会える、、、、どういうこと?

「あの男の妻と約束したんだ。『この子を幸せにする』って、、、だからあの男とは会わせられないよ」

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