同級生達との決別~私は『外れ』スキルです!~




 翌日、ギルドから呼び出された。

「何でしょうか」

「魔王の国からなんじゃが、そこで捕まった『勇者一味』についてカズエ、お前さん何かしっとるかの? 同じく呼び出された身じゃし」

 その問いに私は首を振った。

「まだ情報共有されてないと思いますが、私は『外れスキル』だとお金をわずかに持たされて追い出された身です、だから何も知りません」

 正直に言った。

「なるほど、となると向こうが嘘をついてることになるのぉ」

「嘘?」

「『召喚された奴の中で俺達を置いていった奴がいる、そいつがこの国に報復してくれるはずだ‼‼』とのことじゃ」

 私は呆れて言葉を失った。

 そんな人居ない。

 居たとしても知らない。

「知りません、居たとしても追い出された私には関係無い話です」

「そうか、分かった。ではそれを国王陛下にも報告しておこう」

「お願いいたします」


 私達はギルドを出た。


「ちょっとそこの君」

「はい?」

「君、ゾナール王国の異世界人召喚の儀で追い出された子だよね」

「‼」

 何で知っているんだろうと驚いた。

「ああ、驚かせてごめん。私も同じく召喚されたんだが、うさんくさくて武器を貰ってすぐ城から逃亡したんだ」

「え」

「で、各地を転々としている中、召喚された『旅するレストラン』なる建物を出す少女がいると聞いて探し回ったんだ、良かったら一緒に旅をしようと思って」

「ごめんなさい、私もう一緒に旅する人達がこんなにいるので……」

「そういうことだ諦めろ」

「そうか……なら仕方ない、でも情報を交換しないか」

「それくらいなら……」

 私は紅き王達のことを伏せて、情報を交換した。


 相手はサイカサトルさん。サイカと名乗っているらしい。

 ランクはBランクの冒険者、単独で、凄い。


 魔王の国の情報を得て、関わらず一人で旅をしていたそうだ。

「魔王の国に行くつもりですか?」

「まさか、あの国は不可侵だよ。行くつもりは無い。それにゾナール王国は滅んでしまったしね」

「……」

「文句の一つや二つ言いたかったし、帰る手段を探してるけどないっぽいからこの世界を精一杯生きてるつもりさ」

「そう、ですか」

「それに、この世界に来て恋人ができてね、結婚もしているんだ」

「ふえ」

 なにげに異世界満喫してない、この人。

「その恋人さんって」

「この街の鍛冶屋の娘さんさ、一人娘だったから入り婿は歓迎されたよ」

「じゃあ、この街を拠点に今は活動してるんですね」

「ああ」

「で、君のレストラン入ってみたよ。豪華なファミレスって感じだったけど、値段はお手頃、たまに来てくれると嬉しいんだが……」

「それなら、是非!」

「本当かい、有り難う」

「では」

「では、君は仲間が多いようだから大丈夫そうだけど、気をつけるんだよー!」

 そう言ってサイカさんは去って行きました。


「話は終わったか」

「はい」

「あの男、嫁がいるようだな、なら良い」

「ふへぇ?」

「あらあら、カズエちゃん本当に鈍いのね」

 紅き王の発言に首をかしげていると、緑さんがくすくす笑った。

「此奴はそれでいい」

「本当かしら~?」

「どうだかな~?」

 緑さんと青さんが煽る、止めて、喧嘩になっちゃう。

「はいはい、喧嘩はしないの、煽らないの」

 白さんがすぐに間に入って止める。

「全くもう」

 私は首をかしげるばかりだった。





 翌日──

「よし、じゃあレストランを開きましょう」

「うむ」

「朝ご飯ね」

 そう言ってレストランの扉が開かれる。

「私はとろろご飯の生卵抜きでお願いします」

「畏まりました」

 紅き王達もそれぞれ注文していく。


 とろろは普通の山芋のものとは違う味わいをして出汁も美味しかった、もしかして自然薯?


 そんな事を思いながら味噌汁を流し込む。


「ふぅ、今日も美味かった。ハンバーグなかなかの肉汁だったぞ」

「今日もパフェは美味しかったわ~」

「フルーツタルト、フルーツの甘く瑞々しい感じと土台もサクサクして美味しかったわ」

「今日も刺身定食は美味い、魚が新鮮だ」

 等など言っている。

「そろそろベルド戻るか」

「では、ギルドに連絡をしましょう」

「そうだな」

 私達はギルドへ向かう。

「おお、お前さんか! 実はな、王室がお前さんを読んでてな」

「うへぇ」

 帰る予定がずれそうになった。

「一体何の用だ」

「今この国に魔王が来ている」

「え゛⁈」

「秘密裏だがな」

「……」

「そこでお前さんが本当に無関係か確かめる、念のためもう一人呼んでる」

「……」

「頼む、行ってきてくれ!」

「わかりました、行きましょう。紅き王」

「仕方あるまい」

 私は店を閉め、そのまま王都へと向かった。

 夕方には到着し、王宮へと向かうとすんなりはいれた。

「サイカさん?」

「やぁ、カズエちゃん、僕も呼び出されてね」

「そう、なんですか」

 サイカは困ったように笑った。

 王宮の一室に呼び出され、王様と──多分魔王様がいた。

「罪人共をここへ」

 と言うと、縄で縛られた同級生達が姿を現した。

「お前達のいう仲間はその娘か」

「ちげーよ! 女の方なんかじゃねーよ、そっちの男だ!」

 同級生だった男子はそういってサイカさんの方を見た。

「と、言っているが」

「悪いですが私はあの国のうさんくささに気づいて逃亡した身です、魔王様に刃向かうなど考えておりません」

「黒き王よ、その通りですか」

「その通りだ、この男の言葉にも、そこの男の言葉にも嘘はない」

「な、なんで助けてくれないの!」

「助けてよ!」

「助けろよおい!」

「どうせ、侵略行為で魔族の一部を殺したのだろう」

「その通りだ、故に罪人として処罰する」

「なあ和恵助けてくれよ!」

「……無理、既に手を出してるなら私にはどうにもできません、私『外れスキル』なんで」

 今更ながら助けを求めてくる同級生に嫌みたっぷりにそう言う。

「という訳だ、我らは帰らせて貰うぞ」

 というと近くに居たひとが耳打ちする。

「依然と同じ場所を使えるようにしたので、れすとらんを……」

 あ、そっちもあるのね。

「分かりました」

 私は移動し、サイカさんは帰らされる。

 元同級生達は悲鳴と罵声を上げながら連れて行かれた。


 どうなるかと聞いたら、犯罪奴隷扱いされるだろうとの事。

 疑わず、やってしまったのだ。

 同情はできない。





「旅するレストラン!」

 どーんとレストランが現れると、王族の方々と魔王様とその配下が入って行く。

「だ、大丈夫なのですか?」

「黒き王が契約している巫女なのだと、大丈夫に決まっている」

 不安そうな部下に魔王様が声をかけていた。


「なんと柔らかな牛の肉だ! 旨みが凝縮されている!」

「この野菜シャキシャキで新鮮ですー、どれっしんぐとやらをかけるともっと美味しくなりますー!」


 と話合っていった。

 王様達は前回同様和気藹々としていた──






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