闇夜を照らす光

「お前は、どうして助けを求めない」

「、、、え?」

 意図せずに口から出た質問。

オレが今まで見てきた生き神の子達は、外の世界に強い興味を持っている子が大半を占めていた。中には外と通じていると知ってからか、度々奥社に出入りする子もいた。だが、結局神職に感付かれ、外に出してやることは叶わなかった。

 マヨイが招かれて何ヶ月経っただろうか。一度もマヨイはオレに助けを求めなかった。

外の世界を知っていながら、どうして此処に留まるのか、オレには理解出来なかった。

「このままこの地に残っていたらいずれ死ぬぞ」

 少し圧力をかけて脅すが嘘も偽りもない、ただの現実だ。

「、、、でも、その為に生きてきましたから。祖母は何時も、貴方は月峰様と縁を結んでいるから、生き神の使命を果たしてほしいと言っていましたし、、、」

 この子の祖母はかなり信仰心が強かったな。

この子もまた、生き神の使命に囚われているのだろう。

「マヨイ、、、此処から出たいか?」

「!!」

それでも、聞いておきたかった。

「お前が本当に望むのならオレは力を貸してやる」

「でも、、、」

「一度出れば、もう帰ることは許されない。それでも此処から出たいか?お前の意志で決めたのならそれで良い」

「私は、、、」

 本人が望まないとオレが何を言っても意味ないだろう。だが、伸ばされる手があるなら掴みたい。

「でも、、、そうしたら村の人々は、、、」

「どうしたいのかよく考えるんだ。他の誰でもない、お前自身のことだ。そこに誰かの意志は介入しない。お前は、お前の好きに生きれば良い」

「子供の頃は良かったです。遊び呆けていましたから」

 そういやマヨイは幼い頃に家族もろともこの地を出て、数年前祝言を挙げる為に戻って来たんだったな。

あの両親は自分の娘が生き神として選ばれたことを知っていた。だから殺されないようにこの地を出たのだろう。

「、、、でも、このお腹にいる子が元気に生きてくれるのなら私はどうなっても幸せです。例え、私が死んでしまっても、、、」

 この子は自分の子に全てを託した。希望も、夢も、自由も、今まで自分が出来なかったこと、これから自分がしてみたかったことを託したのだろう。

膨れるお腹をさすりながら微笑む彼女の瞳は光が宿っていた。

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