第2話 勇者の像
ステータス
名称 アリス
種族 ただの人形
称号 なし
スキル
希少スキル
『自心支配(マイコンラート)』
通常スキル
『無痛』、『防水』
就寝、エリーナが自分を抱きしめて寝ている時。アリスは風呂で手に入れたスキルのことを考えていた。スキルを手に入れたなら、人形である自分も人間と同じようにステータスを持っているのでは? と考えていたら、頭の中にステータスが急に現れたのだ。
その上記にあるステータスが、自分のステータスだそうだ。
(『自心支配(マイコンラート)』? 通常スキルの方はわかるが、希少スキルの方はよく分からんな)
ステータスを思い浮かべたまま、スキル名を呼び出すように浮かべてみるが、説明書みたいな物は出なかった。内容を調べられなかったが、希少スキルと言うぐらいだから、凄い効果があるのだろうと信じていた。
(うーん、慌てても仕方がないか。寝よっ)
身体が人形であっても、アリスには精神がある。その精神を休ませるように、意識を薄めて睡眠へ移行させていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、エリーナが持ち上げて揺らされたことにより、アリスは眼を覚ました。どうやら、食事は既に終わらせて、外へ出掛けようとしているようだ。
公爵家の娘らしく護衛の者を2人連れて、中央の広場に向かっていた。
「これが、私の好きな場所っ!」
(外で人形に話しかけて、恥ずかしくないのかよ。……像?)
広場に着き、視界に移ったのは1つの像だった。剣を持ち立ち尽くす男の姿があった。
「やっぱり、勇者のカズト・アンドウ様はカッコいいですね!」
「はい。千年前に起こった聖戦、魔神ゼロを討った救世主ですね」
(カズト・アンドウ? 日本人っぽいな……って、魔神っていたのかよ?)
護衛からの話では、千年前に大きな戦争があり、その戦争を終わらせたのが、あのカズト・アンドウと言う者だとわかる。
名前が日本人だと言うことは、召喚されて勇者をやっていたのが想像出来る。魔神のことも気になるが、その話は千年前のことだから、今はもう魔神は現れないだろう。カズト・アンドウが討ったと言っているのだから。
「これはレプリカですから、いつか本物を見に行きたいものだな」
「それは無理だろうな。そんな長い休みが取れないんだし、本物はあのルーディア帝国にあるんだぞ。ここから馬車でも5日は掛かるぞ」
「そうだよな。往復で10日か。リディア王国からルーディア帝国は離れすぎているんだよなぁ」
護衛同士の会話から、1つの情報を得られた。ここはリディア王国と呼ばれているようだ。千年前はメイガス王国と呼ばれており、魔神に潰された後にリディアと言う女性が再国しようと動いていたらしい。その働きを認められ、その女性の名が付けられた王国となった。
「いつか、私も勇者の隣で戦いたいなぁ……」
(勇者……もしかして、今も勇者がいんのか? まさか、魔王もーーーー)
そこまで考えていたら、大きな馬車がこっちへ向かっていることに気付いた。白くて立派な紋章が貼られており、とても偉い者が乗っているとわかる。その馬車が止まり、誰かが降りてきた。
歳はエリーナのと変わらなくて、金髪で赤い眼をしている男だった。その者が誰か理解した護衛はピッと背筋を伸ばして、敬礼をしていた。それだけで、公爵家よりも偉い人物だとわかる。
「やぁ、エリーナ殿。ここがお気に入りですね」
その者は和かに挨拶をし、エリーナはパァッと顔を輝かせていた。
「あ! クリスチャス王子様! また出会えて嬉しいですわ!」
(王子様!? いきなり、とんでもない奴に出会うとはな…………まぁ、人形の俺には関係はないか)
エリーナが挨拶を返すと、クリスチャス王子様と呼ばれた男が人形に気付いた。
「おや、人形ですか。綺麗ですね」
「うん! 昨日、お父様から買って貰ったのっ! 名前はアリスと言いますわ」
「ふぅん、アリスね。それよりも……」
こっちを一瞥しただけで、すぐ視線をエリーナに向けていた。その一瞥だけで、アリスは王子の眼に闇が潜んでいることに気付いた。
(なんだ? そこら辺のガキがするような眼じゃなかったような気がするんだが……?)
なんの闇なのかは理解出来なかったが、普通ではないと理解した。
だが、こっちにその闇が降り掛からないなら、エリーナがどうなろうとも興味はなかった。
2人は暫く話した後、王子がこの後に用事があると言い残して、馬車で去っていった。
「ねぇねぇ、誰なのか気になるよね?」
(知っているから、いらん)
「あの方は第一子のクリスチャス王子様。この前のパーティで出会い、仲良くしてくれてるわ」
(あれが第一子ねぇ……)
自分の考えが間違っていなければ、将来はこの国の王になるだろう。闇を抱えていそうな王子が王になると考えれば、動けるようになったらすぐに出た方がいいなと考えてしまう。
(今日は様々な情報を手に入れたから、上々かな。しかし、勇者や魔王もいるとは、この世界はファンタジーな世界だなぁ)
エリーナが道を歩いていく中、エリーナは思考を深めながら街の背景を見ていくのだった。
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