第61回「2000文字以内でお題に挑戦!」企画(797文字)

一角獣のため息

 王国の南にあるチョピァドの森に今までにない数の冒険者が訪れていた。

 目的は一角獣を捕まえるためであった。

 百年くらい前のある貴族の娘が友人への手紙に、吟遊詩人がこの森を舞台にした歌を歌っていたのを聞いたと書いてあった。内容は村に住んでいる清らかな乙女が、木の実を採ろうと森に入ったところ迷ってしまい森の泉のそばで一角獣と出会うというものだった。

 そのような事実だか創作だか分からない歌をあてにしなければならないほど切羽詰まった状態だった。この国の王太子が毒で今にも死にそうだったのだ。王族お抱えの医師がいくつもの毒消しの薬草を使ったが、王太子の状態は良くならなかった。そのため最後の望みである一角獣の角を探しているのだ。

 いつもは静かな森を大勢の人間が歩き回っている。今まで人間が入ってきたことのない森の奥深くで一角獣はため息をついていた。

『この森は静かだったから気に入っていたのに』

 一角獣はこの国を出て行こうと考えていた。王太子が亡くなれば、第二王子と第三王子の争いが国を二分するような争いになることが想像できたからだ。

 もちろん一角獣はそんなことを望んでいない。自分の角を少し削って毒消しとして王太子に飲ませることはやぶさかではない。だが人間はどうだろう。人前に出た自分を人間は殺さないでいられるであろうか。

 一角獣の角が毒消しになることは誰もが知っている。目の前にそんなお宝があったとき、それを人間が我慢できるなどと信じるほど一角獣はのんきな性格ではなかった。

 一角獣は人知れず森を出て行き、別の国の森で過ごすことにした。


 そんな一角獣に冒険者たちの噂話が聞こえてきた。

 毒消しの効果がある薬草が発見され、王太子が助かったという噂だ。しかしその しばらく後に、その貴重な薬草をめぐり国同士で争いが始まったと聞こえてきた。

『王太子が助かっても助からなくてもあの国は争う運命だったのだな』

 一角獣はため息をついた。

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