第7話

少し不満そうな顔をしたジレンが言った。


J「誰か来たよ?」


T「こんな朝に誰だろ…」


仕方なくジレンから離れ、インターホンの液晶を見る。


J「誰こいつ。」


ジレンは俺を後ろから抱きしめて俺の首筋に頬を寄せ一緒に液晶を見つめた。


T「彼女……」


J「ウザ……」


T「そんな言い方しないでこれから俺の彼女とも仲良くなれよ?顔合わせることも多くなるだろうし。お前は俺のペット。彼女の前では俺たちは親戚。分かった?」


俺がそう言うとジレンはムッとした顔をして舌打ちをしながら俺から離れると、ベッドにゴロンと寝っ転がった。


J「俺と女の二股とか最悪最低……そんな女なんかと別れたらいいのに。」


そう呟くジレンにため息を落とし、俺はインターホンを繋げるためポチっとボタンを押す。


T「はい…」


「タケル?おはよ。いきなり来てごめんここ開けて?」


そう言われてチラッとジレンの方を見ると、ジレンは不貞腐れた顔をして俺を睨んでいる。


T「ごめん…ちょっと今家に親戚の子が来てて…俺がそっち行くね。」


「えっ…あぁ…うん…分かったここで待ってる。」


そして、インターホンでこ通話を終えると、ジレンはベッドに寝っ転がり丸まったまま俺に言った。


J「タケルくんは親戚の子とあんな濃厚な行為したりあんな濃厚なキスすんのかよ…」


T「そんな言い方するなよ…今日は彼女と外で会うけど、彼女がここに来たら変なこと言ったりしないで仲良くしろよ。」


J「なんで?昨日、抱いたって俺が彼女に言うかもしれないから今日はここに入れないの?ってかそもそもその女とは同じ男を共有してる仲なのに仲良くなれない。そんな女は敵だろ。」


T「もう…そんなこと言ったらここにいれなくなるぞ…」


J「ってかタケルくん本当に……その女が好きなの?」


俺はジレンのその言葉にすぐ返すことができなかった。


それはもう…


俺の心のどこかにジレンが棲みつき始めてるからなのかもしれない。


T「……すぐ帰ってくるから良い子にして待ってろよ…ごめん……」


俺はそうジレンに言い残し、カーディガンを羽織るとそのまま彼女の所へ向かった。


マンションの下に降りると身を縮こめて俺を待つ彼女。


T「お待たせ…行こう?」


「うん。」


俺たちは無言のまま近くの公園に向かい、チラホラと人がいる中、ベンチに並んで座る。


「まだ寝てたんだね…パジャマじゃん。」


T「あぁ…うん。休みだからつい寝過ごした。」


「そう…昨日電話したんだけどずっと繋がらなかったから心配して仕事前に寄ったの。親戚の子が来てたからなんだね?」


T「うん…今度紹介するね?しばらくウチの家に住むことになったから。」


「え?その子とタケルが一緒に住むの?」


T「うん…住むことに困ってるらしくて。」


彼女は言葉にしないものの分かりやすいほどに下を向き不満そうな顔をしていた。


俺はそんな彼女の手を握りご機嫌を取るが、その手の温もりがジレンとは違い、不思議なことに今まで握ってきた彼女の手に違和感を感じる。


「分かった。親戚の子だもんね…今度また会わせて?一緒にご飯でも食べよう?」


T「ありがとう…」


そして、俺は彼女のおでこにチュッとキスをし彼女が仕事に向かうのを見送った。


俺はその後ろ姿を見届けた後、ダッシュでジレンの待つマンションへと帰った。


つづく

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