薬の街




「ふぅ、お腹いっぱい」

 オムライスセットにブルベリータルトを頼んでお腹いっぱいになった私。

 同じく満足中な神王様達。

「街の散策でもしましょう?」

 緑さんが提案する。

「薬の街だぞ? 面白みはないだろう」

が面白いのよ」

「緑は薬の加護も司るからねぇ」

「ええ」

 緑さんはどんな薬を売っているのかが気になるようだ。


 私達は街に出る。

 薬やポーションを売っている店や、薬の元を売っている店があった。


「貴方、これ薬にするにはちょっと湿気すぎてるわ、もっと乾かしなさい」

「はい、緑神王様!」

「このポーション、上級っていってるのに少し質が悪いわ」

「申し訳ございません、緑神王様」


 と、ヒヤヒヤものの発言ばかり飛び出した。

「緑は薬には厳しいからな」

「あ、そうなんですか?」

「ああ、お前も薬を作ろうとすれば何か言われるぞ」

「うへぁ」


 私は薬を作らない、そう決めました。


「緑神王様!」

 小さな子が声をかけた。

「あら、どうしたのかしら?」

「お、お願いします、お母さんの病気を治してください!」

 とお金が入ってるらしい袋を差し出してきた。

 私が中身を見ると銅貨が30枚入っていた。

「ねぇ、それでレストランのパフェは食べられる?」

「あー……確か食べられます」

「では良いでしょう、案内してくださるかしら」

「は、はい!」

 小さな子──少年は目元の涙を拭いながら、家へと案内した。

 小さな家だった。

 ベッドには女性が横たわり、少年より小さな女の子がタオルを取り替えたりしていた。

「おにいちゃん、そのひとたちは?」

「このひとたちは──」

 緑さんは少年の口を閉ざし、笑った。

「新しいお医者さんよ、お母さんを見せて頂戴」

 そう言って、病床の母親を見る。

「この症状ならこの薬で問題ないわね」

 と言って、何種類かの植物と、青い球体の液体を手の上に出した。

 植物を液体に溶かし、ぐるぐると液体が回転する。

「コップか何かないかしら」

「ど、どうぞ」

 ポーション瓶らしき瓶を少年は緑さんに私、液体を注いだ。

 そして、少年はコップに入れ母親に飲ませる。

「明日も滞在するから、何かあったらレストランにいらっしゃい」

「はい!」

 そう言って家を出た。

「全く、医者も駄目ね、家に残った匂いから分かるけど薬が合ってないわ」

「そ、そうなんですか」

「まぁ、私特製だから明日には元気になってるでしょうけど」

「だと良いんですが……」

 ちょっと不安になった。


 一通り巡ったので、レストランに戻る。

 と、大盛況だった。


「そんなに酒飲んだら駄目だろ!」

「ドワーフにこれ位の酒は水と一緒じゃ!」

「チキンライス美味しいー! これが鳥の味なの⁈ あとこの粒と赤いのはなんなの⁈ 味がしっかりしてて美味しいわ!」

「菓子など体に悪いと思ってましたが……これは止められない、フルーツケーキもう一皿! 紅茶も!」


 わいわいがやがや。

 みんな楽しそう。


 いつも通りVIP席に行くと、店員さんがやって来た。

「オーナー様、こちらメニューです。それとご報告が、三号店と持ち帰りが三十種類まで拡張されました」

「そんなに⁈」

「アースドラゴンを狩ったのが効いたようだな」

「マジですか──……」

 私は思わず遠い目をする。

「まぁ、良いわ食事にしましょう?」

「そうですね」

 何となく汁なし担々麺、割と辛めを頼んでもやもやを発散させた。

 辛くて、汗をかきながら食べた。

 汁が無くても辛さが良かった。

 最期に冷えた水を流し込んだ。





 翌日──

 店を開けようとすると、昨日の親子が現れた。

「緑神王様! 有り難うございます!」

「りょくしんおうさま、ありがとうございまちゅ」

「緑神王様、有り難うございます、おかげで元気になれました」

「それは良かったわ、あ。貴方の治療をしてた医師がどこに居るか教えてくれる?」

「は、はい」

 緑さん、ちょっと圧をかけてお母さんに聞いてます。

「分かったわ有り難う、カズエちゃん。私ちょっと出掛けてくるから」

「え」

「大丈夫、すぐ戻ってくるわ」

 緑さんが居なくなると、きゅるるるるとお腹の空く音が聞こえた。

「もしかして何も食べてないの?」

「あの……私が貯めていたお金で料理を……」

 と、銀貨五枚、銅貨六枚を見せてきた。

 お母さんが病気になる前に貯めていたお金だろう。

「それだけあればおつりが来ますよ」

「え?」

「メニューを見ますか?」

「その、文字が読めなくて」

「じゃあ、店員さん。安くて栄養たっぷりの料理をこの方達に」

「畏まりました、オーナー」

「お好きなところに座ってください」

 親子を座らせ、料理を待つ。

 すると、野菜とお肉がたっぷり入ったスープに、白パン、それからデザートのフルーツヨーグルトがついていた。

「まぁ、美味しそう」

「おいしそう……」

「ごはん、ごはん!」

 私は三人が幸せそうに食事をするのを眺めた。

 もう帰る事の無い家族の事を思い出して。


「カズエどうした」

 紅き王が小声で問いかけてきました。

「……少し家族の事を思い出してたんです」

「……そうか」

 紅き王はそれ以上踏み込むことはありませんでした。

 もう戻ることができない。

 それならば、頑張って生きるしかない。

 私は再度決意しました。





「ただいまー」

「お帰りなさい、少し時間がかかりましたね」

「うん、街中の医者に突撃してきて治療が正しいか確認してきた、半分くらい間違ってたからギルドに連絡しておいたわ」

「な、なるほど……」

「そう言えば、そろそろ解体終わってるんじゃ無い?」

「そうだな、行ってみよう」

 紅き王がそう仰るので私は冒険者ギルドへ向かった。


「解体全部終わってますよ、肉は氷室で保管しております」

「うむ、で買いたい素材、購入した素材合わせて白金貨102枚、金貨56枚となりました」

「……」

 何となくだが、凄い金額だと理解はできた。

 残った素材はみんなで手分けして私のアイテムボックスに入れた。


「では、私もレストランとやらに行かせて戴きます」

 そう言ってギルドマスターさんも出て行った。

 興味があったらしい。


 私はギルドマスターのメルトさんが何を食べているか気になり行くと──

 プリンアラモード、イチゴパフェ、チョコパフェ、メロンパフェ、桃パフェ……甘い物をがっつり食べていた。

「絶食して解体すると甘い物が食べたくなるんですよねー!」

 ニコニコ言いながら大量の甘味を食べている姿に少し怖くなった。

 日頃相当ストレスをためているんじゃないかと。






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