ダンジョンの真実とお持ち帰り




「あれ、ギルドマスターさん今回は来ないな?」

 誰もギルドマスターを呼びに行ってないようではないし、居ないのは不思議だった。

「大方レストランで食事をしてるのでは?」

「あ」


 レストランに行くと食事に夢中になってるギルドマスターのトライさんの姿が。


「お、おお! 再度踏破なされたのですね、お話を聞きますので少々お待ちを」


 そう言って料理を大急ぎでかきこんでいく。


「むぐ……ごくん! ではギルドへ参りましょうか!」

「はぁ……」

 なんだか私は気が抜けた。


「なるほど、もしかしたら攻略する度に最終階層が変化し、難易度が上がっているのかもしれません」

「まぁ、一理ある」

「ではギルドにそのように張り紙をつけておきます」

 そう言ってトライさんが居なくなると、白さんが黒さんに話しかけた。


「黒、ここのダンジョン貴方が作ったのでしょう? どういう仕組みなの?」

「先ほどのは少し正解からずれてるな、攻略される度にランダムに最終階層の様相が変化するのが正しい。後100年に一度様相が変化する要素もある」

「難易度が上がるんじゃなくて、ランダム、ですか」

「ああ」

「……それギルドマスターさんに言った方が」

「言うと色々面倒くさい」

 うへぇあ。

 まぁ、面倒くさいの分からないでもないけど、ないけど‼

「……おい、カズエ」

「はい何でしょう紅き王」

「お前のステータス欄に、『持ち帰り可能』が追加されてるぞ」

「ふへ⁈」

 それを聞いた私は急いで、レストランへ向かった。


「あのー紅き王がステータス見て、『持ち帰り』ができるようになったと聞いたのですが」

 と、小声で店員さんに聞く。

「はい、その通りです。料理を持ち帰って外で食べる事ができます」

「……うーん、でも、私にメリットあるかな?」

「スキルを出せない状況下で食事をとれるようになるのは良いだろう? 例えば他国へ言った時などな」

「あー確かに」

「え⁈ カズエさん、別の国に行く予定でも⁈」

「ありません、ありません、この国で十分です」

「はー……ですよね」

「……寧ろアイテムボックスを持っている人とか、この街に滞在中、住んでいる人が家とかで食事するのに使うとか?」

「お前は他人が使うことのほうが優先だな」

「いやその……」

「まぁ、いい」

 紅き王はそっぽを向いた。

「のう、巫女さん」

「はい?」

 ドワーフのおじさんが声をかけて来た。

「今、持ち帰りが可能とか聞こえたんじゃが……」

「えーっと……」

「私がご説明いたします」

 店員さんが間にはいってくれた。

「一回につき品物10品までお持ち買えることができます。飲食物なら全て」

「つまり、酒、も持ち帰れると?」

「はい」

「こうしちゃおれん! 仲間に言わんと!」

 どたどたとおじいさんは走って行った。

 それから『持ち帰り』について聞く人がたくさん出た。

 アイテムボックス持ちの人は、旅する日数分のスープとサンドイッチ、サラダ等を頼んでいた。

 一回につき10品という限られた品数の中でどうやっていくのに四苦八苦していた。


「とりあえず、上の階で泊まりましょう」

「そうだな」

「そうしましょう」


 私と神王様達はプライベードゾーン……基住居スペースでゆっくりと休むことにした。

 疲れ切った私はぐっすり眠ることができた。


 翌朝起きて、シャワーを浴び、髪や顔、体を洗い、歯を磨いて着替えてから神王様達と会う。


「お早うございます」

「うむ、ではさっそく食事に行くぞ」

「はい!」

 紅き王が言うので私は早速レストランの部分に向かう。

 VIP席に座り、注文をする。

 ちょっと疲れていたのでお粥とゼリーを頼んだ。


「美味しい……」

 お粥のほっとする味にほっこりする。

「あら、このスライムみたいなのは何かしら?」

 緑さんが尋ねます。

「あ、ゼリーっていうんです。デザートの一種です」

「何味?」

「イチゴ味ですね」

「私似もイチゴ味のゼリーを頂戴」

「畏まりました」

 店員さんはすぐ持ってきました。

「あら、ぷるぷるして堅さもあって美味しいわ」

「お気に召したようで……」

「凍らせたらどうなる」

「そうね、聞いてみましょう。カズエ」

「ひゃい」

 私は言われるままに店員さんを呼び、凍ったゼリーを持ってきて貰った。

「あら、こっちの方が私は好みだわ美味しい!」

「……このプリン、ゼリーと似てるが卵と牛乳を使ってるのか?」

「あ、プリンは美味しいですよ」

「そうか、注文しよう」

 緑さんはプリンを頼み、クリームとカラメルとサクランボがのっかったプリンを出される。

「これ、さくらんぼね、うん、美味しい……さて」

 緑さんは匙をプリンに入れる、そして口にする。

「うーん、濃厚だわ……美味しい」

「な、何よりです」

「ねぇ、カズエちゃん、そんなにおびえなくても大丈夫よ、貴方は私達の契約者、なんだから」

「は、はぁ……」

「神王全員が勢揃いしてるんだ、おびえない方が無理というものだろう」

「まぁ、それもそうよね」

「はは……」

 とんでもない方々と契約しているのだと言われ、その上全員の巫女扱い。

 怖い。


「さて、ではここのギルドの依頼でものんびりこなしてベルドの街に戻る準備をするか」

「そうね、それはいいかも」

「ではギルドマスターのところに行きましょう」


 食事を終えた私は、引きずられるようにギルドに向かった。


「ギルドマスターさんは?」

「いますよ、お待ちください」


 ギルドマスター室に案内されると──


「うう、この温かいスープとサンドイッチが美味しい……帰って欲しくないです……」


 私のレストランの持ち帰りを早速利用して食事を取っていた。


「ああ! カズエさん‼ どのような要件でしょうか」

「いえ、その、しばらく滞在したいという旨をお伝えに」

「本当ですか‼」


 がしっと手を掴まれる。


「カズエさんのスキルのれすとらんというモノは素晴らしいです、本当に!」

「は、はぁ……」


「要件は終わったな、では戻るぞ」

「は、はいー……」

 少し不機嫌な紅き王に言われて私は引きずられながら戻って行く。


「んー中毒性とかあるのかな」

 あまりにも人が来るものだから中毒性があるような気がしてレストランに戻りこっそりと聞いてみる。

「ありません」

 即答された。

「じゃあ、みんなが来るのは……」

「純粋に味、が良いからでしょう」

「な、なるほど……」

 安心したけど、大丈夫か不安になった。


 私が居なくなった時、どうなるんだろう。


 それが不安だった。






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