第3話

「、、、、ズ、、、、アンズ!!」

「!?」

心配そうに揺れる黄金色の瞳で見られて、我に返った。

「ずっと呼んでも返事しないし、揺さぶっても上の空だったから、、、、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ!」

どうやらボーと、していたみたいだ。

「考え事か?」

「考え事、、、、なのかな?」

不思議なことに自分でも分からない。

取り敢えず、「いただきます」お膳に乗った卵焼きを口に運ぶ。

「美味しい、、、、」

何時もながら美味しい卵焼きを頬張っていると、頬杖をつきながらカタクリが声を出さずに笑った。

その表情はまるで親が子供を愛おしそうに見ている様だった。

「ねぇ、カタクリ」

「ん?」

「この神社って何の神様を祀っているの?」

不意に頭の中に現れた疑問だ。大した理由もないが、昔から気になっていたことだった。

「月峰神」

カタクリは一瞬、表情が曇ったが、すぐにポツリと呟いた。

『月峰神』は何の神様なんだろう?

そんな考えを読み取ったのか「この山の地主神だ」と、出窓に座って竹格子が嵌められた窓の外を見ながらの返答。

「何か聞こえるの?」

「ん?あぁ、、、、」

カタクリは耳が良いから、何か聞こえるのかも知れない。

「かつて、この山に土地を守る『月峰神』がいたという。その神は『懸けましくも畏き神』と呼ばれ、山の麓の村から深い信仰を集めていた。その村である日、人の身でありながら月峰神の声をキくことができる少女が生まれた。その少女は神の声を神託として届け、村人達を導いた。故に村では、その神の子を『生き神』呼び、月峰神と共に崇めた」

独り言のような話し方で、懐かしむように話すカタクリ。

「その少女はどうなったの?」

恐る恐る聞くと、ひと言。

「死んだ。子供を産んでそのまま、、、」

その話をしている間、一回も私と目を合わせてくれなかった。

こんな顔をするカタクリは今まで見たことがない。

こんな時、どうしたら良いんだろう?

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