自主練習は二人で

 ギターを弾けるのは男女関係なくかっこいい。

でもあたしは苦手だった。誰よりも下手くそであると自覚もあった。

 来週末、音楽の授業でギターの演奏テストがある。二人一組。ペアの足の人を引っ張るわけにはいかない。

「おまえギターの練習するつもりなんだろ?」

 前の席にいた耀太ようたが振り返って言った。

「付き合うぜ」

「いいわよ別に」

 耀太はあたしと違ってギターの演奏が上手い。だから自分が惨めに思えて嫌だった。

「なんだよケチだなぁ、瑛子えいこ

 なんとでも言ってなさい。後悔するのはあんたなんだから。

 そんな思いは口には出さず、一足先に席を立った。

 昼休み、音楽室にて。あたしは一人でギターを鳴らす。もはや弾いてなかった。音を鳴らすので精一杯だった。

「全く。だから教えてやろうと思ったのに」

「耀太……」

 彼はクラシックギターを持ってくるとあたしの横の席に腰かける。

 その後、室内には二人分のギターの音が響いた。

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