雪兎

 翌日、外を見ると境内が真っ白になっていた。

雪が降ったのだ。

「カタクリ!雪だよ!」火鉢で温まっているカタクリを揺さぶる。

「あー、、、うん。そうだな」

「遊んで来る!」目を輝かせながら境内に行くと一面真っ白な雪。

 嬉しくて寝間着のまま雪に飛び込んだ。

十五歳になって何しているんだろうと思ったが、気にしないでおく。

「、、、寝間着で雪の中に飛び込む奴がおるか」ため息交じりに怒られた。

雪に飛び込んだせいで寝間着はびしょ濡れ、、、すぐに着替えた。

「もう飛び込むなよ」

「気を付けます」

「はぁ、、、大きくなっても全然変わってないな」

「そうかな?」

「性格だけ見ると五歳児」

「そんな子供っぽくないよ?」

「、、、」

まるで嘘だろ、、、とでも言いたいのか無言で此方を見てきた。

 そんなカタクリを放って置いて、雪を握って雪玉を作り、雪兎に挑戦する。

目は南天の実、耳は奉納されていたさかきの葉。

「あれ、、、?」

雪は綺麗なのに、目の位置は揃ってないという不恰好な雪兎が出来てしまった。

実の位置を調整する為に簪で跡を付けて目印にしたのに、、、それを見たカタクリが「簪が思わぬ使われ方をしている、、、」と呟いていた。

昔から雪が降れば作っているが、何故か一度も可愛く作れた試しがない。

(その度に手先が器用なカタクリに泣きついていた記憶が、、、)

「可愛く作れない、、、」

「でも上達はしてるだろ?」

「そうかな、、、?」

「初めて作った時なんかただの雪玉だったしな」

「何歳の話?」

「お前が四歳の時」

「十一年前のこと覚えているんだ、、、」呆れて良いのか尊敬して良いのか分からない。

 鎮守の杜に行くと沢が凍っていた。乗っても割れないかな?カタクリはそんな私の考えを読み取ったのか、すかさず「絶対に乗るな!割れるから」と言う。

その後、朝餉を済ませて雪遊びを始めた。

 しばらく遊んでから部屋に戻ると、まだカタクリは火鉢の側で本を読んでいた。カタクリも誘ったが「オレはいい」の一点張り。

 じっとカタクリを見る。

「行かないのか?」目線を本から移し、私を見る。

「一人で雪遊びはつまんない、、、から部屋で遊ぶことにした〜!」

「これ以上、外にいたら風邪引くぞ」

、、、言うと思った。

火鉢はパチパチと炭が燃える音を鳴らす。

手を近付けると冷たかった手がじんわりと温まってくる。鉄などは火の近くに置いておけば熱くなるけど、両手に嵌めてある鈴輪の鈴だけは不思議と熱くならない。

 この鈴輪は十三歳の時、カタクリがお守りと称してくれた物。シャラシャラときらびやかな音を鳴らす金色の鈴はかなり好きだ。

「温か〜い」

「だな」

二人揃って火鉢の側で各自好きなことをする。カタクリは竹笛を吹いている(しかも上手)、私ははさみを取り出して紙を切り、折り紙にして遊ぶ。

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