綺麗で、儚くて

 目の前で弟がしゃぼん玉を作っている。

 しゃぼん玉。それはふわりふわりと高く飛んだ後、突如弾けてしまう。生まれてすぐに消えてしまう、悲しき宿命を背負ったもの。

 なんて、大袈裟に考えてみたけれど、今目の前でしゃぼん玉を作っている張本人はそんなこと全く思ってないよね。楽しいから作っている、ただそれだけのこと。

 今はそれで良い。

 いつか儚さを知る時が来る。それまでは純粋に楽しんでいてほしい。

「おねーちゃん」

「どうしたの?」

「いっしょにやろ」

 そう言ってストローの刺さった容器を差し出される。

「私、できるかなぁ」

 私は小さく首をかしげながらそれを受け取った。

 しゃぼん玉を作るのなんて、何年振りだろう。液がついたストローを口にくわえ、そっと息を吹く。

「すごい!」

 次々と生まれ飛んでいくしゃぼん玉を見て、弟が興奮した様子で叫ぶ。

 もうあの頃のように純粋ではないけれど、今だけは楽しんでも良いかな。

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