第29話 襲撃
1週間経った。
アリス達が見つけた新たな街はローテ街と呼ばれており、隣接には海がある。道には露店が沢山出ていて賑わいを見せていた。
他国から来る人もいる程に沢山の人が集まっていた。お祭りの日ではないが、海と隣接しているローテ街は現地でしか取れない物も沢山あるので、それが人を集める要素になっていた。
住民、商人、騎士などの様々な人が誰でも笑顔を浮かべ、平和な街で人生を謳歌していた所にーーーー
魔物の軍隊が現れた。
一先に気付いたのは、門を守っていた警備員だった。魔物は山の麓(ふもと)から大量に湧き出して、更に山の一部が崩れたかと思えば、10メートルを超えるゴーレムが現れるのを見たのだ。
「魔物の軍隊だぁぁぁぁぁーー!!」
「数が多い! 門を閉めて、足止めしている内に戦える者を集めるぞ!! 急げ!!」
門にいる警備員だけでは勝てないと判断し、警鐘を鳴らしながら門を閉めた。見た所、魔物は全てが歩(ほ)で空を飛んでいる者はいなかった。ゴーレムに何回か殴られたら門は破れてしまうだろうが、そのゴーレムは脚が遅くて一番後ろにいた。
そのゴーレムは人型ではなく、下半身はスライムみたいな形だったが、少しずつ手を使って進んでいた。
「人形みたいな魔物は門を破るには時間がかかるし、ゴーレムも脚が遅い。集まるまでは充分に時間を稼げる筈ーーーー」
人形は見た所、200~300はいると判断したが人形の魔物は元から力が弱いのを警備隊の隊長は知っていた。慌てずに騎士や冒険者を集めろと指示を出していたが…………
ドバァァァァッドッカァァーーーー
門の付近で幾つかの爆発が起きた。
門の内側で警鐘を鳴らすために矢倉に登っていた者が、揺らされて落ちていく。
「な、なっ……」
「門が破られました!!」
破られた門から人形の魔物が現れ、近くにいた住民が叫びながら逃げ出していく。警備員は街を守ろうと、立ち向かうがーーーー
「貴様ら! 俺達が相手だっ!」
「キキキッ」
人形はリーダーの警備員が叫ぶのと同時に飛び掛っていた。それを迎撃しようと、剣を抜いて突き刺そうとする。人形はあっさりと突きを喰らい、リーダーの警備員が呆気に取られるのだった。
「えっ?」
「キキキッ!」
突然に、人形が発光して爆発が起きた。近くにいたリーダーの警備員はもちろん、爆発に巻き込まれて死んだ。それを見た警備員達は理解した。
門を爆発で壊したのは、その人形達だと。
「うわぁぁぁっ!!」
誰が上げたのかわからないぐらいに、この場所から逃げようとする人は多かった。警備員達も剣や槍で戦おうとすれば、爆発に巻き込まれるので魔法で応戦するしかなかった。
まだ戦意が残っていた警備員もアレが門に到着した時点で戦意が消し飛ばされてしまう。
「ゴォォォォォッ!!」
「うわぁぁぁーーーー!!」
後から現れたゴーレムは一撃で開きかけだった門を殴って、人形ごと吹き飛ばしていた。吹き飛ばされた人形もただ巻き込まれるだけで終わらず、落ちた場所で爆発が起きた。
たった一発だけなのに、その被害は甚大であった。
そして、ようやく冒険者や騎士が突然に現れた魔物の対応しに来た。
「『火炎球(ファイアボール)』! 人形は爆発をするから、魔法で対応しろ!」
「あのゴーレムは大きすぎるから、少しずつ削っていけ!!」
現れた冒険者や騎士によって、人形は100近くまで減っていった。そこからだった。
全ての人形は白くて全く同じ姿をしていたが、ゴーレムの上から現れた人形は、個性があった。
服はボロボロで右眼が欠けており、マネキンみたいな姿をしていた。
そのマネキンみたいな人形が指を動かすと、好き放題に動いていた人形が動きを止めて、陣形を組み連携をし始めた。
「なっ、さっきのと違っーーがあっ!?」
「キキキッ」
人形はなんと、拾った武器を使い始めたのだ。さっきまでは自爆するだけの脳しかなかったのに、マネキンみたいな魔物が現れてから武器を使うようになった。
「くっ! アレは此奴らの上位か!?」
「アレを先にやるんだ!!」
数人の冒険者は先にマネキンの魔物をやろうと動き出すが、ゴーレムがマネキンの魔物を守っていて近付けないでいた。
「なんで、協力しているんだよ!? 違う魔物が協力する知能を持っているはずがーーーー」
グシャッ!
叫んでいた冒険者はゴーレムによって潰されていた。ゴーレムは完全に守りへ入っており、なかなかダメージを与えられないでいた。
所々に爆発が起きて、街に被害が出て人間側が劣勢になっている時にーーーー
街から3キロ程離れた場所にて、3体の魔物がそれぞれの体勢でこれからのことを見守っていた。
「アリス様は大丈夫なの……?」
「大丈夫と何回もいっているだろ。アリスは意識を向こうに移しているから、動けないだけだ」
アリスはバトラの膝を借りて意識を失っていた。アリスの意識は、戦闘になっている場所にある。
新しく生まれた能力で、依代となっているマネキンの人形を自ら操っているのだ。あのマネキンの人形は、白い人形を支配するために生まれた制御用の人形だ。人形に意識を移して、自らが別の身体を操れる能力、『依代支配』で街へ攻め込んでいたのだ。もし、依代がやられても本体には異常を与えることはない。
「ゴーレムは結構出来ているみたいだな」
「維持は大変だけど、練習した甲斐があったよ。今度はもっと上手く出来ればいいんだけど…」
「大丈夫じゃない? 魔力の操作も上手くなっているし」
「う、うん!」
マキナは『巨兵創造(ゴーレムクリエイト)』の使い方に慣れてきて、今は街に攻めているゴーレムを作れるようになっていた。今は維持に力を込めていて大変だが、いつかはもっと良いゴーレムを作り出せるだろう。
戦局はこっちが有利だが、後から2人の人間が現れた時点で戦局が変わっていった。
そう、勇者が現れたのだ…………
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