六神王と旅をする
魔王の国~緑化と賢者の石~
王室の一室を借りてゆっくりと休んだ翌日、再び呼び出された。
ちなみにサイカさんはあの後すぐ帰ったようだ、奥さんが妊娠期間に入ったからなるはやで帰りたいと行っていたので黒さんに送って貰った。
黒さんはすぐに帰って来た。
ちゃんと送ってくれたらしい。
「あの、何かご用でしょうか?」
「我が国でもそのれすとらんとやらを開いて欲しいのだ」
「はい?」
魔王様の言葉に耳を疑う。
「我が国は荒れ地が多く、民は肉には困らぬが野菜には困っておる」
「はぁ」
「そなたのれすとらんで、民の足らぬ部分を埋めて欲しいのだ」
「ですが魔王様、貴方様の国は不可侵の国と聞いて下ります……」
「これを渡そう」
そう言って黒い宝石のブローチを渡された。
「私が許した者にしか渡さぬものだ、この者とその仲間に限り国への入国滞在を許可している」
「は、はぁ」
「という訳で早速だが行ってはくれまいか?」
「いいですけど……」
「有り難い」
なんかお家購入したのに最近滞在できてないような気もしないでも無いが仕方あるまい。
それから私は王都を出ると、紅き王に乗って、魔王様達も乗って貰い魔王様の国へと向かった。
最初は遠慮されたが、本人達は気にしてないからどうぞと言って黄さんのドラゴンみたいな姿に乗って貰った。
結界で風を防いで三時間ほど飛び続けると──
岩荒れ地の大地が見えた。
「アレが我が国だ」
「確かに……荒れ地、ですねぇ」
とりあえず、王都に着陸する。
「魔王様!」
「陛下!」
魔族っぽい方々が魔王様を取り囲む。
そして私は──
「何故人間──それは魔王様が与える栄誉のブローチ!」
「魔王様にどうやって認められた!」
あんまり歓迎されてないっぽい?
まぁ、仕方ない──
「貴様等カズエが慈悲の心でわざわざ出向いてやったのに、焼き殺すぞ」
「あ、紅き王! 落ち着いてくださいな!」
口から赤い煙のようなものを吐く紅き王を宥める。
「あ、紅き王の巫女だと⁈」
「我ら六神王の巫女だ」
「黒き王⁈」
黒さんがそう言うと、周囲の皆さんが平伏しだした。
「申し訳ございません!」
「まさか黒き王と紅き王の巫女だとは!」
「六神王の巫女様だと分からず暴言を!」
「あ、あの、気にしてませんので……」
「助かる」
「あの、広い場所はありませんか」
「こちらへ」
そう言うと広い空き地みたいな場所に連れてこられた。
「旅するレストラン!」
そう叫ぶとレストランが現れた。
「ま、魔王様、これは⁈」
「食事をする所だ、新鮮な野菜がいくらでも提供される」
「「「野菜⁈」」」
魔族の皆さんが入って行く。
そしてサラダを注文して行く。
「こんな瑞々しい野菜食べたことが無い!」
「美味い! どれっしんぐとやらをかけると更に美味くなる!」
「私はごまどれっしんぐが濃厚で好きだわ!」
美味しそうに野菜を食べている皆さんを見て私はしばし考える。
この荒れ地の国、どうにかならんものかと。
『あら、カズエちゃん。考え事?』
『ええ、まぁ』
緑さんが念話で話しかけてきた。
『この国の土地をどうにかしたいと思っているのね』
『その通りで……』
『できなくはないぞ?』
黄さんの問いかけを肯定すると、青さんが言った。
『ほ、本当ですか⁈』
『うむ、では緑魔王とやらに話しかけろ』
『はいはいー』
「魔王」
「何でしょう、緑の王よ」
「貴方はこの国をどうにかしたいと思ってますか?」
「勿論です、この荒れ地を緑豊かな土地にしたい」
「では、宜しいです。私と黄、青が三日かけてこの国を緑豊かな土地へと変えましょう」
「本当でございますか⁈」
魔王様が食いつく。
「本当ですですから──」
私の肩を触る。
「今後もこの子の事は大事にするように国全体に伝えてください」
「分かりました」
「では、国全体に声を響かせましょう」
そう言うと緑さんの姿は神聖な天使……ドラゴンの翼だけど、のような存在に変わった。
『お聞きなさい、魔王の国に住まいし民達よ。これより三日間私達は雨を降らせる! その間外には出ず、こもっていなさい、必要がある場合は許します。ですが必要が無い限りでないように』
『この三日でこの土地を買えて見せましょう』
そう言うと雨が降ってきた。
「皆さん、お家にお帰りなさいー。カズエ、私達はレストランでゆっくりしましょう」
「は、はい」
そう言って他の方々は帰り、私はレストランに引きこもった。
三日三晩雨が降り続き四日目──
「わぁ……!」
荒れ地は消え去り、緑豊かな土地ができていた。
「これで野菜の種を取り寄せて作物が作れる!」
「畑を作れるんだ!」
「家畜の餌に心配する必要がない!」
人々は騒いでいた。
「おおお! ここまで変わるとは」
「ただ、変えた弊害も出るでしょう、魔物が隠れていたりとか」
「それはこちらで対処する問題です、荒れ地をここまで豊かな土地にしてくださり感謝です」
魔王様が鑑で何かを見ている。
ちょっとのぞき込むと、魔族の人々が地面を耕し、野菜の種を植えているのが見えた。
「我が国では畑の道具と種はあれど、耕しても意味が無かった。だが、今意味ができた」
「魔王様」
「感謝しよう六神王の巫女よ」
「い、いいえぇ」
「これは礼だ、受け取るがいい」
「ん?」
小さな石を渡された。
「ま、魔王様‼」
「二つあるのだ、一つ渡しても良いだろう」
「おお、賢者の石だな。これでミスリルもオリハルコンも鉄も作り放題だぞ」
「賢者の石ぃ⁈」
「黒があまりにも魔王の国が劣悪な環境だからと慈悲で渡した二つの内一個よね」
「はい、一つお返しします」
「左様か」
私は慌ててアイテムボックスにしまった。
「そんな慌てる品でもあるまい」
「品ですよー!」
私は全力で叫んだ──
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