第18話 異世界王女観光記①

「皆さまに意見を聞いたところ、一般的な生活を見てみたいとの事でした」

「いや、それはまだ理解できるけど。何で俺の家の近所なのさ」

「聖さまにも土地勘がある場所がいいかと思いまして」


 観光と言われて連れてこられた場所は、元々俺が住んでいた場所の近くだった。

 忍野さんを先頭に歩きながら質問をぶつけている俺に対して、姫様たちは興味深そうに住宅街を見回している。


「これが一般的な住宅……想像よりも立派ですのね」

「あんまり木とか使っている感じじゃないよね。どんな素材使ってるのかな」

「丈夫な資材なのは間違いないかと。安価な物であれば国にも導入できるかも知れませんね」

「それはいいかも知れんな。少なくともただの木よりはモンスターの襲撃に強いかも知れん」

「会話が次元が違い過ぎてついていけない」


 やっぱりと言うべきか、出てくる感想が上に立つ者目線。

 その後も四人で盛り上がっているので、再び忍野さんに気になっていた事を質問してみる。


「忍野さん。この服装って周りに溶け込むために着ているだよね?」

「その通りですが……何か?」

「こんな住宅街にバスガイド連れた学生が集団でいたら逆に目立たない?」


 現に明らかに不審者を見るで周りのおばちゃん達がヒソヒソと話し合っている。

 幸いにして騒ぎにはなっていないが、目立っている事は確かだろう。


「……」

「もしかして、考えてなかった?」


 黙り込む忍野さんに、思い切って聞いてみるが返事は無かった。

 まあ別にイジメたい訳ではないので、この話はここで打ち切ることにする。


「で、実際大丈夫なの? 最悪警察とか呼ばれるんじゃ」

「そこは抜かりありません。すでに各関係機関には事前に手を回しています」

「おお~」


 できればその気配りを服装にも回して欲しかったが、今更しょうがない。

 そう思いながら久しぶりとなる街並みを見渡す。

 屋敷に移ってからそこまで日数は経っていないハズだけど、密度の高い日々だったからかとても懐かしく感じる。


「やっぱりそこまで変わらないな」

「やはり今でも屋敷よりもこちらが良かったと思われますか?」

「う~ん、どうだろう。住めば都じゃないけれど、今はそんなに違和感はないかな。異性ばかりってのはまだ慣れないけどさ」


 正直なところ、今後屋敷に人が増えるなら綺麗どころよりも気の合う男子がいい。

 希望が通るかどうかは別にして、心底そう思う。


「……そうですか。こちらとしても連れ出した責任がありますので、気になっていました」

「別に忍野さんが悪い訳じゃ……いきなり薬飲まされたのはビックリしたけど」

「事情を説明する暇が無かったもので。初めてを奪ってしまい、申し訳ありませんでした」

「い、いや。別に初めてじゃないし」

「見栄を張らずとも結構です。政府は聖さまが幼少の頃より身辺を調査しており、女性関係が一切ないのは確認済みです」

「何してくれてんだよ政府!」


 衝撃の事実に思わず叫んでしまう。

 ていうかそんな事に税金を使うなよ!


「何々? 聖くんどうしたの?」

「な、何でもない! 本当に何でもないから!」


 エリがこっちに興味をもったのか質問してくるが、ここは断固拒否。

 いくら何でも人権というものが俺にもある。


「そ、それよりも! 折角ここに来たなら、少し先に見てもらいたい場所があるんだけど!」

「話を逸らしましたね」


 マナが何か言っているが、ここはスルーして話を進める。


「忍野さん、いいかな?」

「ここから行くとなると……あそこですか。予定の範囲内です」

「それで? どこにエスコートしてくださるの?」


 マリアの質問に対して、俺は笑みを浮かべながら返答するのだった。


「商店街って言う場所だよ」



 あとがき

 皆さんこんにちは、蒼色ノ狐です。

 インフルなどが流行っていますが、皆さんはお元気でしょうか?

 個人的には中々気力が出ずに思うように書けないのが現在の悩みです。

 さて、住宅街を観光していた一同は商店街へ。

 果たしてどのような一日になるのか?

 次回をお楽しみに!

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