第71話 神
邪神アバターの中から現れたのは、神に生まれ変わったアリス。魔王と人間達がいるの見えるが、先に邪神アバターを標的にする。
「お前を先に消してやるよ」
「何故、生きている!?」
邪神アバターはすぐ誰なのかわかった。しかし、闇の残滓を奪いつかれて、死んだはずなのに――――。
アリスの気配から自分と同じ気配を感じ取っており、すぐ排除をしなければならないと動き始めた。
「『暗黒剣(ディザスター)』!!」
四本の『暗黒剣(ディザスター)』が現れ、それを全てアリスへ斬り付けていた。ただ斬っただけで、その衝撃は塔をも揺らす程で周りにいたリント達や魔王達も吹き飛ばされそうになっていた。
これで、アリスは致命傷を負って倒れているだろうと邪神アバターはそう思っていた。
しかし、煙が晴れるとアリスは立っていた。それだけでも驚愕していたが、更に『暗黒剣(ディザスター)』の剣先が消滅していたことに眉を潜めてしまう。神之能力で作られた剣が欠けていることから、目の前にいる存在は自分と同じ神之能力を持っているとしか考えられない。
「まさかと思ったが、神之能力を手に入れているのか!!」
「変わったのはそれだけじゃない。その身で受けて確かめてみろ」
アリスはそう言って、白い手を伸ばして何かの力を集中させていた。その力が何なのかわからないが、アバターは欠けた剣を見て、危険だとすぐ理解できていた。巨体に似合わず、素早しいスピードで動いていた。避ける事に成功したようで、アバターの横を何かが通っていく。そして、後ろにあった壁が綺麗な円を残して消え去っていた。
「っ! お前の能力は消滅か!?」
「素早いな。これだけ見れば、消滅させたようにしか見えないだろうな。言っておくが、俺の能力は消滅ではないぞ」
また手を動かすのと同時にアバターもアリスの手から逃げるように動き回っていく。外れた攻撃は強固な塔に穴を開けていく。騒音もなく、静かに塵も残さずにだ。
いつでも逃げ切れることも出来ず、ついにアバターの手一本が消し去られてしまう。
「なっ、回復しない!? 私は神だぞ!?」
「お前は確かに神だろうな。だが、神であっても殺せる存在がいるのを知っているだろ?」
「ま、まさか――――! お前は!!」
「そうだ、神だ」
ここでようやく、アリスが自分と同じ高みに上がっていることに気付いた。同じ神に――――
「あり得ない!! お前は長く存在してないだろ!? 私はこの世界に生まれてから一万年も存在し続けた。そして、ようやく神になたんだぞ!? それを――――」
「知るか」
邪神アバターの経歴を知りたいとは思わない。目的の邪魔をしたから、消す。それだけなのだから。
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」
短い間であっさりと神になったことに気に入らないようだ。惑星のような黒い塊が空中に現れ、明らかに塔の大きさを超えており、攻撃範囲がここだけで済まない程に大きかった。
「まとめて消えろ! 『終末惑星(クレイ・エンド)』!!」
魔王の相手だったら、オーバーキルと言える強大な魔力。その黒い塊が三つもアリスどころか、塔全体へ向かって落ちていく。アリスは何もせずに立っているだけだった。
ただ、立っているだけだったが――――
「なっ……」
アリスは何もしてないように見えていた。アバターはそう見えていたのに、何故か黒い惑星が塔へ到達する前に音も無く消え去ってしまったのだ。
「な、動作もなく、消滅させた……?」
「消滅ではないと言っているが?」
「なんだよ、お前の力は!?」
邪神アバターの力を持っても、消滅させたとしかわからなかった。本人は消滅ではないといっていることから、別のことをしているということ。だが、わからなかった。
「お前の神之能力を持っても、俺には効かない」
アリスはもう受けは終わりだというように、背中の羽を伸ばし、アバターの身体を切り裂いていく。切り裂かれた先に、さっきの黒い惑星が消えていたような現象が起こっていた。
「うあああぁぁぁ、あああああ!? 回復しないなんて!! 近付くなぁぁぁぁぁ!!」
攻撃が全く効かず、アリスの攻撃はこっちを容易くと傷をつけて回復もさせてくれない。アバターは神であっても、恐怖を浮かぶこともある。頭の中は目の前にいる未知の力を持った存在に恐怖で一杯だった。
狂乱になりつつのアバターはもう余力を残す暇はなかった。『暗黒神(ダークマスター)』は未確認物質(ダークマター)を支配する力、それを全て使い果たすつもりでアリスへぶつけた。
「『暗黒消滅(エンド・ワールド)』おぉぉぉぉぉ――――!!」
この世界にある未確認物質を使い果たしてでも、ここでアリスを殺さなければならないと、後のことを考えずに全力で放った。黒い流星と言える莫大な魔力の放流がアリスへ向かって行く。この攻撃は大陸をも砕き、海をも消し去って星の一部を破損させるぐらいの力が込められていた。近くにいた魔王と人間達はその余波だけでも消されそうな威力。それが、ただ一人のアリスに向かって放たれた――――
「まだわからないか。|効かない(・・・・)んだよ」
「嘘だろおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
アリスは手を指し伸べるだけで、膨大な魔力の放流は消えていく。それでも、まだ諦めていなかった。アバターは途切れることもなく『暗黒消滅(エンド・ワールド)』を放ち続ける。
「私の『暗黒神(ダークマスター)』の未確認物質(ダークマター)は膨大に渡る量が強みだ!! このまま、放ち続ければお前が先にガス切れになるだろ!?」
「ガス切れね」
アリスはアバターを見下すようにフッと笑っていた。こっちの力を知らずに、強気に出られることが愚かしいと感じていた。
「教えてやろう。俺の神之能力は『無明神(ゼウス)』。ステータスを公開してやるから、見てみるといい」
「公開するだと? 馬鹿にするな――――――――――――は? あ、あれ、なんだ、これは……!?」
アバターが見たアリスのステータス。何も隠すこともなく、全てを曝(さら)け出していた。そのステータスにはこう書いてあった。
ステータス
名称 アリス
種族 神
称号“無の神”
スキル
神之能力(ゴッドスキル)
『無明神(ゼウス)』
【有→無・無限・魔力完全無効・神速思考・精神不滅】
「む、無限……?」
何回見ても、それは変わらない。アバターの扱える未確認物質(ダークマター)は莫大な量を誇るが、それでも有限である。無限に生み出せるエネルギーに勝ることはあり得ない。
「邪神アバター、おしまいだ」
「ぐおおおっ、あ、あり得ないぃぃぃぃぃぃ!!」
有を無に帰す能力、『暗黒消滅(エンド・ワールド)』は音も無く、そのまま消えて行き、邪心アバターの身体まだも及んでいく。そして、何かも残さなかった。
邪神だった者は新しく生まれた神によって、この世から消えることになった――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます