第20話 贈愛~情けは人の為ならず
家の前で柚と別れて、俺は自宅に飛び込む。
どうやら、母親はまだ帰ってきてはいないようだ。
そのまま二階の自室に駆け上がると、俺は早速スマホで通販サイトを開く。
そしていつものように、たんたんたんっ、とタップして検索する
ぱんつ 女性 セクシー
……っと
画面には、前回よりも格段に過激な女性用ぱんつの数々がずらりと並んでいく。
相変わらず、凄まじいまでの商品数だ。女性用ぱんつというのは、斯くも種類が多いものかと改めて驚く。
だがその種類の多さは、今の俺にとっては可能性にもなり得るのだ。
さて──
ここでのチョイスは、とても重要だ。
今回の作戦では、なるべく柚の羞恥心を煽るようなエロいデザインのぱんつを選ぶ必要がある。そして、初見で一気に柚の感性に切り込まなければならない。躊躇や疑心が生まれるようじゃだめだ。
最初の選択で勝負が決まるといっていいだろう。
あまりに攻めすぎたデザインだと、羞恥ではなく嫌悪感を感じて使わずに捨てられてしまう可能性が高い。しかし日和って普通に過ぎるぱんつを選んでしまっては効果が無いだろう。
「ありがとー、ちょうど切らしてたから助かるわー」
で終わってしまっては意味がないのだ。
……実用的にはそれでいいかもしれないが────。
適度に恥ずかしがりながらも、興味に負けて思わず穿いてしまうような、そんなぱんつを選ぶ必要があるのだ。これは……かなりのセンスを要する作業だろう。
最終的には、オープンクロッチのような専用品に行き着くのだろうけど、柚にはまだまだ早いだろう。そう言う意味では、無難に前回のTバックの色違いという選択肢もありうるが……
翻ってみると、前回のチョイスは随分アダルティなデザインのものだった。
普段はピンクとか空色とかの縞ぱんばかりなのに……。
普段の柚は、どちらかというと子供っぽいデザインばかり愛用している感じだが、その反動でああいう大人びたものが欲しくなったのかな?
うーむ、しかし……
系統的にはもっと明るくて若々しい大人の女性の雰囲気に寄せてもいいような気がする。前回のあのぱんつは確かに大人びてはいるけど、どちらかというと会社の女上司とか……それこそ人妻とか、ちょっと想定年齢層が上の感じを受けるんだよなぁ。20代後半から30代前半? みたいな……。
もっとこう、入社したての新人OLみたいな爽やかな雰囲気のほうが、柚には合ってるような気がする……。
うん、このコンセプトで選んでみようか。
色は淡くて明るい系統、黄色、ピンク、空色、薄紫……あ、淡いグリーンもいいな。
色について、ちょんちょんと検索条件を追加していく。
で、サイズは……LLだったっけか。普段はLだとも言ってたな。
まぁ、用途があれだから、ゆったりめの方がいいのかな。
……でもなぁ、少しだけきゅっと食い込む感じのほうが、感じが出るんじゃないのかな。ここはひとつ、Lも選択肢に入れておくか……。
あとは、形状だな。
エロい感じといえば、Tバックでいいんだろうけど……。
なんとなく、リアルな……化粧を覚えたての新入社員のような。等身大の柚に少しだけ上乗せした大人感を演出したほうが、より感情が籠もっていくんじゃないのかな、こういうのって。
……実際、俺が人妻物ばかり選んでいたのは、そういう意味合いもあったのだ。
クラスメイトくらいの年齢よりも、少し年上の感じがひどく琴線に触れるというか、つられて自分も大人になったような疑似体験が味わえるというか……。
うん。初手でもあるし、今回は現実味のある志向で行ってみよう。エロスに攻め込むのは、もう少し慣らしてからでも遅くないだろう。
俺は、「ちょっとだけ大人びた柚」を想像し、それに似合うぱんつを絞り込まれた選択肢の中から探し出していく────。
……前回は、完全に同じものを選ぶ必要があったために、価格など気にする余裕が無かった事を思い出す。
改めてこうしてみると、ぱんつの値段ってピンからキリまであるんだなぁ。
結構、お安いものもあるな。一枚500円位からあるのか……。
俺は、先日までに柚から買ってもらったオ◯ホの合計金額を、ざっと頭の中で算出していく。
「これなら……7~8枚は、買えるな」
柚に奢ってもらった額を限度額として、設定しておくことにする。
気を使わせることが目的ではないから、高いものにするつもりは無いし、もちろん一度に大量に買うつもりも無い。
最悪の場合、俺の策略が全く不発で終わることだってあり得るのだ。
まずは2枚程買ってみて、柚の反応を伺うことにしよう。
……画面に映る商品の中で、可愛らしくそれでいて少し大人っぽいレースと刺繍をふんだんにあしらった、黄色のぱんつが目に入った。
「あ、これいいな」
女のぱんつの知識など全く無い俺だが、それは見ただけで綺麗で可愛いと思わせるバランスの取れたデザインだった。決して過激ではないが、野暮ったさは皆無。あしらわれた刺繍は、大人っぽさと上品さを兼ね備えているように感じられる。
形状は……ハイキニ?
俺は、説明文を読み込む。
「ハイレグビキニ……っていうのか、なるほどな」
太ももの付け根、足ぐりの部分のカットの角度を少し深めにした、足さばきが良い上に安心感のある布面積で人気の形状らしい。うん、これなら柚も満足だろう。一枚目はこれでいいだろう。
さて、
「もう一枚は、っと……」
つらつらと画面をスクロールさせていく。すると、
「お? ブラジリアン・ショーツ……?」
目についたそれは、男のブーメランパンツを連想させる形状に似ており、前後の身頃がTバックほどではないが切れ込んだ形状をしていて、腰の部分の上下幅は紐状に細くシャープなシルエットだった。布の質感がつやつやしていて本当に水着のようでもある。色は空色だ。
正直、柚にあまり似合うとは思えなかったが、逆にこういう意外性のあるものが思わぬ興味を引いたりするのかもしれない。柚が俺に買い与えた17歳シリーズのように……。
「ふむ。ちょっと冒険して、もう一枚はこれにしてみようかな」
俺はその、候補にも上げていなかったちょっと変わったぱんつを選択して、カートに入れた。
さて、ぱんつ選定の儀はこれにて終了、であるが……。
ここで一つ思案する。
選んでいる最中に、他の購入者のレビューなども読んでいたのだが、レースや刺繍の綺麗なぱんつは、洗濯で痛むことがあるらしい。そこで俺は、洗濯ネットも二つほど選んでカートに追加した。作戦がうまく行ったら、今後もぱんつは増えることになるからな。
柚も、俺のオ◯ホの手入れにまで気を使っていたくらいだ。
ここでの気遣いで遅れを取るわけにはいかない。
ついでに、アロマの香りが楽しめる洗濯芳香剤も追加しておこう。部屋干し用の洗濯物ハンガーなんかもあるといいかもしれない。
あ、そうそう! 忘れずに、潤滑ゼリーも付けておこう。
柚の買ってくれたアイテムにはローションは含まれていなかったので、後で自分で買い足したのだが……俺はその辺も手抜かりはしないぞ、ふふふ。
いろいろ調べている最中に仕入れた知識だったが……。
女性の場合、男と違って内側の粘膜に触れる行為でもあり充分な潤いが得られないと、秘部を傷つけてしまう恐れがあるという。もちろんそれ自体は知っていたが、俺が使っているようなローションを女性が使うと、細菌症などの思わぬ症状が出ることがあるらしい。
あれはあくまで、男が表面に使うものであって、女性の場合は性交時に使うようなちゃんとした潤滑ゼリーを使用することが推奨されているらしいのだ。
くれぐれも、男性用ローションなどを代用してはいけない。
よし、これでそろったな……? 金額も想定内。
送り先を、柚の名前と住所にして……と。
いざ、発注───!
俺は、願いを込めて画面をタップした。
Dear my Good Neighbor~親愛なるお隣さんへ 天川 @amakawa808
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