幕間 とある高校生

「平和だな~」


 ある休日の昼、ネットを見ながら思わず独り言を呟く。

 傍から見れば怪しいかも知れないが、癖だから仕方がない。

 この春に高校に入ったばかりの俺は部活にも入っていない上に、言ってはなんだが友人も少ない。

 ……少し前に音信不通となった数少ない友人の安否は気になるが、限りなく普通な生活を送る俺にはどうしようもない。


「何だかんだで元気でやってると良いけどな、聖の奴」


 そんな事を言いながら、指はキーボードをビシバシと打ちまくる。

 いま見ているのは最近話題の異世界に関する記事だ。

 存在を公表されたあの日から、ネット上ではリアル異世界に毎日がお祭り騒ぎだった。

 魔法が存在する世界に対して、世界は大体二つに割れた。

 ずばり容認派と否定派だ。

 ネットの世界の住人は容認派が多くて、自分も行ってみたいという声が多かった。

 けれどそれを面白く思わない人間もいて、過激になると戦争を促すようなコメントを残す奴もいた。


「最近になってネットも結構落ち着いてきたけどな」


 噂では異世界技術でドンドンと暮らしが楽になっていくらしいし、俺としては面白い方がいいけど。

 まあそれはともかくとして、まだまだネットを賑わしている異世界の話題と言えば四人のお姫様だ。


「四人とも美少女ぞろいだったしな、そりゃ話題になるわな」


 一部の勇士によるコラ画像も出回ったり、未だに誰が一番好みかというのはこの話題をする時の鉄板ネタだ。

 ちなみに俺はエイリー王女派だ。

 けど時々テレビでやっている式典とかでは見るけれど、このネット社会をもってしても彼女たちがどこに住んでいるかとかは知られていない。

 これも噂だが、どこかに専用のお屋敷を構えて居るらしいがな。


「一度でいいから会ってみたいもんだな」


 そう思いながら、俺は彼女たちのプロフィール(ちなみに国が出している公式な物)を見る。

 まずはマリアンヌ王女。

 ネット上で一番人気のグラマラスなお姫様。

 まさに男の妄想が具現したような彼女に、ネットの住民はメロメロ。

 何でも趣味はティータイムらしいが、剣も得意らしい。

 式典の際中に乱入した不審者を、SPよりも速く制圧したのはあまりにも有名だ。


「彼氏になる奴は大変だろうな」


 次はマナナン王女。

 エルフみたいな尖った耳をしている小柄な王女様は、当然の如くその手の人間にはたまらないらしい。

 立ち振る舞いからしてクールで、被虐趣味な奴にも人気があったりする。

 魔法の扱いが凄いらしけど、多分それを見る事は無いと思う。

 趣味は読書らしいくて、一部では彼女が読んでそうな本を言い合っている。


「実際には分からないから不毛だと思うんだけど」


 三番目は俺の推しでもあるエイリー王女。

 健康的な色気とでも言うべきか、明るく元気な彼女は付き合ったらずっと楽しそうだ。

 出身は海に囲まれているらしくて、好きな事は船旅と泳ぐ事らしい。

 あまり王女らしくは無いけど、逆にそこが人気に繋がってたりもする。


「こんな彼女がいたらな~」


 最後はフェル……何とか王女。

 悪いとは思うけど、すげー言いずらい名前な方だ。

 名前の認知度はともかく、長身でドラゴンの特徴を持つ彼女にも熱狂的なファンがいる。

 武術一筋と書いてあって、これまた一部では戦って勝てれば付き合えるのではという話に花が咲いている。

 一通り見終えて、俺はプロフィールのページを閉じる。

 暇だし昼寝でもしようかと考えていたが、何気なく掲示板の方を覗いてみると何やら騒がしい。

 何か燃料でも投下されたかと思って遡ってみると。


「今度の週末に姫様が○○市に出没の可能性大?」


 また根も葉もない噂だと思ったが、見てみるとかなり信ぴょう性が高そうだ。

 既に掲示板では○○市に行く予定を立てた奴もいるらしく、お祭り状態になっている。

 俺も行きたいが、小遣いが少ない高校生には少し遠い。

 次のチャンスがあると思って諦める事にして、PCを閉じる。

 ベットに寝転びながら、特に揉め事も起こっていない世界を思って一言だけ呟く。


「平和だな~」

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