【三題噺 #63】「朝」「視線」「影」(616文字)

晴れた日に

 優香は駅から高校へ向かって歩いてる途中に視線を感じた。

 周りを見てもこっちを見てる人はいなかった。


「どうしたの」

「なんか視線を感じて」


 入学式の日に仲良くなった友達も周りを見るが、特に気になる人はいないようだった。

 五月の気持ちいい朝なのに嫌な気持ちになっていた。

 優香はその後も視線を感じ、気持ちのいい朝のはずなのに不快になった。


「視線って毎朝感じるの?」

「気がついたのはここ二、三日なんだけど。それまでは見られていたけど気がつかなかったのか、学校に慣れて少し余裕ができたから気がつくようになったのかは分からないわ」

「どこら辺から見られてるの」

「見られてるというのがわかるだけで、どこから見られてるのかはわからないわ。前か後ろか右か左か、方向はわからないの」

「もしかして上からじゃない?」

「上からって、何が見てるの」

「神様?」


 優香が「雨が降った日に視線を感じなくなる」というと友達は「やっぱり上からだよ。傘さしてるから上からの視線を遮ってるんだよ」


 優香は友達の言うことは半分当たっていると思った。

 雨の日は傘をさすからか視線を感じない。でも曇って雨が降りそうだけれども傘をささない日も視線を感じない。


 視線を感じるのは優香が他人より少し鋭いからだった。あの場所を通る人はみんな見られているのだから。それを感じるか感じないかの違いにすぎない。

 優香も周りを見るだけではなく、足元を見ればきっと気がついたはずだ。

 影がじっと彼女を見つめていることに。

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