王都へ~私を召喚した国は滅亡しました~




「さて、ベルドの町に戻るか、それとも王都に向かうべきか……」

 私は考え込んで悩んで居た。

 どっちにしろ王都には向かわなければならない。

「なら王都に向かって王族が満足したらベルドの町に戻ればよかろう」

「紅き王……」

「あら、貴方そんな呼び方させているのね」

「えっと……」

「私は黄でいいわ」

「黄さん……」

「さん付けも結構よ」

「私も青で良い」

「私も緑でいいわ」

「は、はい……」

「王って呼ばせてるのは貴方だけよ、あか

「私はお前達とは違うのだ、こいつと最初に契約した王なのだからな」

「あらあら……」

「意地はって」

「ねぇ」

「貴様等~⁈」

「紅き王抑えてください! 店内で喧嘩をされては困ります!」

「ぐむ……そうだな、そうだったな」

「あの短気な紅が珍しいわ~」

「すごいわねカズエちゃん」

 他の王達に感心されている、私は私でいっぱいいっぱいなのだ。

「よし、では王都へ向かうぞ」

「はい」


「なにぃ⁈ もう王都に向かうのか⁈」

 ギルドマスターのゴンドラさんが目を見開いた。

「え、ええ。紅き王達もそれが良いと……」

「なら、仕方ないのぉ。また来て店開いてくれ!」

「はい!」

 そう返事をして私は紅き王に乗り王都へと向かった。


 あっという間に王都に着くと、騎士達がぞろぞろとやってきた。

「連絡は既に聞いております、国王陛下がお呼びです、どうぞ」

「は、はい」

 案内されて謁見の間へ。

「其方が異世界人カズエか?」

「は、はい」

「ゾナール王国め、異世界人召喚はやってはならぬと他国の忠告を無視したな」

「あの、私帰れるんでしょうか?」

「帰った者がいる試しがない」

「……」

 どうやらこの世界で生きる腹をくくるしかないらしい。

「魔族の領土を攻め込んで……魔王ゾフィエルは既に怒り心頭だと言うのに……」

「はぁ」

「おっと話がそれたな、余がクルディア王国の王クルスだ。そして妻の……」

「ミーアです、異世界の御方初めまして」

「は、初めまして」

「さっそくだが其方のスキルを見せて貰いたい」

「あの、広い場所を提供していただければ……」

「うむ」

 騎士団達の稽古場を提供された。

 稽古に使うものは片付けてただっ広い。

「旅するレストラン!」

 バーンとレストランが出現する。

 なんかよくよく見るとおしゃれ感が満載。

「おお、これが噂の……」

「此度はお客様として扱いますお代は結構です」

「そうか」

「という訳で宜しくね」

 と店員さんに声をかける。

「畏まりましたオーナー」

「わぁ、ひろい」

「きれいー」

「二人ともはしゃがない」

「まぁ子どもだからいいじゃないか」

 王様と王妃様のお子様らしき方々が。

 広い席に案内される。

「葡萄酒がこんなに安いのか? だが味が良いときく、済まぬ葡萄酒を持ってきてくれ、グラスは二人分で」

「畏まりました」

 店員は葡萄酒を持って行き、コルクを抜いて二人分に注いだ。

「どうぞ」

「陛下、毒が入っているかもしれませぬ」

「ギルドから聞いている毒など入っておらぬとな」

 豪胆だな、この王様。

「うむ、美味い! このような美味い葡萄酒は初めてだ! お前達も注文してみるといい」

「えっと、あの方々も私のお客様扱いで」

「分かりました」

 店員さんはにこやかに笑いながら騎士団の方や大臣の方の相手をしていた。


「こんな美味い肉初めてだ!」

「しゅりんぷってこんなにおいしいものなの?」

「赤いライスおいしい、お肉が入ってる」

「こんな甘い菓子初めてだわ……」


 王族の皆様、満足そうです。

 騎士団や、大臣の方々も満足そうです。

 食事が終わり、店から皆が出ると私はレストランをしまいました。

「これが私のスキルです」

「いや、素晴らしい!」

「こんな素晴らしいスキルを見抜けぬゾナール王国には感謝する、が異世界人召喚はいただけぬ」

「と、言いますと?」

「魔王ゾフィエルとゾナール王国の隣国に、ゾナール王国を滅ぼす旨の文書を渡す。皆今回の件を知れば喜んで参加するだろう」

 王様怖いことおっしゃってます。


──私と一緒に召喚された子達どうなるんだろうなぁ?──

──まいっか、誰もかばってくれなかったし!──


 私は割り切ることにした。

「其方にはこのような素晴らしい食事を提供してくれた礼がしたい、しばしまたれよ」

「こちらへ」

 と、客間へと案内される。

 しばらく待っていると──



「魔王ゾフィエルとゾナール王国の隣国全てが我らの意見に同意してくれた、我らも兵士達を派遣する、ゾナール王国は前々からうさんくさい事ばかりしていたが、今回の事で我慢が効かなくなった。だからゾナール王国を滅ぼすこととなった」

「は、はぁ……」

「ならば我らも行こうか?」

「おお、誠ですか、神王達よ!」

「神王?」

 久しぶりに聞く単語に首をかしげる。

「私達全員を王様とか貴族が呼ぶ場合は神王と呼ぶのよ、神に等しい存在だから」

「神に等しいなら──」

「残念だけど、貴方を帰すことはできないの、ごめんなさい」

「がっくり」

 やっぱり駄目かぁ、腹くくってこの世界で生きて行こう、うん、そうしよう。





 紅き王に乗せられ、ゾナール王国まで飛んできた。

 隣には黄さんが居る。

「あの黄さんは、なんで私と一緒に紅き王に?」

「貴方が凄惨な光景を見ない為よ」

「?」

 そう言うと、周囲が岩だらけになった。

 幸い呼吸はできるが混乱する。

「あの⁈ 黄さん⁈」

「終わるまでそのままで居てね、ごめんなさい」

 十数分くらいそのまま閉じ込められた。

 岩が消え、明るくなり、下を見ると大地が燃えていた。

「あまり見ちゃ駄目よ」

 黄さんが私の首根っこを掴み見ないようにさせる。


『青と緑が王都からもどってくるぞ』


 バサバサと、青いドラゴンらしき存在と、緑のドラゴンらしい存在がやってきた。


『カズエちゃん、お仕事終わったわよ』

『お前と一緒に召喚させられた連中は捕まったが、どうする?』

「追放されるとき助けてくれなかったので無視で」

『そうなの? 酷いわねぇ』

『誰もか』

「誰も」

『それは酷い』

「これからは私達がしっかり守ってあげるからね」

 黄さんが私を抱きしめてくれた。

「うぁあ、あ、ああああああん!」

 私は大声で泣いた。

『泣くが良い、許す』

「よしよし」

 追い出されるとき、着いてきてくれる子は誰もいなくて。

 不安だらけの世界で、自分のスキルを使ってなんとかしやろうと思った。

 そうしたら、とんでもない方達に見つけられて、保護されて。

 やっと、やっていけるんだと思えるようになった。

 これでもう、泣かなくても平気だ──






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