向こう岸の少女

 川辺に遊びに来た僕は、いつものように手を振った。友達にはバレないようにね。

 すると向こう岸にいる彼女は小さく手を振り返してくれる。

 どうやら彼女は幽霊で、僕にしか視えないらしい。

 初めて彼女に声をかけた時、友達から言われたんだ。

「おまえ一体誰と話してるんだよ」

 彼女がいる方に指を差したら不思議そうな顔をされた。

「誰もいないじゃないか」

 だからわかったんだ。彼女は僕にしか視えない幽霊なんだって。

 怖くなかったのかって?全然。

 彼女の見た目、当時の僕達とそう変わらなかったんだよ。

 直接喋ったり遊んだりはしなかったけど、コミュニケーションはとってた。

 この前久々にその場所に行ってみたら、彼女は相変わらず向こう岸に立っていたよ。ボーイフレンドらしき少年と手を繋いで嬉しそうにしてた。

 参ったよね。幽霊に負けるなんて。

 あの時僕が積極的になっていれば違ったのかな、なんて。

 以上が僕の、初恋の話。

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