二ヶ月経過と、持ち帰り種類増加
「自分がいなくなった後、だと?」
「はい……」
神王様達にそう言うと、顔を見合わせて私を見た。
「其方は我らの契約者、寿命はエルフも人も遙かに超えている、まぁ大けがをすれば死ぬ恐れはあるが、我らの結界がついてるから大丈夫だろう」
「うわお」
予想外に寿命が延びていたらしい。
「と言うか紅がの契約がちょっと特殊なのよね」
「黙っていろ!」
「?」
特殊?
特殊って、何があるんだろう……
ちらりと紅き王を見れば、ジト目でにらみ返された。
うん、聞かないことにしよう!
私はそう決めて、眠りについた。
そして朝目を覚まして、シャワーを浴びて顔と全身を洗い、体を拭いて下着と服を身につける。
「おはようございますー……」
「ああ、お早う」
「お早う、カズエちゃん」
「早速ですが朝食と行きますか」
「それもそうだけど、カズエちゃん、忘れてない?」
「え?」
「店員さんにも聞いたけど、今日で二ヶ月たったわよ?」
「あー……」
となるとベルドの街に戻らなければいけない。
「ガズエ゛ざん゛、帰っちゃうんですか⁈」
トライさんが泣きそうになる。
「今日は一応居ますから、明日帰ります」
「ぐずん、わがりまじた……」
そんなにレストランが美味しい……いや、美味しいな。
「では、今日はレストランで三食食べて、持ち帰りをたくさんします!」
「はは……」
アイテムボックス持ちはこう言う時便利なんだろうなぁと、我ながら思った。
「そう言えば紅き王がいませんが……」
「何か、ドラゴンの姿を見かけたと」
「うへぁ」
また、トンデモないことになりそう。
そう思って見せで食事を取り、外に出ると人だかりができていた。
紅き王がいる。
「紅き王」
「む、カズエか、漸く来たか」
「何を取ったんです?」
黒いドラゴンが居た。
「シャドウドラゴンだ、肉が美味いぞ」
「でも、解体はここではできませんよ」
「そうだな、ビルドの街のギルドマスターに頼まねばな」
私はなんとかアイテムボックスにレッドドラゴンをしまう。
「明日この街を立ちましょう」
「そうか、分かった、では戻るぞ」
紅き王は私の背中を押しながら街の中に入って行った。
その日は夜遅くまでレストランは繁盛していた。
次の日──
「では、お世話になりました」
「うう、レストランまた、楽しみにしてますね」
「はい」
トライさんや、他の方々が総出で見送ってくれた。
「ではー!」
紅き王の背中に乗り、私は飛び立つ。
あっという間にビルドの街に到着した。
「ギルドマスターさん」
「おう! カズエ! どうしたんじゃ?」
「シャドウドラゴンの解体を依頼したくて……」
「おう、マジのようじゃな……そうじゃな、神王様たちがおるからな……」
ギルドマスターのゴンドラさんは納得した。
「肉を寄越せ、他は好きに扱え」
「そんなこと言ってもドラゴン素材は高価すぎて全部買ったら破産してしまいますわい」
「む、分かった」
「じゃあ、私レストラン開かせて貰いますね」
「おう! そういえば、ギルドの連絡で聞いたんだが持ち帰りができるようになったとか……本当かの?」
「はい、十種類までなら持ち帰り──」
「今すぐ開いてくれ! 解体後に酒をゆっくり飲みたいんじゃ!」
「わ、分かりました」
私は空き地に向かい、声を上げる。
「旅するレストラン!」
レストランが姿を現す。
「開店お願いしますー……」
「「「「「はい、オーナー」」」」
見せが開店する。
看板に光がともる。
よくよく見れば文字が書かれている、それは「旅するレストラン」だった。
「ほー……」
どたどたとゴンドラさんがやって来て、早速持ち帰りのお酒とおつまみを注文して出て行った。
店は相変わらず繁盛。
私は疲れたので、居住スペースで休ませて貰うことにした。
幸い居住スペースは私と神王達以外は入ってこれないので、ゆっくりできた。
夕方、目を覚ますと、腹を空かせた神王様達が。
「神王様達、ごめんなさい!」
「いいのよ、しかし舌が肥えてしまったわねぇ。紅が特別な契約をしなかったら私達、ちょっと困ったことになってたかも」
「ひゃい?」
「気にするな、いいから飯だ」
「は、はい!」
慌ててVIP室へと移動する。
「オーナー、こちらメニューです」
「有り難うございます」
「いえ、お決まりになりましたらお呼びください」
「はい」
神王様達がメニューとにらめっこしている。
決まったと言うので、店員を呼び、注文をする。
私はオムライスとデザートにプリン。
すぐに皆の料理と共にオムライスが運ばれてきた。
「むぐむぐ……今日も美味しい」
「そうだな」
「今日は暇つぶしに依頼を受けてみない」
「暇つぶしにですか……」
さすが神王様、考えが私とは違う。
「シャドウドラゴンの解体は夕方までかかるらしい」
「そうなんですか」
「ああ、言ってたぞ、酒持ち運びながら」
「Oh……」
ゴンドラさん、もうちょっと威厳を……
そう思いながらオムライスを食べ終えた私はプリンを頬張った、優しい甘さが口に広がった。
ブラッドオークが集落を作っていると聞いた私達は、その場所に向かいました。
「カズエは緑と白、任せるぞ」
「はい」
「ええ」
そう言って他の神王様が飛び出す。
炎だったり、水だったり、石だったり、闇だったりそう言った物が直撃し、あっけなくブラッドオーク達は倒れていく。
「さぁ、ブラッドオークの死体を持って行きましょう?」
「肉が美味いからな」
そう言って死体をアイテムボックスに詰め込んでいる間に、紅き王と黄さんはブラッドオークの集落を破壊していた。
「では、戻るか」
「はい」
そう言って紅き王の背中に乗って戻る。
「で、ブラッドオークを狩って来たのか?」
「神王様達が、ですが」
「肉を寄越せ」
「分かってます、神王様。ただまた片付けが終わってないんですよ」
「片付け?」
「シャドウドラゴンで買う素材をギルドマスターがどれも良い値段で売れるからと悩んでいるんです」
「はぁ」
「なら、遠慮せず入るか」
紅き王は解体室に入った。
「ギルドマスター解体は終わったか!」
「おお、紅き王。勿論ですじゃ、それと漸く買い取るモノも決まりました」
そう言って牙や肝臓の一部、血液の一部などを買い取っていった。
「しめて白金貨40枚に金貨102枚ですじゃ」
うわーお、前回より多くなってる。
「シャドウドラゴンはレアですからな」
あ、そうなんだ。
「ゴンドラさん、購入したお酒は……」
「いや、いざ飲もうと思ったらお前さん達が居なくなった後のことを考えると飲めんかった、だからこれから店に飲みに行く」
「は、はぁ……」
「カズエ、持ち帰りの種類が二十種類に増えてるぞ」
「マジですか」
「マジだ」
自分では分からない事を教えてくれる神王様が、紅き王の存在が有り難かった。
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