【第一回】『一文創作』~書き手の数だけ物語がある!~
吾輩は猫である。
吾輩は猫である。
おそらく吾輩は猫なのだろう。
空き地の前を人が通った時、吾輩が草むらから顔を出すと吾輩を見て「猫」と言う。他にも「にゃんこ」とか「みゃーみゃー」とか言われる。それらも猫のことだ。
猫の他に「不細工」とか「変」とか「おかしな」とかも言われるので、人間から見ると普通の猫とはちょっと違うらしいが自分では分からない。
空き地の前は人通りが少ないが優しい人が多い。
吾輩に食べ物をくれる。食べ残したパンや弁当の残りの冷えたご飯や卵焼きプチトマトなど種類が多い。
残り物ではなく買ってきた魚肉ソーセージやちくわをわざわざ開けて吾輩にくれる人もいる。吾輩のために猫缶なるものを買ってきてくれる人もいる。
吾輩が何でも食べるのを知ると「ちょっと期限が過ぎちゃったから」と生肉をくれた人がいた。魚より肉が好きなので嬉しい。吾輩が一番好きなのは豚肉である。生肉はいい。
食べ物をくれる人が重なると食べきれず残すこともある。その残りはネズミたちが食べるが、吾輩は心が広いから好きにさせている。
残すほどの食べ物をくれるが、吾輩は狩りが得意だ。獲物がいればうまく仕留め、 それを食べるので食うに困らない。
☆ ☆ ☆
腹が減った。
空き地の前は元々人通りが少なかったが最近は全然人が通らない。たまに通るのは二人組の警察官だ。警察官はだめだ。あいつらは銃を持っている。うかつに顔を出して撃たれたらたまらない。
吾輩は狩りが得意だが獲物がいなければ狩りができない。
人のいなくなったここから人の多い場所に移ろう。
吾輩は猫である。
おそらく吾輩は猫のような姿をした別のナニカだ。
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