身勝手な復讐心を燃やす炎~平穏な生活が欲しい~




「カズエ、戻ったぞ」

「お帰りなさい、紅き王。黒さん、青さん何を取ってきたんですか?」

「コカトリス一匹」

「ブラッディオーク、二十匹とブラッディオークキング一匹」

「ワイバーン二十匹」

「わぉ」

「肉を寄越せ」

「二日位かかるが大丈夫ですか?」

「かまわん」

 解体小屋のおじさんが言うと、紅き王は素っ気なく言った。

 紅き王達はどさどさと狩ってきたものを置いた。

「紅き王、黒さん、青さん、食事にしませんか」

「そうだな」

 紅き王達は頷き、一緒にレストランに向かう。

 レストランは待っている人も居るくらい大盛況だった。

「カズエは何を食べる」

「ちょっと疲れてるのでうどんにします」

「うどん?」

「紅き王にはちょっと物足りないですね?」

「そうか……」

「でもカレーうどんにすれば、少し満足感が増えるかも?」

「ではそうしよう」

 紅き王、気のせいじゃない気がするのだけど、私と同じ物を食べたがるようになっているような……。

 まぁ、深く詮索はしないでおこう。





「このカレーうどん、辛みが良く太い麺に絡まって美味いな」

「そうですか」

 カレーうどんの大きいサイズを注文して、私は通常サイズのうどんをすすった。

 出汁が透明で丁寧に取られており、うどんと絡み合って美味しかった。



 今までは巫女だけで通っていたのが、今は紅き王の伴侶件、他の神王の巫女という役柄な為結経神経が疲れる。

 今までは、契約者兼巫女という立ち位置だったので、巫女という意識は薄かったが、今はその認識は濃い。


「はぁ」


 思わずため息をつく。


 なんか思考は子どものまま、役職だけが上に上げられている社会人の気分だ。

 こんな子どもに重役押しつけるとか正気の沙汰とは思えない。

 と、思いはするものの口では言わない。


 というか紅き王も何でこんな私を気に入ったのかが分からない。


 食欲?

 それはあり得るけど、なんかそれ以外にもあるような感じで何も言えない。


 ベッドの中でぐるぐると考えていると──


『カズエ今寝室か⁈』


 紅き王の念話が飛んできた。


『はいそうですけ──』

『今すぐそこから離れろ!』


 その言葉に飛び起き逃げると、寝室に穴が空いた。


「な、な、何⁈」

「カズエ無事かー⁈ 魔王の国から集団脱走があったらしくてこの国に来てるって報告あったんだー!」


 ドーンさんの声が聞こえた。


「殺してやる、俺達がどんな目にあってきたか……‼」


 人影が見える。

 血走っているのが分かる。

 言葉なんて通じない。


『助けて‼』


 そう思った直後──


「「「「ぎゃああああああああ‼」」」」


 燃え上がるのが見えた。


「我が妻に害意をなそうなどすればそうなる」

「紅き王! ……⁈」


 抱きしめられた。

「無事で何よりだ……」

 心底安心しきった声に、なんだか私も安心してしまう。

 燃え上がったほうとチラリとみれば、鎮火して、黒くなっているがかろうじて生きているのが分かった。

 警備兵の方々が連れて行くのが見えた。

「カズエ! 紅き王! ご無事ですか‼」

「無事だけど寝室に穴が……」

「大工に修理を特急で依頼する! それまでは安全な場所で休んでくれ」

「安全……となると一つ」


 レストランの居住スペースに戻り、布団の中にくるまる。

「あーあ、あのベッドふかふかだったのに」

「それも新しいのをくれるそうですよ」

「……ならいいですかね」

「魔王にはキツく言っておかねばな」

「いやいや、魔王様も集団逃亡すると思わなかったんでしょう」

「……だとしてもだ」


 紅き王、かなりご立腹のご様子。

 大丈夫かなぁ?





 それから一週間後、魔王様がやって来た。

「此度はこちらの監視不足の為に起きてしまいました、申し訳ございません、六神王と巫女様」

「二度と同じことを起こさぬよう連中はバラバラに閉じ込めておけ」

「了解いたしました、各国で一人ずつ閉じ込める方向性で話していきます」

「我が伴侶に危害が加わる寸前だったのだからな」

 そう言って紅き王が私を抱き寄せる。

 魔王様は目を丸くしている。

「え、はい?」

「カズエは我の妻だ」

 そう言うと魔王様は傅いた。

「申し訳ございません、紅神王様! 伴侶様を危険な目に遭わせてしまい──」

「だ、大丈夫です、私無事です、無事でしたから!」

 私は首を振る。

「……以後気をつけよ」

「勿論でございます!」





 その後、魔王様は国王陛下と話すことがあるらしく、ベルドの街を後にして行った。

 私はその間、紅き王が過保護になって側から離れなかった、おかげでお風呂に入るのも一苦労。

 黒さん達が居なかったら大変だった。


 街の人には細かい情報は行かないよう私が頼んだので、レストランはいつも通り営業した。



「うーん、このチーズケーキほろほろと口の中で溶けて美味しいわ」

「かー! ビールは良いもんじゃあ!」

「肉料理がこんなに安くて美味しいなんて!」



 相変わらず大盛況。

 ただ、私は色々ありすぎて、ご飯も食べずに休んでいる。


「カズエ、どうした、飯を食わねば体は持たぬぞ」

「……紅き王、お心遣いは有り難いのですが、ちょっと食べる気になれないのです」


 布団に横になり、くるまる。

 色々な事がありすぎて疲れた。

 平穏無事な生活はほど遠いが、できれば静かに暮らしたい。


 とにかく眠ろう。

 明日になれば、少しは良くなってるはず。



 そう思い、私は目を閉じた──






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