花嫁として巫女として~この世界で生きて行く~

誓いの式と罰




「式を挙げるぞ」

「はい?」

 ベルドの街に戻って一週間経った頃、紅き王がそう言ってきた。

「式ってなんのですか?」

「其方と我の誓いの式だ、我は其方を娶ったのだからな」

「え⁈」

 思わず声を上げてしまう。

「だが人目のない所で行う故、今日は店をしまえ。少々遠出する。何我の気まぐれで遠出するとギルドに言っておけ」

「はぁ……」

「夕方には戻って来られる、行くぞ」

「と言うわけでカズエちゃん、覚悟を決めてね~?」

「あ、別に特別な事をする訳じゃ無いから」

 黄さんと緑さんがそう言い、居ない白と黒さんの事を聞いてみると。

「先に準備させている、行くぞ」

 と紅き王が言うので、私はは紅き王が言ったようにギルドへ伝えレストランを言ったん仕舞い、紅き王に乗って空を飛ぶ。


「何ですか、アレは? 空中に、浮いてる?」

「浮島、私達が作った、私達の為だけの島、緊急の話合いなんかもここで集まってするのよ」

 緑さんが教えてくれた。

「じゃあ、本来人は立ち入れない場所ってことですよね」

「そうなるな」

 青さんが肯定する。

「いいんですか? 私なんかが入っちゃって」

「いいのよ~寧ろ、今回の主役なんだもの~」

 黄さんがのんびり言う。


 浮島の上に着陸すると、私は紅き王の背中から下りた。


「緑、黄、後は任せるぞ」

「はい~」

「わかったわ」

 紅き王はすたすたと洞窟のような場所へと入っていった。

 私達も後を追って洞窟内に入る。

 洞窟のような場所はまるで神殿のようになっていた。

「……わぁ」

「カズエちゃん、こっちにおいで~」

 黄さんがそう言うと、部屋のような場所に入っていた。

 そこには白さんが、真っ赤なドレスを用意持ちながいた。

「はい、このドレスとヴェールに着替えましょう?」

「は、はい」

 言われるがまま着替える。

 花飾りがあしらわれた紅いヴェールと、紅いドレスに着替える。

「さあ、こちらに」

 紅を塗られて、緑さんに案内されると、教会のステンドグラスのような窓がある部屋へと来た。

 天井には六体のドラゴンらしき生物が描かれている。

 そして部屋の奥には紅い衣と黄金の冠を身につけた紅き王と、黒き衣に白銀の冠をつけた黒さんがいた。

 位置的には紅き王が手前にいる。

 緑さんに案内され、紅き王と向き合うような位置にまで移動する。

「……あ、あの、紅き王」

「力を抜け。ただ誓いを強固にするだけだ」

「?」

 首をかしげていると、黒さんがしゃべり出した。

「紅神王、紅き王。我らが同胞よ。汝は小さき者に愛しさを見いだした、違うか?」

「黒神王、黒き王。我が同胞、その言葉に偽りは無い」

「ならば、その小さき者の命が尽きる日まで守り通し、慈しむ事を誓うか?」

「誓う」

「ならば誓いを──」

 紅き王は私のヴェールを上げてそっと額に口づけをした。

「カズエ、我が伴侶よ。これより其方は我らと共に長き時を過ごすだろう、だが小さき身故我より先に行くは必然。それでも、我は汝を愛し、守ると誓おう──」

 胸がほのかに熱くなったように感じた。


「これより誓いの儀は終わる、紅き王。其方は誓いを全うせよ」

「ああ」

「えっとこれで、終わり、ですか?」

「そうだ」

「これでカズエちゃんはハイエルフなんかよりもずーっと長生きして、私達と時間を共にするの」

「は、はぁ。どのくらいの時間ですか?」

「うーん、私が誓い儀やったの、何千年前かしら?」

「忘れた」

「ひょえ……」

 そんなに長い単位で長生きするのか私。

 でも年取っちゃわないかな。

「あ、老化はしないから、若いまんまだから」

「な、なるほど……」

 私はぺたぺたと顔を触る。

「あ、もしかして気づいた?」

「?」

 緑さんが鏡を取り出した。

 すると、私の茶色の目は薄い紅色になっていた。

「え⁈」

「紅の伴侶の証よ」

「お、オウフ……」

「では戻りましょうか、さぁ、着替えて」

「は、はい」

 服を着替えて、私達は浮島を後にした。


 紅き王に乗っている間、私の心臓はドキドキと脈打っていた。





 夕方、ベルドの街に戻ると、急いでお店を開く。

 するとあっという間にレストランにはたくさんの人が入ってきた。

「おう、カズエ……ん? おい、どうしたその目?」

 ドーンさんがやって来て私の目の事を指摘する。

「えっとその、色々ありまして……」

「正式に我が伴侶にした証だ、他の連中の場合は巫女だがな」

 紅き王⁈

 ちょっと何暴露してるんですか⁈

「あ、紅き王⁈ そ、それは本当ですか⁈」

「勿論だ、だからカズエの手を出そうと思うなよ」

「思いません、思いません!」

「なら良い」

「カズエ……お前凄い御方の寵愛うけてんな……」

「あ、あははは……」

 私は引きつった笑みを浮かべるしかできなかった。





 翌日──

「ふぁああ……」

 昨日色々ありすぎて未だに頭が混乱しているが、取りあえずレストランを開ける事に。

「あれ、紅き王と黒さんと青さんは?」

 レストランを開けて自宅に戻ってくると三人の姿が無かった。

「ああ、あの三人なら今頃狩りに出掛けてるわよ」

「特に紅き王は貴方が生きている間困らないくらい稼がないとって思ってるみたい」

「いや、レストランからのお金もありますし……」

「そうだと言ったんだけどねぇ」

 というかもう既にお金に困らない位貰ってるんだけどなぁ、とか思って居る。

「三人が居ないうちに、ご飯食べに行きましょう」

「そうね、そうしましょう」

「ええ、それがいいわ」

 と、白さん達はいい家の外に出ると──


「おい、テメェが子爵様に逆らう女か?」


 げぇー!

 取りあえず子爵って誰⁈


「逆らわずに場所代払え、白金貨百枚──」

 最期まで言う前に服の袖に火がつき燃えた。

「ぎゃあああああ⁈」

『我が妻に手を出した愚か者には罰を──』

 ぶすぶすと焦げ、服も燃え尽き真っ裸。

「はい、ばっちぃのはみないみない」

 緑さんが目を覆う。

「ど、どうなされたのですか⁈」

 警備兵がやって来た。

 白さんが私の代わりに全部話した。

「ではこの者は連れて行きます! 後でギルドへお越し下さい」

「ええ」

 連れて行かれたらしいのを確認すると緑さんは目から手を離した。

「じゃあ、レストラン、入りましょう?」

「は、はい」

 レストランで食事をしたが、味が分からなかった。

 白さんが大丈夫と声をかけてくれたが、大丈夫と返事をしてみたものの大丈夫じゃない。



「おう、来たか。分かったぞ、お前さんにちょっかい出してきた犯人が」

 昼過ぎにギルドへ訪れると、ドーンさんがギルドマスター室に案内してくれてそこでそう切り出した。

「誰ですか?」

「フィデル子爵だ。評判は良くないし、王宮からの命令も無視しているようだ」

「はぁ……」

「その方の領地教えて戴けません? 私が直々に神罰を──」

「白神王様、お手を煩わせる必要はございません、既に国王陛下が動いております」

「まぁ、そうなのですか?」

「はい、子爵は廃嫡、関係者は犯罪奴隷として鉱山行きと」

「命は取らないのですね」

 どこか不愉快そうな声を白さんは出した。

「い、いりませんいりません! 私無事です!」

 私は慌てて否定する。

「カズエが言うならそうしましょう」

「カズエ、助かった」

 ドーンさんがそう小声で呟いたのが聞こえた。

 全く心臓に悪い神王様達だ──







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