『お題企画&渾身作の読み合い企画!!』
抱いた理想は儚く散っていった
僕の理想の夫婦は両親だ。
両親ともに働いているが一人息子の僕のことを疎かにしたことはない。家庭内での生活はもちろん、学校生活も手を抜かなかった。
入園式、卒園式、入学式、卒業式、運動会、遠足、授業参観、三者面談。保護者が必要なあるいは参加できる行事には必ず参加してくれた。仕事が忙しくてもやりくりして父か母どちらかが必ず参加してくれた。余裕があれば両親ともに参加してくれたこともあった。
でも誤解しないでほしい。
僕が両親を理想としてるのはこんなことじゃない。子どもの頃の僕には気づかなかった両親の真の姿を僕は理想としている。
真の姿、それは両親ともに愛人がいるのだ。いつからいるのかは分からないが、父にも母にも愛人がいるのだ。それに気がついたのは偶然だったが驚きで声も出なかった。
両親を非難しようとは思わなかった。愛人がいるのに家ではそんな素振りを全然見せなかった両親を尊敬した。僕もそんな両親のような夫婦になりたいが相手がいなかった。僕を愛されても困るし、愛人を作ってそっちに本気になられても困る。
女性を選んでいる間に三十歳を過ぎてしまった。
そんな僕に断りづらい上司から断りづらい見合い話が来た。断れなくもないが僕の会社員人生に大きな打撃が来るかもしれない。
相手の女性に会ったが理想とは正反対の女性だった。浮気は絶対ダメという、世間から見れば当たり前の考えを持つ女性だった。でもちょっと押しに弱いところのある女性なので、うまく話を持っていけば理想の夫婦になれるかもしれないと思い結婚した。
彼女はとても優しく思いやりのある愛情深い女性だった。新婚一ヶ月も経たないうちに僕は彼女に夢中になった。抱いた理想は儚く散っていった。
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