第3話 人形の心

 


 人形に転生してから、一ヶ月が経った。エリーナは相変わらず、何処へ向かう時は必ずアリスを連れていた。

 アリスにしたら、情報が集まるから助かっているが。様々な情報を手に入れたのはいいが、停滞していることがある。それは、ただの人形である身体を動かす方法だ。


(まさか、この人形に魔力がないとはな。魂があるから魔力もあると思ったが、魂は魔力とは関連がないようだ)


 魂は言い換えれば、生命力で魔力は別である。人形に生き物みたいに魔力を生み出し、溜める見えない臓器や核がないので魔力が備わってない。

 だから、魔法を使いたくても使えない状態だった。


(スキルも動くために使えるようなモノはないしな)


 これが、一ヶ月経った後のステータスである。



 ステータス

 名称 アリス

 種族 ただの人形

 称号 なし

 スキル

 希少スキル

『自心支配(マイコンラート)』


 通常スキル

『無痛』、『防水』、『思考』、『瞑想』、『遠視』



 目的に向かって頑張っていたら、スキルを3つ手に入れていた。身体を動かす為に使えるスキルではないのは残念だったが、ないよりはマシである。

 スキルが増えたのもそうだが、もう一つだけ変化した部分がある。アリスがエリーナと一緒にいることがそれ程に嫌ではないと思うようになっていた。

 前までは動けるようになったら、容赦無く姿を消してやろうと思ったが、今はもし、いなくなったらエリーナは悲しむのでは? と気遣う心が生まれてしまっている。


「ねー、今日はクリスチャス王子様と散歩へ行くの」

(はいはい。相変わらずだな)


 エリーナは一ヶ月経っても、アリスから離れることもなく、何処にいても人形へ話しかけたりしている。まるで、人形に話が通じていると信じているような感じで、色々な話をしてくれるのだ。

 そう、アリスに魂があることに気付いていうるかのように…………


(まさかな。こっちはただの人形でしかないし)


 エリーナがアリスのことを知る術はないのだから、そんなことを考えても無意味だと考えを切り捨てる。

 これから王子と散歩へ行くことだが、あの王子と一緒にするのはちょっと気になるとこだが、まだ小さいこともあり、まだ警戒をする程ではないと思っていた。


(ふっ、まさか、心配をするとはな)


 心配をしていたことに気付き、内心で笑っていた。だが、嫌な気分はしない。

 それ程に、アリスはエリーナへ心を許していた。アリスはこれを幸せだと言っていいかわかってなかったが、嫌な気分ではないならその手前までは感じているだろう。

 このまま、平穏な時間が続けば良いと思っていた。エリーナとならいつか、幸せだと思うようになるだろう。



















 しかし、その幸せはたった今に消え去った。その幸せはエリーナがいてのこそだ。そのエリーナはーーーー




(あ、あァ?)




 アリスは思考が纏まらない中、右眼を斬り裂かれて木の淵に寄り掛かるように倒れていた。残った視界には、胸に剣が刺さっていて、虚空な瞳を映すエリーナの姿が映っていた…………





ーーあとがき


毎日1話ずつ投稿する予定です。







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