真実の牡丹

相川美葉

第1話

「おはよ、アンズ」

切実に問いたい。

いつも通り朝起きたら綺麗な顔立ちが目の前にあった時の対処法を、、、

普通の人の子がする最適解を知りたい。

殴るか、悲鳴を上げるか、見惚れるか、、、取り敢えずアンズは目を閉じて今日の朝餉あさげは焼き魚が良いな〜と、考える。

それが普通を知らないアンズの中の正解。

「焼き魚、焼き魚、焼き魚、焼き魚、焼き魚、今日の朝餉は焼き魚」

「現実に戻っといでー」

この青年『カタクリ』は、気さくな性格で、私の知る唯一の人物なのだが、、、毎日と言って良い程、勝手に私の布団に潜り込んでくる。

仮にも相手は異性。年頃の娘の布団に入ってくるというのは流石に駄目な気がする。

まぁ、カタクリにとってはそんなこと考えていないと思うけど、、、。

「カタクリ」

「ん?」

「髪の毛がくすぐったい」

さっきから少しクセ毛の銀髪を首筋に当ててきてるので、首筋がくすぐったい。

クセ毛の銀髪は、紺色の着物と白色の羽織りにとても合っている。

「なら、起きることだな」

「やだ!」

「起きないと、くすぐるけど良いのか?」

「それもやだ」

カタクリは少し考えて、首筋やら横腹などをくすぐってきた。

「アハハ、カタクリ、やめ、アハハ、て、、、」

やめてとお願いするが、カタクリは私の反応を面白がっているのか更に続ける。

「起きるか?」

「起きるから、くすぐるのはやめて、、、」

「分かったよ」

カタクリはくすぐるのをやめ、朝餉の用意をしにくりやに行った。

私は寝間着から着替える。

真っ白な白衣から覗く椿色の掛衿かけえり、下は同じ色の緋袴。これは巫女装束と呼ばれる服装だと、昔カタクリが言ってた。

そして文机の上に置いてある鈴輪を両手首に嵌める。シャランと心地良い音が鳴った。

カタクリが朝餉の用意をする前に、布団を片付けた。

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