ドラゴン解体~ミスリル金貨~
「ゴンドラさん、失礼しまーす……」
解体を終えるであろう日に、私達はギルドの解体小屋へと向かった。
「あら、いらっしゃい」
「メルトさん⁈ どうしてここに⁈」
「ビルドに用事があって来てたのよ、あ、ブラッドドラゴンの解体と買い取りは終わってるわ、ねぇゴンドラさん」
「全く、師匠にはかなわねぇよ」
ゴンドラさんはブツブツ言いながら出て来た。
256白金貨に463金貨だ。
どさっと机に置かれる。
私はそれを軽く確かめて受け取る。
「よっしゃぁ、儂も酒を……」
「すみません、黒き王がレッドドラゴンを狩ってきたので……一体」
「な……なんじゃとー!」
ゴンドラさんの絶叫が木霊する。
「わ、儂の酒……!」
「仕方ないですね、ゴンドラは。レッドドラゴンの解体は私がやっておきます」
「ほ、本当にいいのか師匠?」
「買い取りは私のミスリル金貨から行います」
「みすりるきんか?」
私は変な声を出した。
「私のポケットマネーです。これでも全盛期は稼ぎに稼いでいたので」
ぼへーっとしてしまう。
「では、解体しおわった残りをしまってください」
「じゃあ儂はれすとらんにいってきますわい! うひょー! まっててくれ儂の酒‼ 今飲みに行くからのー‼」
残った素材を全てしまう前にぴゅーっとあの短い足でびっくりする程の早さで出て行ってしまった。
「ゴンドラは酒の事となると本当に我を忘れてしまうのですから、本当典型的なドワーフですよね?」
「でも、エルフとドワーフなのに仲が良いですよね」
「? ああ、異世界の人はそう言う認識なのですね。この国ではエルフもドワーフも仲が良いですよ。まぁ、里に引きこもっているようなエルフはどうか知りませんが」
「ほへー」
ニコニコと微笑むメルトさんの前に黒さんがレッドドラゴンを出した。
「かなり上等ですね、では解体させて貰います。夕方には終わるでしょう」
「分かった」
「じゃあ、夕方までのんびりしましょう」
「そうだな」
紅き王がそう言うと他の神王達も頷いてくれた。
夕方まで、体を休める事に。
住居スペースでのんびりとする。
そして夕刻──
「よし、行くか」
「はい」
私達はギルドへと向かった。
解体小屋に入ると──
「あ、お待ちしておりました、解体終わりましたよ」
「有り難うございます」
「ではミスリル金貨一枚、どうぞ」
「あの、これどれくらいの価値が……」
「この国の国家予算一年分とお思いください」
「Oh……」
国家予算規模まで来ちゃったよ、どうしよう。
「残った素材はここに、肉は先ほど同様氷室に保管してますので」
「はい」
そう言って少しだけ残った素材と氷室の肉を押し入れる。
「さて、私もお店に行きますか。パフェを食べたいですし」
メルトさんも食い気だったわ。
対象は違えど食い意地はった師弟だから相性いいんじゃね?
とか失礼な事を考えた。
メルトさんもスタスタとその場を立ち去った。
「ワイバーンとマーダーブルはどうします?」
私は小声で話す。
「……ベルドの街へ戻った時で良かろう」
「ですよね」
ウキウキの気分で此処を後にしたあの二人にまた解体を押しつけるのはちょっとアレな気がした。
「おい、巫女様。今ワイバーンとマーダーブルって聞こえたんだが」
皮のエプロンを着けたおじさんが声をかけて来た。
「えっとそのぉ」
「それなら俺が解体しますぜ。ドラゴンとかの解体はギルドマスターじゃないときついが、それ以外の解体と勘定なら俺もできますんで」
「じゃあ、お願いできますか」
「任せてくだせぇ」
おじさんはどんと自分の胸を叩いた。
なので、ワイバーンとマーダーブルをお肉下さいと言ってレストランへ戻った。
レストランへ戻ると──
「やっぱり一仕事終わった後の甘味はたまらないわぁ! このプリンパフェ、ぷりんが甘苦くで柔らかくて美味しい!」
「くぅー! ビールが喉を通る感じと苦みと冷たさ、たまらんのぉ! そしてふらいどちきんってのも美味い! 肉が食べ応えがあって味がしみこんでいる! 鶏がこんなにも美味いとはなぁ!」
何だろう……一仕事終えたサラリーマンやOLがご褒美に飲食しているように見える。
まぁ、その日も私は夕食を軽く取って休む事にしました。
六神王様達?
がっつり食ってましたよ。
あの方々、食欲は衰えませんから……太らないし、ニキビでないし、羨ましい。
翌朝、ギルドに向かうと──
「おう、ワイバーン二十匹とマーダーブル三十匹の解体終わったぜ」
「有り難うございます」
「んで、買い取り434金貨だ」
「有り難うございます」
金貨は多いがドラゴンとかのをやってたのと比べて安く感じられたので安心したのは私だけの秘密。
「さて、そろそろ出発するか」
紅き王が言う。
「紅神王様、出発なされるので?」
ゴンドラさん、少ししょんぼり。
「ゴンドラさんどうかしましたか」
「いやぁ、酒は買い込んだんじゃが、カズエ。お前さんが来るまでに全部飲んじまうんじゃよ……」
「あー……」
「もっと頻繁に来てはくれんかのぉ?」
「と言われましても」
「ドラゴンを狩ったらくる」
「本当ですか、紅き王」
「本当だ」
「よし、カズエの周囲でドラゴンが出てくるように祈っとこう」
「えー⁈」
ちょっと勘弁してくださいよぉ。
「カズエさん、もう帰るの」
「はい、メルトさん」
「是非今度はメルディスにも来て欲しいわ」
「師匠! 儂の楽しみを奪うんですか⁈ 老い先短い儂の楽しみを‼」
「何処が老い先短いのよ、貴方ドワーフでも壮年位でしょう、老い先短いのは私の方よ」
「ぐ、でも師匠はハイエルフ、儂より長生きじゃないかのう」
「それは言わないでくれる?」
師弟で口論している。
「分かった、ドラゴンを狩ったら交互に行く」
「じゃあ、次回はメルディスですね。お待ちしております」
「その次がここですな」
「うむ、それで文句はないな」
「ええ」
「わかっとります」
紅き王はふぅと息を吐いた。
「さて、ベルドの街に帰るぞ」
「はい!」
漸く
紅き王に乗り、そのままベルドの街へと戻っていった。
「おう、帰って来たか!」
ドーンさんが出迎えてくれた。
「いやぁ、お前さんのレストランが街の名物になっちまってるから、無いと寂しくなっててよぉ」
「Oh」
そんなに名物に?
まぁ、珍しいしね、色々と。
「と言うわけで頼むぞ」
「はい」
私はいつもの空き地に向かい叫ぶ。
「旅するレストラン!」
レストランが出現する。
「おおー!」
「俺等これを待ってたんだよ!」
「早く入れてくれ! 美味い飯が食いたい!」
と周囲から声が上がる。
私は店を開け。
「どうぞ、『旅するレストラン』へ!」
そう言って客引きをした。
お客さん達は次々と入って行く──
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