【三題噺 #57】「予定」「ケーキ」「沈黙」(640文字)

採用された意見の効果

 会議中の沈黙ほど嫌なものはない。

 何か意見が出なければ先に進まない。同じ係やせめて同じ課の会議くらいなら軽く発言できるが、総務部長が出ている大人数の会議では迂闊なことを言えない。

 僕のような会議室の隅っこにいるような社員にはできない。

 会議の予定は二時から四時までだったが、もう三時近いのに本当に終わるのだろうか。

 三時か、小腹が空いたような気がする。もっと人数の少ない会議だと三時に女子社員がお茶を入れて出してくれたのに。取引先の人が出るような会議だとケーキも出してくれたことがあった。何十年前か、今では考えられない時代だった。


 会議室に三時過ぎに入ってきた人がいた。副社長だ。これが副社長まで出席するような会議だったのかと驚いた。副社長は総務部長の手元にあった書類を見て「〇〇課の鈴木くん、何か意見ないかな?」と指名をした。

 指名された鈴木さんは少し考えて自分の意見を言い始めた。


「やはり神棚を祀ったり魔除けの御札を貼ったりして効果がないのだから、専門家に 除霊してもらえばいいのではないでしょうか。ネットで探せばいろんな除霊師がいますので、その中で効果ありそうな人に頼めばいいのではないでしょうか」

「除霊師ですか」


 副社長も何やら考え込んで僕は鼻で笑ってしまった。

 除霊師などに頼まなくても、僕の墓の前で当時の係長や課長が謝ってくれればいいだけなのに。でもまあそれが実現して僕が成仏したとしても他にもこの会社を恨んでいるのは何十人もいるのだから、まだまだこの会社の怪奇現象は続くと思うけどね。

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