六神王と一緒~過去にさよなら~

朝食の後は……




「カズエ様、ギルドマスター様がいらっしゃいました」

 翌日、ドーンさんが書状をもってやって来た。

「国王陛下からの話だと神王の加護を受けた者は丁重に扱いたい、何か不便なことがあれば即座に報告するように。それと暇があったら王都でスキルの店を開いて欲しいだとよ」

「つまり、今のままで大丈夫そうってことですか?」

「ああ、貴族も冒険者も手出ししないようにお触れを出してたがそれをより強く出すつもりだと」

「なんか申し訳ない……」

 自分はただの人間なのだ、スキルはもっているし、何故か無制限のアイテムボックスを持ってるがそれ以外は普通だ。

 自分のステータスを見ることなんてできないし。

 神王さん達は私のステータスとか見れるらしいけど。

 謎だ。


「でだ、カズエ、今日の店は……」

「あわわ、今開けますー!」

 私は慌てて家から飛び出し、スキルで建ててるレストランへ行く。

 そして扉を開けて──

「すみませんー営業開始してくださいー!」

「「「「畏まりました、オーナー!」」」」

 店がぱっと明るくなり、皆働き出す。

 そしてあっという間に店の中は客で一杯になる。


「うめぇうめぇ」

「アンタそれしか言えないの?」

「事実じゃねーかうめぇんだから!」

「まぁ確かにそうね」

「だろ?」


 たまに軽い言い争いっぽい言葉が聞こえてくるが、特に問題は起きない。

 それに安堵する。

 出禁になられるような自体は起きて欲しくない。


「カーッ! 朝から飲むビールは最高じゃなぁ!」

「そうじゃなそうじゃな!」


 何だろう、駄目なサラリーマン見てるみたい。

「オーナー様、お食事は」

「あ、いつもの席で、皆さんもそれでいいですか?」

「構わん」

「勿論よ」

「ええ」

「勿論だ」

「いつもの席?」

「食事か、楽しみだ」


 私は店員さんに連れられてVIP席へと移動した。


「ああ、この席の事だったのね」

「はい」

「お食事は──」

「えっと私はオムライスと、デザートにイチゴタルトを」

「我はそうだな、カレーライスというものを頼もう、肉は牛でな」

「私もそうね、カレーライスで、肉は鶏で。デザートにイチゴパフェを」

「私はサラダを、デザートにチョコレートパフェを」

「私は焼き魚定食を」

「私は彼女と同じオムライスをお願い、それからデザートは桃パフェ!」

「私はローストビーフを頼もう、葡萄酒もくれ」

「畏まりました」

 店員さんは注文を受けると居なくなった。


 数分後──

「「「お待たせしました」」」

 と、店員さんたちがやって来た。

「デザートは後ほどお持ちします」

「はい」

 私はそう答えてオムライスにスプーンを入れる。

 口にすると、チキンライスの肉とトマトのふわとろの卵の優しさが口いっぱいに広がる。

「ああ、美味しい」

「うむ、このカレーライスというものも中々悪くない。この辛みが良い」

「ええ、鳥肉ってこんなに美味しいのね、辛みも良いし、ふふこれならデザートが楽しみになりそう」

「うむ、このみそしるとやらに入っている海藻と白いものも良いな」

「この黄色いのふわとろ、中の赤いのも美味しい!」

「うむ、この葡萄酒水割りせんでも美味いな、ローストビーフとやらは肉が柔らかく、このソースなる液体との相性がいい、美味い」

 皆さん、ぱくぱくと朝食を食べ始める。

 それでもしっかりと味わっている、凄い。


 食事を終えた方々でデザートを頼んだ人達にデザートが来る。

「ん~~!」

 イチゴの甘酸っぱさとクリームの甘さが引き立っていて、タルト生地の部分もさくさくとしていて美味しい!

「ああ、このチョコレートパフェ、甘苦くで美味しい……ひんやりと冷たいのもいいわ」

「このイチゴパフェ、イチゴが甘酸っぱくて、クリームの甘さがまたいいわ」

「うーん、この桃パフェ、桃なる果実をまるごと使っているけど、それがまた美味しいのよ!」

「……我もデザート頼めば良かったかな」

「私もだ」

「私もだな」

「あ、頼みますか、メニューどうぞ」

「うむ、良き契約者だ、カズエ」

「ありがとう、カズエ」

「礼を言う」

「いいえ……」


 正直私の方が恩恵受けてるし。

 レベル上げとかの恩恵とか、色々。


 おかげでレストランは規模を増し、料理のメニューも増えてきた。

 高級品からお手頃な価格のものまで色々。


 場所も変えて過ごすことができるだろう。


 色んな人に食べて貰いたい。

 この国の色んな人に。

 私のお店スキルで、私にとってささやかでもいい、その人達にとって豪華と思える料理を食べて貰いたい。


「カズエ」

「はい⁈」


「何を考えている?」

「いやその、この国で、私のこのスキルでの料理を色んな人に食べて欲しいなぁって思いまして……」

「甘ちゃんだな」

「うぐ」

 紅き王に言われて言い返せない。

「ちょっと紅。貴方もう少し言えないのかしら? 貴重なスキルだからあまり使いすぎると人々が貴方頼りにしてしまうと」

「え?」

「この料理を出すスキルは貴重だ、何もない場所から対価さえ払えば好きなだけ料理が出る。その能力を狙わないものは余所の国では居ないだろう」

「と言うことは……」

「この国のギルドがある場所限定なら使うのを許可しよう。お前の身を案ずるが故だ、許せ」

「いいえぇ!」

 まさか自分の身の安全を心配してくれてたなんて思わなかった。

「オーナー様」

「はいぃ⁈」

 店員さんに呼ばれ、私はびくっとする。

 あ、神王様達笑わないでくださいよ。

「な、何かあったんですか?」

「ギルドマスターを名乗る方がオーナー様に用があると」

「はい?」

 私は案内されるがままに、二階へと向かった。


「おう、美味い飯いつも有り難うな」

「有り難うございます」

 食事を終えたらしい、ギルドマスターのドーンさんと、マーニさんが居た。

「レストランの事で相談ですか?」

「いや、実は神王様方にご相談があるんだが……一応契約者はお前さんだろう? お前さんを通した方がいいと思ってな」

「はぁ……」

「我らに何の用だ?」

「実はですね……」


 話を聞くと、プラチナウルフと呼ばれるモンスターが街道に現れて冒険者や商人達を襲っているのだと。

 プラチナウルフはフェンリルの次に強い狼種の生き物だが人を襲わないはずなのに襲っている原因を調べて欲しい、とのことだ。


「プラチナウルフと言えば」

「私の庇護にある生き物の一種ね」

 と、白さんが言う。

「分かりました、調べてきますね!」

「ああ、頼むぞ」

「はい!」

 そう言って店を出ようとすると──

「オーナー様」

「はい?」

「二号店をオープンできるようになりました」

「二号店をオープンってことはここにこのお店を置いたまま別の場所でもお店をオープンできるの?」

「はい」

「ほへー」

「まぁ、使う事はあまり無かろう、どっちにしろ一定期間営業してると別の場所に行って営業しないと駄目なのだろう」

「その通りです」

「まぁ、二号店をオープンできることが分かったので、行きましょう!」

「元気がいいな」

「元気がいいのはよい証拠よ」

 紅き王のぼやきに白さんが反応する。


 プラチナウルフ、何が目的で人を襲うんだろう?






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