第2話 side桜餅 さようなら恋

遡る事、二時間前ー


俺と花岡先輩は、駅前の居酒屋【笹の葉】で晩御飯を一緒に食べていた。

先輩の名前は、花岡優太朗はなおかゆうたろう

年齢は、1つ上で……。

野球部をやっていた。

俺は、帰宅部だったけれど……。

たまに、玉拾いを先生に頼まれて行っていた事がきっかけで仲良くなったのだ。

先輩は、178センチで外国人のように彫りが深く整った顔立ちをしている。

俺も、同じような濃い目の顔立ちで。

よく同級生からは、兄弟だろ?と言われていた。

先輩は、昔からあまり悩みなんかを話したりしない人で……。

俺の恋愛相談や下らない悩みなんかをよく聞いてくれた。

そんな先輩が、俺に相談したい事があるなんて言うもんだから……。

急いで、仕事を終わらせて会いに来たのだ。

先輩が、俺に相談なんて初めてに近かったから……。

居酒屋の個室で、俺達は飲みながら話す。

15分程した時に、先輩が遠い目をしながら話し出した。

その声は、いつもより低く。

消え入りそうな声で呟いた。


「桜餅。俺な!もしかしたら、子供無理かも知れない……。凛々子も、41歳だしな。無理は、させられない。検査とか行ってないからわからないんだけどさ。何となくだけど、原因は俺じゃないかなって思うんだ」


俺は、先輩の言葉に「まだ、大丈夫ですよ」「検査してみたらどうですか?」「治療受けてみたらいいんじゃないですか」何て軽々しい言葉を言えなかった。

だって、俺にもわかるから……。

結婚して、9年。

俺達夫婦も子なしだ。

検査や治療の末、離婚した友人達を知っている俺達は治療に手を出せずにいる。



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