旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~
ことはゆう(元藤咲一弥)
旅するレストランと異世界~六神王~
旅するレストラン~レストランを自由出現なんて食に困らない!それと紅き王との契約~
光に包まれたと思ったら、私は見知らぬ城の中に同級生達と居た。
「おお、勇者様達、どうか世界をお救いくだされ」
なんかうさんくさい王様が言う、私の勘だけどこの王様うさんくさい。
魔術師達が「鑑定の窓」という硝子張りっぽい板で私達を見ていく。
「なんだこれは? 『旅するレストラン』?」
旅するレストラン?
それが私のスキルか、レストランってことはあれだよな。
でも、この世界の連中はそれを知らないので私は金を少し持たされて城から追い出された。
「外れスキルだ」
と言われた。
勝手に召喚して、勝手に追い出してやっぱうさんくさいはこの国!
貴族以外の住んでいる人達はなんか貧乏じみてるし!
まじうさんくさい!
さて、まずやることは、服装を変えること。
セーラー服なんて目立つ目立つ。
服屋で目立たない服に衣装を変えて、そのまま王都を出る。
で、人気の少ないところで。
「た、旅するレストラン?」
と唱えてみる。
地面からバーンとレストランが生えてきた。
「うわーお」
驚きながら中に入る。
「「「「「「オーナーいらっしゃいませ‼」」」」」」
見知らぬ大人達が働いていた。
「オーナーお食事ですか、オーナーへの食事でしたら無料でお作りできます」
ちょっと偉そうな店員が言った。
「オーナーって、私?」
「勿論でございます」
他の店員達も頭を下げる。
「じゃあ食事をしたいからメニューをちょうだい」
メニューを見ると、服屋から聞いた貨幣の価値から見るとかなりお手頃。
この世界の貨幣は、銅貨、鉄貨、銀貨、金貨、白金貨、ミスリル金貨で出来ている。
ミスリルを金貨にしちゃうとかすげーなと思うけど、王族でも持つ事はほとんどないので少数しか持っていないようだ。
その少数って誰だろう、こえーな。
と思いつつ、私はオムライスを注文する。
しばらくするとオムライスが出てきた。
上に楕円状のものが乗っていて、それをシェフがナイフを入れる。
とろとろふわふわのオムライスだ。
私は口にすると、卵のとろふわ感とチキンライスの味がマッチしていて美味しかった。
というかかなりいいレストランなんじゃないか?
「オーナー様のレベルが上がるとよりメニューも品の品質も上がっていきます」
「マジ⁈ じゃあ、あげないと……ってどうやって?」
すると、竜の角が生えたような紅い髪の褐色肌の男性が入ってきた。
「ここは何だ?」
「ここはレストラン、食事を提供する場所です。初めてのお客様は対価は望みませんが次から利用する場合は対価を払っていただきます」
「ふむ、なら牛の肉を使った料理をもってこい!」
「今ある分でしたら……」
そう言って出されたのはビーフシチューとステーキ。
「これが……か」
「ステーキにはナイフとフォークと、シチューにはスプーンをお使いください」
と店員が丁寧に説明する。
「どうやって使うかぐらい分かる」
男性はそう言うと、ステーキをナイフとフォークを使って切って口にした。
口に入れ噛みしめると目を見開いた。
「なんだ、この柔らかさは! 甘さは! 旨さは!」
そう言ってあっという間にステーキを平らげてしまう。
「野菜、か」
ビーフシチューを見て嫌そうな顔をしたが、野菜を口にすると目を見開いた。
「何だこのスープを吸って柔らかく甘くなった野菜は! 肉は肉はどうなのだ⁈」
野菜を全て食べ終えると、肉を口にして目を見開く。
「美味い、美味いぞ!」
そう言ってスープを飲み干していく。
「ふぅ……おい、此処で一番偉いのは誰だ」
「オーナー様でございます」
と呼ばれたので、オムライスを食べ終わった私は早足で向かった。
「は、はい、何でしょうか?」
「ん? お前異世界人だな? ……ということはこの場所はお前のスキルか」
なんで分かるの⁈
男性はにやりと笑った。
「我は此処が気に入った、お前について行けば食べ放題の可能性が高いとみた」
「え」
「オーナー様の身内やお雇いの方でしたら無料です」
「よし、ちょっと外に出ろ」
私は言われるままに外に出る。
すると、男性は巨大なドラゴンに姿を変えた。
「わぁ」
驚きのあまり、それくらいしか声がでない。
「我は紅き神王、クリムゾンドラゴン。炎の化身なり」
「我は汝と従魔契約をしよう」
「あの、従魔契約をすれば何かいいことありますか?」
「我の経験値が其方にも入る」
「OKです! 契約しましょう!」
「そんなに喜ぶとは経験値が入りレベルが上がると何かいいことでもあるのか?」
「レストランがパワーアップして食材の質や料理の質なんかもあがります!」
「おお、それはいい! では契約だ」
差し出された手をそっと掴むと光り輝き、私の手に文様が入った。
「なんだろう、これ」
「契約の証だ、その手の文様がある限り契約は続く。精々長生きしろ」
「ははは……」
私は苦笑いを浮かべた。
とんでもないのと契約しちゃったなー
契約が終わるとドラゴンさんはこういった。
「クリムゾンドラゴンと名乗ったが我のことは紅き王と呼べ」
「は、はい……紅き王様」
「なんか様づけされるとしっくりこんな、様はいらんぞ」
「は、はい、紅き王」
その後レストランをしまうと、私は紅き王の背中に乗り、町へと向かった。
隣国のさらに隣の国の町へ降り立つと、大混乱。
それもそうだろう、紅き王が見たところ変哲も無い少女を乗せて降り立ったのだから。
何か厳つい人がでてきた。
「嬢ちゃん、何者だ?」
「あ、紅き王と契約した者です」
「その通り、この者は我の契約者だ」
私が紅き王から下りると、紅き王は人型のあの姿になった。
「こ、この町に来たのは一体……」
「何、この娘はゾナール王国に召喚された異世界人でな、特殊なスキルを持っているが、レベルが上がると美味いメシが食えるようになるスキルで、レベル上げをさせる為にはギルドに所属して依頼をこなすのが人間流であろう? あと商売をするなら商人ギルドも不可欠だ」
紅き王は淡々としゃべっている、私が異世界人だって言っちゃっていいのかな?
「で、では、依頼を受けてくださると?」
「そう言って居る、二度も言わせるな」
「有り難い! そこのお嬢ちゃん、ギルド登録とかすませてやるからこっちへ来な」
「は、はい!」
私はまず、ギルドへ登録させてもらった、なんか紅き王の圧的なものがあったのか登録料とか諸々タダで済んだ。
そして商人ギルド、こっちも紅き王の話が言って居るのかタダですんだ。
ちょっと罪悪感はあるが、持ち金が少ないので仕方ない、年間料金払うよう努力するから許して欲しい。
「さて、依頼とは何だ?」
「ブラッディブラックブルの群れの討伐と、ブラックオークの集落の討伐が今緊急出入っている、受け手もらえますか」
「何だそんな雑魚も片付け──まぁ、仕方ないか奴らは上位種の中でも上のランクだしな、Aランクの人間共でも手に余る程だ」
「え、えーと私は何をしていれば……」
「其方は我に乗っかっていればいい、振り落とされるなよ」
「は、はいー!」
「嬢ちゃん、死ぬなよ」
怖いこと言わないでください!
そう言って私はまたドラゴン化した紅き王に乗り、目的の場所へと向かっていった。
ブラッディブラックブルの群れを咆吼一撃で即死させ、その後、私が持っているスキルの一つアイテムボックスという無制限の異次元鞄みたいなものに詰め込んでいった。
どうやって出せばいいか教えてくれたので結構優しいと思う。
その後、ブラックオークの集落は竜巻で全員が切り刻まれ上空に上がり、地面にたたきつけられて死んだブラックオークの死体を紅き王は詰め込んでいった。
「さて、証拠として卸させよう、肉も美味いぞ」
「う、うーん。持ち込んで料理、できるかな」
「試してみろ、駄目だったら売ればいい」
「分かりました」
「素直で良い娘だ」
紅き王はにやりと笑った。
「も、もう終わったのですか⁈ 二つとも⁈」
「カズエ、お前のアイテムボックスから出させろ」
「は、はい」
解体場まで連れて行かれ、アイテムボックスから大量のブラッディブラックブルの死体と、ブラックオークの死体が出てきて、あの厳つい人は白目をむいていた。
「マジか、ブラッディブラックブル、ブラックオークをこんだけ一瞬で……」
「あの、お肉だけください、試してみたいことがあるので」
「んじゃあ、ブラッディブラックブルの肉をやるよ、ほれ」
解体屋さんらしき人が素早くブラッディブラックブルを解体し、そのお肉を貰う。
「し、失礼します!」
私はそう言って紅き王と、町の外へ向かった。
少し遠いところに来て、レストランを出す。
前と変わりはないようだけど……
「魔力の量が倍以上になっているな、さすがに60もレベルが一気に上がればそうなるか」
「え⁈」
私は自分のステータスなんてわからない、でも紅き王がいうならそうなのだろう。
「よし、入るぞ。ついでにそれを料理できるか確かめろ」
「は、はい」
私はレストランの中に入る。
「ようこそお越しくださいました、オーナー」
「あの、このお肉料理できる?」
「勿論ですとも」
シェフ達がお肉を受け取っていくと、料理をし始めていた。
見る限りステーキとローストビーフと、ビーフシチューっぽい。
でも驚きなのが、短時間で長時間かかる料理を終わらせてしまっているところ、味、大丈夫かな?
「お待たせしました、こちらになります」
竜っぽい人型になっていた紅き王はつばを飲み込み、肉を口にした。
「美味い! 美味いぞ‼ こんな味は初めてだ!」
私はローストビーフを口にする。
「んー牛の旨みだけじゃない違う旨みも感じられる、美味しい」
「おい、それを我にもよこせ」
「はい」
私はブラッディブラックブルの肉を堪能しふぅと、息を吐いた。
「それにしても美味しかったねぇ」
「その通りだ、次はブラックオークの肉を試すぞ」
「あ、あれですか……二足歩行の豚……」
そんな話をしていると誰かが入ってきた。
「な、なんだ此処は」
あの厳つい人と、ふくよかな方と数名の冒険者の方々だった。
「えっとその、この場所が私のスキルです。『レストラン』っていって大衆食堂よりちょっと豪華な感じの場所と思ってください」
「お客様ですか、どうぞこちらへ」
スタッフがその人たちを私達の向かいに座らせる。
「大衆食堂より豪華って一応俺達金は持ってきてるがそんなにはらえんぞ?」
「いえ、安いのもありますので。ところでもしかして貴方がギルドマスターさん?」
「おう、その通りだ、ベルドの冒険者ギルドのマスタードーンだ。でこっちが……」
「しょ、商人ギルドのギルドマスターマーニと申します」
「お客様方、こちらがメニューになります」
「なになに……なんだこりゃあ⁈ 俺等が喰ってる大衆食堂の奴より豪華っぽいのに安いじゃねぇか⁈」
「ほ、本当です‼ しょ、食材費などは⁈」
「タダだ、そういうスキルなのだ」
「え、えらいスキルだ……なのに、どうしてこんな辺鄙な国に?」
「私のスキルが王宮の偉い方には何か分からなかったので追放されてしまい、そこで紅き王と出会い気に入られて……」
「そう言う訳だ、喰っていくが良い美味い料理を」
「紅き王、デザートなんていかがです」
「でざーと?」
「えっと、甘いものです」
「うむ、良い。我は甘い物も好きだ許す、選べ」
「ではストロベリーパフェを……」
「畏まりました、オーナー」
「ドーンさん、とにかく選んでみましょうぜ」
「う、うむ。儂はこのステーキとやらを頼む」
「で、では私はビーフシチューを……」
「俺もステーキだな」
「あたい、甘いの食べたい、ストロベリーパフェって甘いのかなぁ?」
「俺はこのフライドポテトってのが気になるな、安いし」
あちらも食べるメニューが決まったようだ、スタッフがメニューを書き出し、シェフに渡す。
シェフ達は素早く動き、料理を作り上げていく。
「ステーキのお客様」
「うむ」
「おう」
「ビーフシチューのお客様」
「は、はい」
「ストロベリーパフェのお客様」
「はい!」
「フライドポテトのお客様」
「お、きたきた!」
「オーナー、そして紅き王様、ストロベリーパフェでございます」
「ありがとう」
「うむ」
私はスプーンでイチゴとクリームを掬う。
イチゴの甘酸っぱさとクリームのなめらかな甘さがマッチしていてよかった。
イチゴのソースも甘くて美味しい。
そしてアイスはひんやり甘く!
「おお、これは美味い、美味いぞ!」
紅き王も感激しながら食べている。
ちらりと向こうを見れば。
「な、なんだこの柔らかさと旨さ、本当にただの牛の肉なのか⁈」
「うめぇ、うめぇぞ、これ!」
「何というコクと味の深み、野菜もスープの一部となり、肉もほろほろとほどけてああ!」
「おいしーい! なにこの赤い果実! これがストロベリー? 甘酸っぱくて美味しい! そしてひんやりしたのは何、もしかして書いてあるアイスのこと? 氷じゃないアイスなんて初めて!」
「なんだこれ! ほくほくカリカリでうめぇ! それでいて大量にある、いくらでも食える!」
と、大満足のご様子。
私は少しだけ安心した。
彼らが食事を終えると立ち上がり、私に頭を下げてきた。
「お願いしたいことがある──」
真剣な声に、私はどうしたのかと身構えた。
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