熱を理由として
外の世界はどうなっているんだろう?私は境内から出たことがないから想像することだって出来ない。
「外の世界ってどんなところなのかな?」
「今はそれよりも熱を下げることだ。安静にしとけと言ったはずだが?」
難しそうな本を読んでいるカタクリに怒られた。
昨夜、寝間着一枚だけで外に出たからだろうか、熱が出た。お蔭で今日は安静にしろと、言われてしまった。
「だって〜、、、」
カタクリは読んでいた本を閉じ、私の頭を撫でた。頭を撫でられるのは嬉しいが、それで機嫌は良くならない。
「腹は減ってるか?」
「、、、うん。少し」
「粥を作ってくるから、大人しくしとけ。分かったか?」
「は〜い、、、」その返事に安心したのか、カタクリは厨に行った。
カタクリが部屋を出てから少し眠っていたが、やっぱりカタクリがいない部屋は寂しい。
カタクリの存在が私にとって大きかったのだと改めて気付かされる。
「カタクリ、早く戻って来ないかな、、、寂しいよ」
「寂しかったか?」
いつの間にいたのか、お膳を持ってカタクリが立っていた。、、、聞こえていたみたいだ。恥ずかしい。恥ずかし過ぎて赤面になった顔を両手で隠す。
「粥を作ったけど食えるか?」カタクリはそんなの気にしていないみたいにお膳を置く。
お膳の上にはまだ湯気が残っているお粥。美味しそう、、、。
取り敢えず、食欲があるということを示す為に頷き、重い体を起こす。
少しでも気を抜けば、ふらりと倒れそうだった。そんな体をカタクリは支えて、倒れないようにしてくれた。
お粥を食べようと手を伸ばすと阻止された。でも流石に食べさせてもらう訳には、、、。
カタクリは
美味しかったのでしばらくすると器は空になった。
「うん。粥は食べれたな。他に食べたいものはあるか?」
「柿、、、」
ほぼ即答で柿と答えるとカタクリはまた厨に行った。
そして一口の大きさに切られた柿を持ってきた。今度は一人で食べられそうだったので柿を摘んで口に放り込む。冷たくて噛みごたえがあって美味しい。
カタクリも食べる。
「カタクリ」
「ん?」
「ありがとう、、、美味しかった」へにゃりとはにかみながらお礼を言うとカタクリは口元を手で隠す。耳が少し赤い、、、もしかして熱がうつった?
どうしようと考えを巡らせていたら「熱はうつってないから安心しろ」と言われた。
カタクリ、無理しないでね。
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