旅するレストラン~ここで私は生きて行く貴方達と共に~
ごたごたがあったが、それからは穏やかな日々を過ごしていた。
たまにドラゴンを紅き王達が狩ってくるので、メルトさんとゴンドラさんの所に行き来していたらちょうどトライさんも来て。
「私だってドラゴン解体できますー‼」
と絶叫し、泣き叫んだのにはちょっと引いた。
なのでメルディスの街、ベルディの街、ビルドの街の三つを交代で行くことで話はまとまった。
他の街にも、ちょくちょく顔を出すことはあった。
主に五ヶ月の滞在期間が終わって、二ヶ月は他の場所で過ごさなければならないとき。
店のメニューも増えて、常連さん達は居なくなっている間にお金を貯めて来た時に豪遊、満腹になるまで食べるというのを続けているようだ。
国王陛下も、お忍びでいらっしゃる事がある。
それもそうだろう、あの値段で自分達に取って美味なる食事が提供されるならお忍びでもやって来たい。
それに、誰かが私達に突っかかってくる事は無かった。
店も騒ぐことはあれど暴動のようなものは起きなかった。
平穏な日々がやって来た。
「ただいま戻りました──」
今回はベルディの街で二ヶ月過ごして帰って来た。
「おう、カズエ! 神王様方よくぞ戻っておいでになりました!」
ドーンさんが出迎えてくれる。
「じゃあ、早速ですが、レストランを」
「おう!」
いつもの空き地に向かい、叫ぶ。
「旅するレストラン!」
バーンとレストランが出現する。
私が扉を開けると──
「オーナーようこそいらっしゃいました」
店員さん達が挨拶をする。
「じゃあ、いつも通りお願いね」
「はい」
私は待っている人達を見て言う。
「開店しました、どうぞ!」
歓声が上がり、人が入っていく。
私達はいつも通りVIP席に向かう。
「今日のメニューは……」
「カズエ」
「はい?」
紅き王が私の額にキスをする。
「えっと……」
「……もう少し私の好意を自覚してくれ」
「言葉にしちゃいなよ~~紅~~」
「緑、燃やすぞ」
「きゃー! 助けてカズエちゃん!」
「紅き王、緑さんをいじめちゃ駄目ですよ」
そう言うとふてくされた顔になるなので──
「私も、紅き王の事は好きですよ」
とはっきり言う。
この長い時間の中で紅き王に好意を抱くようになった。
最初は強引な方だと思ったが、行動の中の優しさに少しずつ惹かれていった。
私だけが特別、貴方の特別。
「ああ、我もだ」
紅き王も嬉しそうに笑った。
そして翌朝──
家から出ると閉まっているレストランに向かい、開店の合図を送る。
待っている人達に向かって言う。
「旅するレストラン、開店です!」
レストランは賑わいを見せる。
今日も、明日も、明後日も、私が終わるその日まで。
どうかずっとこの幸せが続きますように──
旅するレストランは今日も営業中。
六神王はレストランで舌鼓を打つ──
住民達も──
私も──
END
旅するレストラン~六神王の巫女と紅き王の花嫁~ ことはゆう(元藤咲一弥) @scarlet02
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます