ベルドの街で家を買う~白と黒の二人の王の来訪~
「ああ、これも美味しい。あれも美味しい」
「ははは……」
レストランを開き食事中。
「確かに、美味いですな。こんな美味いものがこの値段とは」
「ええ、貴方凄いですわ」
「ママこれ美味しいー」
「おいしいー」
と会話が聞こえている。
その言葉に安堵する。
私も昨日と同じオムライスを注文する。
「さて……」
私は紅き王達を見る。
「此処で一ヶ月過ごしてベルドの街に戻る、でいいですかね?」
「うむ、我はそれで構わぬ」
「私もよ」
「私もだ」
「私もよ」
みんなそれで良さそうだ。
「レストランの居住区を使い続けるのも悪くないですけど、そろそろベルドの街に腰をおける場所を探した方がよさそうですね」
「ええ⁈ ベルドの街に⁈」
ギルドマスターのトライさんが首を突っ込んできた。
「お願いします、どうかこの街に拠点を置いて下さい」
「えーでも、ダンジョン都市に居住区おいたら面倒ですし、そもそもベルドの街にはある意味恩がありますので」
最初色々と優遇してもらった恩は忘れない。
「うう……仕方ありません、ですが、このスキルは一定期間しかその場所でスキルを使えないもののようです、ですのでどうかそれ以外の時はこの街に……!」
「ははは、前向きに検討させていただきます……」
そんなこんなで私達は一ヶ月間をこの街で過ごした。
その間もダンジョン外の依頼を受けてこなしてお金を貰いつつ、レストランの稼いだお金を貰いつつ、購入資金を貯めていった。
「では、帰りますね」
「うう、また来て下さいね……」
「ええ、また来て下さい……」
冒険者のギルドマスターと商人ギルドのマスターがハンカチで目を拭きながらよよよと言わんばかりの表情で私達を見送りに来た。
「また、来ますから」
──いつか分からないけど──
と心の中で思いながら、私は紅き王に乗りベルドの街へと向かった。
街に戻るとみんな総出で──
「「「「お帰りなさい‼」」」」
と出迎えてくれた。
まぁ、レストランが目当てなんだろうけど。
「お前さん達が居なくなってからたまにやってる屋台の飯食ってるんだが、どうもな」
屋台やってる皆さんごめんなさい。
と、心の中で謝る。
「でも、それだと屋台をやっている人に迷惑がかかるんじゃ……」
「屋台やってる連中は別に仕事もってるからな、お前のスキルのれすとらん? の料理の味には勝てないって舌を巻いてるよ」
「Oh」
ちょっと驚き。
「さぁ、店をあけてくれ」
「はい!」
空き地に向かい、声を出す。
「旅するレストラン!」
レストランが出現する。
なんか、高級感がアップしている。
とりあえず、扉を開けて入る──
「オーナーようこそいらっしゃいました」
「うん、いつもの席に」
「VIP席がございますが」
「ヴィップ席?」
紅き王が首をひねる。
「個室で眺めの良いお部屋となっています」
店員さんが説明すると、紅き王は──
「他の客とは違うのだろう、良い、その席に通せ」
「畏まりました、こちらへ」
案内される。
「ほほぉ、街が一望できるな」
エレベーターに乗り、住居スペースを無視して最上階の一室に来た。
階段がはしにあった。
「こちらがお手洗いにつながっています」
「有り難う、じゃあここで食べようか」
「こちらメニューになります」
明らかに高級そうなメニューが満載だったので、別のメニューを貰い、オムライスとスープとサラダのセットにした。
デザートにチーズケーキを。
「我はこのAランクの牛のステーキと、ビーフシチューを頼む」
「私は刺身定食を頼む、ああ酒も合うのが欲しい」
「私はストロベリーサンデーですわ大きいサイズの」
「私はチョコパフェですわ、同じく大きいサイズの」
街の人達の反応が見れないのが残念だ。
料理が運ばれてきた。
「いただきます!」
「うむ」
「新鮮な魚だな、確か醤油とわさびが……」
「わーすっごい大きい!」
「本当、大きいわ!」
等など言いながら料理に舌鼓を打つ。
「下の階はどうなってるのかな?」
と、私が呟くと店員さんがやってきた。
「大盛況でございます」
「本当? 良かった……」
「今のここの料理は食べるとステータスが全般的に上がるしな」
why?
「あ、紅き王様、どういうこと……」
「オーナー様のご友人様の言う通りです。オーナー様がレベルアップした結果、今の私達の料理を食せば、ステータスなどが上がったり、疲労になりにくくなったり、疲労がとれたり、様々ないわゆるバフ効果があります」
マジかー……
「それ、気づいている人、いる?」
「居ませんね」
「よし、内緒にしよう、そんなのバレたら余計面倒になる」
私は重要機密を言わないように心の中に止めた。
「でも、うっかりしゃべったらどうしよう」
「そうならぬように我が見てやる」
「有り難うございます、紅き王」
「うむ」
紅き王がいれば安心だ。
「さて、カズエ」
「はい、何でしょう?」
「この間言ってたな、居住区をこの街にすると」
「駄目、でしたか?」
「駄目ではないが、このスキルを使用し家を買わないということか」
「家……そうですね、でもどんな家があるのか知りたいのでちょっと商人ギルドに言ってきます……おっとお金は下ろして……」
どれだけ高い値段になるか分からないから、国王陛下からいただいたお金も含めて今まで稼いだお金をアイテムボックスに入れておく。
総額142白金貨7652金貨8765銀貨9765銅貨9999鉄貨だった。
端数は全部お店に戻して商人ギルドへ行く。
「ごめん下さいー」
「あら、カズエ様ではないですか、どうなさいました」
受付の綺麗なお姉さんが穏やかに微笑んだ。
「あのー……この街で家買いたいんですが……」
「‼ 少々お待ちを!」
お姉さんは奥の部屋へ行き、ギルドマスターを呼んできた。
「カズエ様、ベルドで家を買いたいと?」
「は、はい、ただどんな家があるか分からないので」
「はいはい、畏まりました、私がご案内します、ついでにメイドと執事、門番を派遣しているお店も紹介いたします」
「はぁ……」
ギルドマスターのマーニさんの案内で色々家を回る。
最初っから豪華な家、お風呂とトイレが魔晶石で使えるようになるらしい、文明的暮らし!
また、コンロもあってこれも魔晶石で使えるようになるらしい。
便利な世界だ。
最初の家が豪華すぎて、他の家は見劣りしてしまった。
が、最初の家は50白金貨。
かなりの値段だ。
買えない訳では無いけれども。
「この家にしろ」
「ええ、この家がいいわ」
「買えるのでしょう」
「ならこの家にしろ」
と……神王様達の圧に耐えきれず購入。
だって神様に近い存在みたいな方々から言われたら逆らえないし、逆らったら怖いじゃん!
と心の中で思いながら白金貨50枚を渡して豪邸を購入。
「次、家の留守の間手入れしてくれたり、門番やってくれる人を雇わなきゃ!」
「ふむ、そうだな、では行くか」
案内された、メンティア商会に向かう。
「ごめん下さいーギルドマスターから案内されたカズエというものですが……」
紹介状を手にしながら言うと、屈強そうな男の人達の間から優しそうな表情の女性が現れた。
私は紹介状を渡す。
女性は紹介状を見てにこりと笑い。
「メンティア商会へようこそ、私はティアこの商会の長です」
「で、執事とメイド、門番になってくれる方を紹介してほしいのですが……」
「畏まりました、こちらへ」
と、案内されると執事服に身を包んだ人達とメイド服に身を包んだ服の人達が現れた。「神王様がいらっしゃるとなると……そちらのコルダ家の者達がよろしいでしょう、教養もあり仕事熱心ですから」
「ではその方々でお願いします」
コルダ家と呼ばれた方達は指名されると背筋をただし、私に挨拶をした。
「はい、では次に門番ですね」
「はい」
「なら、デュラン、ヒュース、ミレン、レイナがよろしいでしょう」
「うむ、そやつ等なら問題あるまい」
「さすが神王様、お目が高い」
なんか私が居ない間に話は進み、金貨7000枚を支払って契約することになった。
わぁ、今日は凄いお金使ってる。
そして屋敷に戻り一息つく。
「カズエ様、ご来客が」
ディランさんが慌てた様子で来た。
「嫌な予感がする」
「紅き王?」
「嫌な予感というかカズエちゃんの負担が増えちゃいそう」
「はい?」
疑問に思いながら外に出ると、黒い角を生やした顔に鱗のある美丈夫と、白き角と天使のような輪っかを持つ綺麗な女性がやってきた。
「えっともしかして……」
「残りの神王だ」
「ええ⁈」
「お前達の情報を聞きつけてやって来た」
「そう、美味しいもの独り占めはずるいわよ」
「独り占めしとらんわ」
紅き王は疲れたように言った。
「私は白、そしてこっちは黒」
「黒だ」
「えっと白様に、黒様」
「様付けはいらぬ」
「そうよ、もっと気軽に読んで頂戴?」
「で、では白さんに黒さん」
「はぁい、カズエちゃん」
「えっとそのつまり、私のスキルで提供する料理が食べたいと」
「そうよ」
「……分かりましたご案内します、留守番はお願いします」
「畏まりました」
私の気持ちは不安でいっぱいだった。
どうなるんだろう、一体?
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