第1話 兆候~動き出した非日常…ひょっとして?
「───俺らってさぁ~……」
ん~…?
「名字が渡辺じゃん?」
うん、そうだけど?
「………出席番号ってさ──」
あー、その話……?
もう何回目よ~……しょうがないよ。
……それ多分、日本全国どこ行っても共通だよ?
「………『を』から始まる名字とか無いのかな」
無い無い!
……アフリカとか行ったら、『ん』から始まる名字なら、あるかも知んないけどさ
「アフリカは、アフリカで……向こうの順番ルールがあんだろうなぁ。『ん』から始まっても、最後とは限らないよなぁ……」
……大体、これ日本語だし。五十音がそもそも無いよアフリカは
「それもそうか……お前頭いいな」
……頭は、おんなじくらいだと思うんだけどなぁ、発想的に
ぷっ……
同時に吹き出す
「「あははははっ」」
───そう言って笑いあった、あたしと彼。
でもさ、
「何がだ?」
『か』じゃん、名前の頭が
「───あ~、そうか」
あたし『ゆ』だよ?
なんで名前まで、後ろの方付けるかなぁ
あたしより後ろの子なんて、見たこと無いよ……
────この地方は、渡辺姓が比較的多い。だが、どういうわけかうちの高校には渡辺姓は数えるほどしかいなかった。
うちのクラスじゃ、あたしと
……きっと、私はいつも一番うしろ。
でも────いいんだ。
私の前には、いつも
そのことが、ホントは……ず~っと、嬉しかったんだよ。
───────────────
………まさかな。
………もしかして。
お隣さん同士の二人は、つい先程、
宅配便で送られてきた箱を受け取り、
戻ったばかりのそれぞれの自室にて、
極度の疑心暗鬼に襲われていた。
とある休日、共に一日遅れで届いた通販のダンボールを開けてみたところ
ちょっと、おかしなことがあったのだ。
一日遅れ、それは別に不思議ではない。
これまでも、度々あったことである。
しかし、
注文したはずの物と中身が違う。
これは、今まで無かったことだ。
そして、その中身の違いというのが、
なんというか……
本当に、微妙に違うのだ。
例えて云うなら、親にゲームソフトを買ってきてと頼んだ時に、微妙に違うものを間違えて買ってきたときのような、そんな微妙さ。
興味の無いものを選ぶ時の、ちょっとした雑さ、無知さ、違和感。
それを感じさせるような間違いだった。
念のため、自分の注文履歴を確認してみたがやはり、手元にある物とは商品名がほんのちょっとだけ違うのだ。
もちろん、単なる間違い。その可能性は残っている。現に、配送業者の誤配送があったばかりだ。
そして今度は、通販業者の手配ミスということも、十分考えられる。
注文した物とは、微妙に違ってはいるがほぼ同じものだから……あり得るのかもしれない。楽観主義に依るなら、そう思いたくもなる。
しかしながら……。
誤配と違って商品の間違いというのは、これまで一度もなかったことだ。
そう考えると、やはり疑いたくもなる。
「「もしかして……」」
───また通販か、何頼んだんだ?
あの、質問
あの、赤くなった顔───
去り際まで、こちらを伺う視線の意味、
昨日、必死で考えた偽装工作
そして、お互いに、一日遅れて届いた荷物
───これって、昨日の自分の荷物にも同じことが起こってたんじゃないの……?
「……まさか」
「………ひょっとして」
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