ダンジョン都市ベルディへ~滞在上限期間が来ました~
ベルドの街に戻ると、盛大に歓迎された。
まぁ、私のスキルだろうけど理由は。
「カズエ、頼むぜ!」
「はい」
空き地に向かい言う。
「旅するレストラン!」
そう言うとレストランが現れた、前よりも大きい。
中に入ると──
「お帰りなさいませ、オーナー」
「ただいま、どうしてこんなに大きくなったの?」
「オーナー様が契約なされている方のおかげでレベルが上がったためです」
「え」
「焼け野原にするついでに魔物も焼いてやったからな」
「な、なるほど」
「私達もだ」
青さんと緑さんも言う。
「なので三階が居住区になっています、二階もレストランの部分になりました」
「そう、なんですか」
「それでお食事は」
「メニューを見せて」
「畏まりました」
席に案内され、メニューを見る。
メニューが豊富になっていた。
「ハンバーグステーキをお願い」
「我も同じので頼む」
「我はこの鮎定食を頼む」
「私はサラダと、ストロベリーサンデーを」
「私もサラダと、チョコパフェで」
「畏まりました」
注文をしてからちらりと見るが、お店は客で一杯だ。
この日の為に皆お金を貯めていたのだろうかと思ってしまう。
外も見れば並んでいる。
私は来たハンバーグステーキをぱくり。
美味しい肉汁が口いっぱいに広がり、一緒にある野菜も食べて満足する。
「うむ、美味い!」
「美味いな、これは、塩の具合が良い」
「サラダはシャキシャキ、ベリーは甘くて冷えて美味しい」
「サラダが瑞々しい、ちょこれーととやらはほろ苦くて甘くて美味い」
「それは良かったです」
「はい、何よりも嬉しいことです」
店員さんは微笑んでいる。
「ビールにはソーセージじゃろ⁈」
「いいや、ステーキじゃ!」
「シーフードフライじゃ!」
ドワーフらしい方々が言い争いをしている。
「と、止めないと」
「行って参ります」
店員さんが行き、何か言っている。
「お客様達、当店で争われると出禁にせざる終えない場合があります。ですからどうか、争いは止めて下さい」
「お、おう……」
「わかった……」
「すまん……」
お店から出禁にされるのは堪えるのだろう、大人しくなった。
それにしてもお酒に合う料理で言い争うとは、流石ドワーフ。
「儂等も気をつけんと」
「酒で言い争いになるところじゃったからな」
「そうじゃなそうじゃな」
「俺等も気をつけないとな」
「そうだな」
「そうだね」
色んな所から声が聞こえる。
出禁は堪えるんだろうなぁ、それだけこのレストランの料理とかお酒とか美味しいんだろうなぁ。
そんなこんなで三ヶ月が経過した。
その間は周辺の魔物を紅き王達が狩ったり、色んな事をしつつレストランを出していた。
「オーナー業務連絡です」
「ん⁇」
「この場所でのレストラン開業ができなくなりました、別の場所で一ヶ月開いてからでないと開くことができません」
「マジかー……仕方ない閉めよう一回」
レストランを出て仕舞い、ギルドへ向かう。
「──という訳で別の街で一ヶ月くらい開いて来ます」
「ぐむぅ、そういうスキルだから仕方ないが一ヶ月か……」
「すみません」
ギルドマスターさん達に言われて申し訳なくなる。
「いいえ、カズエさんが悪い訳ではないのです」
「で、次はどこの街に行こうかなぁと」
「それがだな、ベルディの街の冒険者ギルドのマスターがお前のスキルに興味津々でなぁ」
「興味津々ってことはドワーフさんですか?」
お酒かな?
「いや、エルフだ」
「え? エルフって菜食主義じゃ」
「なんだ、お前の所じゃそういうイメージがあるのか、エルフは美食家だぞ、美味いもの食べる為なら金を惜しまない」
マジか、エルフって美食家なのんか。
「そういうわけだから、ベルディの街に行ってもらえるか」
「うーん……」
「ベルディの街にはダンジョンがある、レベルを上げればもっと良い料理がでてくるのでは?」
紅き王がそう言う。
「あー、じゃあ行きます」
料理のバリエーションが増えるのは良いことだ、私は頷く。
「そうか、なるべく早く帰ってきてくれよ!」
「ええ、帰ってきて下さると嬉しいです、それまでお金を貯めておきますから」
「はーい!」
私はドラゴン形態っぽい紅き王に乗って、ベルドの街を後にした。
びゅーんと飛ぶこと一時間、ベルディの街らしき、街が見えた。
「あれですか?」
「うむ、あれだ」
紅き王は門の入り口に着地する。
他の方々も。
私が下りると、紅き王は姿を変えた。
「我は紅き王、ベルドの街のギルドかへ申請したと聞きここに来た、ギルド長を出せ」
「か、畏まりました!」
門の番人をやっていた兵士の一人が慌てて街の中に入っていった。
そして数分も経たないうちに、耳がとんがって長い──エルフ? の人が出て来た。
「カズエ様、神王様方ようこそいらっしゃいました! ベルディの街へ! 私はこの街の冒険者ギルドのマスター、トライと申します」
トライさんは私のことを目を輝かせて見ている。
「えっと、空き地、ありますか?」
「もちろんです、さぁこちらへ!」
ずるずると引っ張られていく。
少し広めの空き地の前に案内され、私は声を出す。
「旅するレストラン!」
バーン! とレストランが現れる。
「おお、これが国王陛下すら魅了したれすとらん!」
「えっと、お金……」
「この日の為に稼いでおります!」
とじゃらっと袋を見せた。
「で、では入りましょうか……」
扉を開き、レストランへ入る。
「ようこそオーナー様」
「いつもの席でお願い、それとメニューを」
「あの……相席していただいてもよろしいですか?」
「ちょっと人数的に無理なので隣のテーブルに……」
「分かりました!」
何故相席を申し出たのか分からないが、いつも通り紅き王達と一緒に座る。
「疲れたから甘い物が食べたい、ストロベリーパフェを頼む」
「なら、Lサイズで頼んだらどうでしょう? 大きいサイズが来ますよ」
「うむ、それにしよう」
「私もストロベリーパフェの大きいサイズで」
「私はチョコレートパフェの大きいサイズで」
「私はフルーツパフェの大きいサイズで」
「私はオムライスをお願いします」
紅き王達は皆甘味だなぁと思っていると、ちょんちょんと小突かれた。
何だろうと振り返るとギルドマスターのトライさんが困り顔をしていた。
「あの、お勧めとかありますか?」
「全部お勧めとしか……」
「それでは駄目なんです……! 私達エルフはドワーフ達ほど大食漢ではありません! ですからどうしても絞らなければならないのです……」
「うーん、じゃあ今食べてみたいものは?」
「肉です!」
「じゃあ、ローストビーフをお勧めします」
「有り難うございます、ではローストビーフを!」
「畏まりました」
「あ、それと葡萄酒もお願いします」
「畏まりました」
さて、口に合うといいんだけど……
そんな事を考えていたら、オムライスが目の前に。
「いただきます」
と礼をしてスプーンを入れる。
柔らかくとろとろのオムライスとチキンライスがマッチしていて美味しかった。
子どもっぽいと思われるかもしれないがそれを指摘する人はいない。
「わぁ……! 何なんですかこの柔らかいお肉は……それでいて味付けとソースがまた絶妙……! ソースの辛みが実にいい!」
楽しそうに食べているギルドマスターさん。
よかった。
「葡萄酒も、今まで飲んだ葡萄酒よりも美味しい! 水で薄める必要がないとは!」
お酒のことは子どもなのでよくわかんないです。
食事を終えて、一息つくと、隣でも食事を終えたギルドマスターさんが目を輝かせていた。
「ああ、こんな美味しいものが一ヶ月たべれるなんて……!」
「喜んでいる所すまんが、一端我らはダンジョンへ潜る。その間はレストランはここにはないぞ」
「そんな!」
ギルドマスターさんショックを受けた顔。
「すぐ戻ってくるから安心せよ」
「そうね、すぐ戻ってきましょうね」
「とりあえず、今日はここでお店を運営しておきますので……!」
「こうしちゃ居られない、まだ胃袋には空きがある、食べねば!」
ギルドマスターさん、必死に何を食べようか悩んで居る。
ふと視線をやれば、お店の前に人だかり。
「あの……」
「畏まりました」
最期まで聞く前に店員さんは店の扉を開けて行った。
「こちら、代金をいただいて食事をする場所となっております、お食事をしたいという方はどうぞお入り下さい」
と誘導し始めた。
ギルドマスターさんが入ったのをみんな見て、そして恐る恐る入って来て、料理を頼んで、そして驚愕する。
美味しい、こんな美味しいもの食べたことがない、と。
まぁ、王族の方にも認めてもらえたお店だしね。
食事を済ませると、私達は居住スペースに向かい、そこでお風呂にはいってゆっくりし、ベッドで眠った。
朝起きて食事をとっってお店をしまうと、冒険者ギルドへ行き、ダンジョンへ向かう申請をする。
そしたら四足歩行形態の紅き王に乗って、ダンジョンへゴー。
トラップも紅き王の加護で全部防げ、モンスターは全員で轢殺。
それを繰り返し、15階に到達し、休憩エリアへ。
人も少ないので気にせず──
「旅するレストラン!」
叫ぶと扉が現れた。
扉を開いて中に入り、食事をする。
私が入って行っても扉が残っていたのだろうから、少ないけど冒険者さん達も入って来た。
「な、何だここは⁈」
「どうなってるの⁈」
そして説明する店員さん。
お金はあると言った冒険者さん達は安いメニューに目を白黒させていた。
「どうみても、普通の食堂より質が良さそうなのに安いわ!」
「いや、出てくるまで分からねえ、とにかく注文だ」
と言っていそいそと注文している。
注文してすぐ、やって来た温かな料理。
恐る恐る口にして驚愕。
「蕩けるような旨みが強いな、美味い!」
「ほくほくカリカリして美味しいわ!」
そう言って食べていく。
追加の注文までする。
そして満腹になった腹を抱えて休憩スペースの外に戻るのだ。
私は客がいなくなると出て、レストランを仕舞う。
「紅き王、行きましょう」
「うむ」
私は紅き王に乗り、ダンジョンを駆け抜ける。
砂漠地帯の地下が広がっていた。
「さっさとボスを倒して戻るぞ」
「そうねぇ」
「そうだな」
「そうね」
「ですねぇ……」
加護があるけど直射日光はきつい。
なので、紅き王達は猛スピードで祭壇まで到着し、祭壇に全員で触れる。
すると、砂地の別の場所へと移動した。
「サンドシャークの群れか」
サメの頭の部分っぽいのが大量にこちらに向かってきている。
「カズエちゃん、耳塞ごうね?」
緑さんにそう言われて耳を塞がれてしまう。
すると、ドンと大地が揺れるようなのを感じた。
サメたちは砂の上でジタバタともがいている。
「アクアカッター!」
青さんの水の刃で細切れになり、消滅するサメの群れ。
そしてドロップしたのは。
「ひれ?」
「おお、加工すれは珍味になるぞ」
「……つまりフカヒレか」
納得する私。
「レストランで加工できるならしてもらったらどう?」
「試してみます」
会話を終えると、またみんなで祭壇にタッチ。
そして光が見えて──
「ダンジョン踏破者だー!」
「ははは……」
「ギルドマスターを呼べ!」
「あ、行きますから」
私はそう言って紅き王に乗って冒険者ギルドへ。
「いやぁ、踏破してくれると思いましたよ!」
「踏破したのは紅き王達なのですが……」
「さすがは神王様達」
「当然だ」
「では、カズエさん、前回忘れていた分も含めて……ギルドカードを出して下さい」
「は、はい」
忘れた分ってなんだろう。
と、思ったら白金のカードを渡される。
「Sランク、最上ランクのカードです」
「え」
私何もしてなーい、全部紅き王達の功績。
「紅き王を契約しているというだけでもすごいのですから」
「は、はぁ……」
「では、れすとらん、開いて下さいますね⁈」
「あー」
やっぱり食い気はすごいな、エルフって本当美食家なんだな。
と、一人黄昏れる私だった。
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