第5話 狂気
まず、王子に復讐すると決めたが、すぐ行く訳にはいかない。何より、力が足りないのだ。
このまま、暴れに行こうとしても門前にいる門番に討伐されてしまうだろう。何せ、魔物になったばかりでは、自分は弱い類に入るだろう。
「強くならなければ……。だったら、魔王でも目指すか?」
この世界は勇者、魔王がいるなら魔王を目指すのも悪くはない。だが、どうすれば魔王になれるかも不明だ。
(取り敢えず、自分の力を試さないとな)
今のアリスは身長が70センチしかない。人間相手に戦うにはもう少し高さが欲しいと思いつつ、新しく手に入ったスキルを試していく。
まず、『魔力操作』からだ。
「あれ? 思ったよりわかりやすいな」
もう少し苦戦はすると思っていたが、あっさりと自分の魔力を理解して操作をすることが出来た。何故、すぐに理解出来たかわからないが、自分の身体にある魔力を理解出来たので、良しとする。
今度は『魔力操作』を使って、『魔爪』を発動する。
「へぇ、思ったより長いんだな」
指の先から伸びる魔力の爪。だいたい50センチまでは伸ばせるようで、次は斬れ味を試すために近くにあった木へ振るってみる。
結果は、木を真っ二つに出来た。
(……なんか、出来過ぎのような気がするけど、何かの補正が付いてんのか?)
再び、自分のステータスを調べるがその様な記述は無かった。あっさりと魔力を操作し、『魔爪』も威力が高い理由はわからないままだ。
だが、使えるに越したことはない。
「まぁいい、早速実戦をしてみたいがーーーーおっと、噂をすればか?」
木を倒した音でこちらに気付いた魔物がいたようで、その魔物は頭がハゲのようにツルツルした豚だった。そのツルツルしたハゲは堅そうに見えたから、頭突きしてくる魔物だと読めた。
右眼の『暗闇眼(ダークネス)』で弱点である部分が黒い靄に覆われているのが見えた。弱点は首と胸だった。頭は硬い部分が守っているから弱点に成り得ないようだったが、あえてそこを狙うことに決めた。
「ブモォォォォォ!!」
「魔物に恨みはないが、力を試させてもらおう!!」
早速、『魔爪』を発動して、腕を振り抜く。その爪は硬そうな頭に当たり、ガチッと一瞬だけ止まったがそのまま減り込んでいった。
「ブモッ!?」
「ウラァァッ!!」
更に力を込めると、頭が割れてそのまま身体を斬り裂いた。硬い部分を狙ったからなのか、爪にヒビが入っていたり欠けている箇所があった。魔力を注げばすぐに直せるが、すぐに直さないで割れている部分を確認していた。
(ふむ。強度は大体わかったが、あの豚は弱い方だよな。なら、『魔爪』はそんなに強いとは言えないか)
木を真っ二つにした『魔爪』だが、魔物は木よりも少し硬いようで、強い魔物に効くか微妙だと推測する。
続いて、また同じ豚の魔物が現れた。番(つがい)だったようで、怒り狂って突進してきた。
(まだ使ってないスキルは…………使いたいとは思えねぇな。『狂気発作』か……)
一度は試すべきか迷っているスキルは、『狂気発作』。文字通りに自発で狂気になるスキルで、効果は狂気になり、自分の力が5倍になる。それはいいが、デメリットは理性が無くなること。
「うむむっ……、一度は試すべきだよなぁ……『狂気発作』!!」
自分の身体に力が膨れ上がるような感覚を味わい、少しずつ理性が消えていっていく。
(うげっ、ヤバイ! 地雷スキルじゃねぇか!! スキルをキャンセルしないとーーーー出来ないだと!?)
残った理性でスキルをキャンセルしようとしたが、キャンセルはできなかった。力不足ではなく、元から出来ないようになっているようだ。
狂気に飲み込まれる寸前になってから、理解した。このスキルは自分の体力と魔力が限界になるまで暴れ続けるなのだと。
それはアリスにとって、歓迎は出来ない状況であった。最後に動けなくなった所で、別の魔物に襲われてしまえば、生きていけないだろう。
(っ! だ、ダメだ……、理性が消えーーーー)
アリスはヤバイと思っても止められない。だが、神はアリスを見捨ててはなかった。
完全に理性が無くなる前に、希少スキルが自動的に発動されたのだ。
『自心支配(マイコンラート)』が。
ーーあとがき
今日から2話ずつにします。読み逃しがないように気をつけて下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます