三王の来訪~え、また契約ですか⁈~





「やっぱり踏破されましたか」

「歯ごたえが無いが仕方ない、目的は契約者のレベル上げだからな」

「契約者ってそこのお嬢ちゃんですかな」

「うむ、そうだ」

「でだ、どんくらいレベルが上がった?」

「今は102だな、22しか上がらんかった、つまらん」

「「102⁈」」

「わ、私何もしてないけど、そんなレベルになっていいの⁈」

「でなければお前のスキルの質が上がらんだろう」

「それは、そうですけど……」

 なんかなー。

「102じゃと……⁈ それほどのレベルの冒険者なぞおらんぞ!」

「と、言いましても、私レベル上がってるだけで何もできないんですよ。剣も振るえないし、魔法も……」

「使えるぞ」

「え⁈」

 魔法が使えると聞いて私は驚いてしまう。

「我の加護があるからな、炎は使いこなせるだろう。町の外へ行って試してみるぞ」

「は、はひ」

 ずるずると引きずられ、天然のダンジョンへ。

「ファイヤーボール一発で全部仕留められるだろう、ほら行け」

「ひいいい!」

 眼圧に負けて天然のダンジョンに入る。

 年質的な生き物多分スライムとか、毛むくじゃらな獣っぽいモンスターとか、でっかいコウモリとかでてきたけど──

「ふぁ、ファイヤーボール!」

 と唱えて、手を振るだけで巨大な炎の塊が猛スピードで魔物達に直撃し、消滅してしまう。


 最下層に行くと、獣っぽいモンスターのさらにどでかいのが居たが──


「ふぁ、ファイヤーボール!」

 手をかざして唱えると、巨大な炎の塊が猛スピードで直撃し、消滅してしまった。

「わ、わお」

「分かっただろう、では町に戻るぞ」

 ダンジョン都市へ戻る。

 そしてゴンドラさんからお肉と、買い取りきれなかった素材を受け取りしまう。

 結構あった。

 肝とか、血とか、まぁ色々。

「ほれ」

「?」

「買い取り金額じゃ白金貨20枚に金貨6枚」

 とりあえず、とんでもない金額を手に入れたことは分かった。

 私はおびえながらしまう。

「あ、あのすみません。空き地ありませんか?」

「おお、きいとるぞ、お前さんのスキル。何やらダンジョンでも出せたとか」

「だ、ダンジョンは特例かもしれないので室内は遠慮したいです」

「仕方ないの、では案内するぞ」

 と言われほっとしながらついて行くと、ちょっと狭い空き地があった。

「カズエ」

 紅き王に言われ、私は言う。

「旅するレストラン!」

 そう言うと狭い敷地いっぱいにレストランが現れる。

 中を開けてみると、敷地以上に広かった。

「のう、カズエ」

「な、なんでしょう?」

「酒は、あるんじゃな?」

「は、はい。あるっぽいです」

「よっしゃ、いくぞ」

「お客様ようこそ」

 そう言って席にゴンドラさんは座ってメニューを見る。

 私達も案内され、席に座りドラゴン肉の一部を渡す。

「これで料理を」

「畏まりました」

 しばらくすると、ローストビーフっぽいドラゴン肉の塊が出てきた。

 食べると牛、豚、鳥、いずれでも無い肉の旨みが口いっぱいに広がる。

「美味しいー!」

「うむ、美味い!」

 紅き王も満足そう。


「うひゃー! このウィスキーって酒はなんて酒精じゃ、そして美味い!」


「こっちのウォッカって酒は酒精が高いぞぉ、それで美味い!」


「このビール、酒精はほどほどだが喉を通る苦みがいい!」


 と、酒を堪能している。

 さすがドワーフ。



 とりあえず、店が営業を始めると、ダンジョン都市の人が集まってきて入ってくる。

 そして料理に舌鼓をうっていた。


 私達は料理を食べ終わったら二階に避難。

 そしてそのまま、お風呂に入って歯磨きして、布団に入って眠る。


 朝起きると、相変わらず誰も居なかったが、瞬きすると──


「オーナーおはようございます」

「「「「「「おはようございます」」」」」」


 と、従業員達が姿を現す。

「オーナーこちらが今までの売り上げとなります」

 どさっと袋が複数並ぶ。

「こちらは金貨126枚。銀貨は368枚、鉄貨は532枚。銅貨は1020枚となります」

「う、受け取れないよ、だってこのお金ないと困るでしょう?」

「いいえ、困りません。金庫にもまだお金が入っておりますので、どうぞお受け取りください」

「だってみんなのお給料も……」

「私共は貴方によって作られた存在、ですので休む必要もなければ食べる必要もない。お金を貰う必要がないのです、存分にお使いください」

「有り難く貰っておけ、この先金は必要になるだろう」

「う、うん」

 そう言ってお金を受け取り、アイテムボックスにしまう。

 手持ちにしておくと盗まれそうだし。

「……じゃあ、今日の朝ご飯、お願いできるかな?」

「勿論でございます」

 メニューを出された。

 三つほど。

 和食、洋食、それ以外。

 私は洋食のパンとジャム、それからハムとスープのセットを頼んだ。


 すぐ朝食は来て料理マーマレードのジャムを塗り、かじると外はカリカリ、中はフワフワの優しいパンの味が広がった。

 ハムも、家で食べているようなハムよりも美味しくて旨みがたっぷりだった。

 スープは、暖かな甘いコーンのスープで、クルトンのカリカリ具合も良かったし、コーンの甘みとほのかな塩気がちょうど良かった。

「ふぅ、ごちそうさま」

 と思い横を見れば、紅き王は分厚いステーキと、ビーフシチューを何皿も平らげていた。

「ふぅ、満足だ」

「そ、それは何より……」

「相変わらずここのメシは美味い」

「有り難うございます」

「だが、その前に」

 紅き王は外を見つめる。

「外にいる輩を中にいれろ」

「畏まりました」

 紅き王が指示すると、店員の一人が扉を開ける。

 すると、角を生やした若く美しい女性が入ってきた。

 黄色のドレスをまとっている。

 その女性は私達に近づいてくる。

あか、貴方が最近人前に姿を見せていると聞いてわざわざ来たんだけど?」

「黄よ、その通りだ。そして人前に姿を現しているお前が何故わざわざ来た」

「当然よ、私はも貴方が虜になっている料理に興味がわいたの」

「あ、あのー……紅き王、こちらの御方は?」

「黄の王、大地を司る王とも言われている」

 何でそんなとんでもない御方も来るわけー⁈

「カズエもてなしてやれ」

「私がもてなすのではないのですが、お願いします」

「どのような食事がお望みでしょうか?」

「果物を使ったものがいいわ」

「畏まりました」

 そう言って店員はメニューを差し出す。

「へぇ、色々あるのね……あ」

「お決まりですか」

「このフルーツケーキをほーる、で頂戴」

 ホール⁈

 胃もたれ起こさないかなぁ……心配。

「畏まりました」

 しばらくすると、店員はフルーツが山盛りになった生クリームで覆われたケーキを持ってきた。

「食べやすいようにお切りになりましょうか?」

「ええ、お願い」

 店員はスパスパとカットしていく。

「ではどうぞごゆっくり」

 そう言って店員は紅茶を置いて立ち去っていった。

「ん~~‼ なにこの甘い果実! 初めてだわ‼」

「そうだろうそうだろう、ここの食い物は全て美味い!」

「この白いくりーむ? もほんのり甘いし、中もフルーツが入ってる、黄色い部分の土台も甘くて美味しいわ!」

 黄の王はそう言ってパクパクとフルーツケーキを食べきってしまった。

 そして紅茶に砂糖を入れて飲み干す。

「ああ、この飲み物も美味しいわ」

「分かっただろう、我がこの物と契約し、食事を提供させている理由が」

「ええ、分かりましたわ」

 そう言って、黄の王は私の手を取りました。

「私とも契約致しましょう!」

「へ?」

「はぁ⁈」

 紅き王は素っ頓狂な声を上げました。

「ならんぞ! お前の信者達がここまでこられると街に迷惑だ‼ 私にも迷惑だしな‼」

「あのー……仲悪いんですか?」

「悪くないわよー?」

「お前が来ると、緑も来るから嫌なのだ!」

「緑……植物?」

「そうだ、火は植物を燃やす、必要であるが相性的向こうが悪い、そうすると水が出て来て私が不利になる」

「もしかして、連鎖的に同じような立場の方が来るのが嫌なんですか?」

「そうだ」

「そんなのずるいわよ、貴方一人でこんなに美味しい食べ物を独占して!」

 黄の王が紅き王に文句を言う。

「ええい、私が最初に見つけたのだ!」

「最初に見つけた人が偉いなんて誰が決めたの?」

「私が決めた!」

「そんなこと言うなら、緑と青を呼ぶわよ!」

「な⁈ 卑怯だぞ‼」

「卑怯で結構──」


「懐かしい気配が二つすると思って来てみたら」

「そういう訳だったのね」


 青いドレスの女性と、緑のドレスの女性。

 青いドレスの女性は耳がある箇所が鰭のようになっており、緑のドレスの女性は角が樹木でできているようで花が咲いている。


「……もしかして」

「緑と青だ」

 紅き王が頭を抱える。

「黄よ、何を食べていたのだ? 甘い匂いがするぞ」

「フルーツケーキという食べ物よ、甘くて美味しかったわ」

「もしかして果物?」

「そう!」

「ずるいわ、私も食べたい」

「私は魚が食いたい」

「あ、あの紅き王……」

「……奴らの好きにさせろ」

「は、はい……て、店員さん。私のお客様に対応を……」

「畏まりました、オーナー」

「メニューをどうぞ」

「うむ」

「ありがとう」

 とんでもない方々が連続で来られて私は萎縮してしまっている。

 大丈夫だろうか?

 何か影響でたりしないだろうか?

「オーナー」

「は、はい!」

「この店はオーナーの状態に左右されやすいのです、ですから、凜としててください」

「げ、う、はい!」

「今までなんとも無かったから言わなかったのか」

「そのようですね……」

 紅き王と話し合う。

 なんとか平常心を保つ。

 青き王と、緑の王が注文したのは、青き王はサーモンのソテー、緑の王はベリータルトのホール。

「うむ、上手い! こんな上手いメシは初めてだ! 魚の旨みとレモーネの酸っぱさがたまらん!」

「果実がとっっても甘いわ! 黄色いのも美味しいし、土台もサクサクして美味しい!」

「お気に召したでしょうか?」

「うむ、これは我らも契約したくなるな」

「ええ、そうね」

「お前達もかー! そもそもお前達はどうするのだ、青はともかく緑、お前はエルフ達や妖精達に信仰されているだろう! 急にいなくなったらどうするのだ!」

「ああ、人間の街に居る王に会いに行きますと書き置き残して来たから大丈夫よ」

「私もよ、さすが緑気が合うな」

「ええ、黄。貴方とは気が合うわね」

 紅き王頭を抱えて突っ伏す。

「もう、好きにせよ」

「え、いいんですか?」

「客が押し寄せるだけだ!」

「は、はぁ……」

「と言うことでカズエちゃん」

「カズエ」

「カズエさん」

 三人の王が私を見て言う。

「宜しくお願いします」

「よろしく頼む」

「宜しくお願いしますわ」

「は、はぁ……」

 三人は私の手をとり、私の手に契約の証が出た。

 さすがに今回のことを黙っている訳にもいかずギルドに報告することに。



 どすーん‼


 ギルドマスターさんがひっくり返りました。

「お、お前さん。紅き王だけでも大変なのに、黄の王、緑の王、青き王とも契約しちまった訳かい⁈」

「否定できると思いますか……?」

「まぁ、そうだよな否定なんかしたらそれこそ一大事だ」

「ですよね……」

「とりあえず、国王陛下には伝えておく。んで店はいつ開けるんじゃ?」

「もう空いてますよ」

「それを早く言うんじゃ」

「ええー……」

「国王陛下に伝えたら店に行くから開けといとくれ」

「はぁ……」

 そう言ってギルドマスターさんは文書を作り始めました。

 私はギルドを後にし、店に戻ると、店は繁盛中。


 なので二階に避難しました。


「貴方がいない間にメニュー? ってものを見せて貰ったけどいっぱいあったわ」

「これから毎日が楽しみだ」

「そうね、楽しみだわ」

「……」

 紅き王がふてくされているのが分かる。

「紅き王、どうなさいましたか?」

「私だけの秘密にしたかったのに、どうしてこうもバレるのだ!」

「な、なんかすみません……」

「お前が悪い訳ではない、嗅ぎつけてくる此奴等が悪いのだ」

「ちょっと酷くないかしら?」

「一人だけ美味しい物を独り占めとか許されざる……」

「そうね、許せないわ」

「紅き王……」

「ええい、私とて三人相手では体が持たん」

「よかった」

「ああ、そうだな」

「じゃなきゃ三対一で戦おうかって話も出てましたから」

「よそ様への迷惑行為は辞めてください!」

 思わず私は声を上げる。

「そ、そうね。私達がここら辺で戦ったら更地になってしまうもの」

「そ、そうだな。人の営みが崩れるのは良くない」

「そうね、信者の方が居ないけど迷惑は駄目ね」

「カズエ、分かっている。仲良くやる」

「ならいいんです」

 私はほっとしながら、紅茶を頼み、口にした。

「あー美味しい」

 これからどうなるんだろうとか思いながら私は考えるのを辞めた──






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