第12話

動物たちにご飯をやり終えた俺たちはドーナツと牛乳を仲良く並んで食べた。


ジレンはストローを使わず直に牛乳を飲み、唇の上に牛乳をつけて無邪気に笑うから、俺がそれを親指でぬぐってやるとジレンは嬉しそうに俺の指を舐めた。


ほんとうに…ウサギみたい…


ジレンの食べる姿をみて俺はそんなことを思いながら見つめる。


そして、お店の営業をするにあたりジレンの特技が見つかった。


それはあの人懐っこい顔が接客向きだということ。


ジレンにウサギを抱かせて店先に立たせておけば、特にジレンが呼び込みや愛想良くしなくても立ってるだけで、お客様が店へ吸い込まれていくように入ってくる。


店内では動物達だけではなくオリジナルで動物達のご飯やおやつ、誕生日用のケーキや服、アクセサリーなど動物のための手作りのグッズで溢れている。


俺は店内で売っている俺の手作りの服や首輪などをお客様におすすめをして、久しぶりにお店は大盛況だった。


なんだかんだで…


ジレンがいると店の雰囲気も良い。


がしかし…隙あらばお客様にナンパされるジレンを見て飼い主としては放ってはおけず。


しっかりと「ウチの」ジレンだという事をサラッとお客様に示しておいた。


そうしてあっという間に営業の終わりをむかえた。


N「お疲れさま。じゃジレンは本採用ということで明日から本格的に頼んだよ〜!!」


J「ありがとうございまーす!がんばります!」


T「お疲れさまでした。」


そして、俺たちは一緒に店を出て家へと帰る。


T「今日は疲れたしラーメンでも食べて帰ろうか?」


J「よっしゃ〜ラーメン最高〜!!餃子とチャーハンと唐揚げも頼んでいい!?」


T「そんな食べれる?食べてるなら頼んでもいいよ。」


J「食べれるに決まってる。」


近所のラーメン屋に入りカウンターに並んで注文をすると、ジレンは身を乗り出して厨房を覗こうとするので、俺はジレンを落ち着かせるように椅子に座らせる。


そんな俺たちの様子に店主は笑いながら餃子を出し、ジレンは目を輝かせながら餃子を口の中に放り込んだ。


J「久しぶりの餃子うまくて泣ける〜」


T「よく噛んでいっぱい食べろよ。」


沢山働いたジレンは相当お腹が減っていたのかあっという間に全ての料理を食べ尽くした。


J「はぁ〜お腹いっぱい。こんな食べたらウサギじゃなくてブタになっちゃうな〜」


T「なに言ってんだよ。」


そして、会計を済ませた俺たちは散歩がてら手を繋いで公園をゆっくりと歩きマンションへと向かう。


ジレンは昨日、初めて公園に来た時よりも落ち着いて歩いていて、目の前を飛ぶ虫に興味が引かれることも多々あるが、そういう時は俺の手を自らギュッと握って我慢していた。


T「ジレンは良い子だね?言われたことちゃんと守ろうと頑張ってる。えらいぞ〜」


俺がジレンの髪をわしゃわしゃと撫でるとジレンは恥ずかしそうにドヤ顔ではにかむ。


J「こんなの普通だし。久しぶりの人間としての生活に慣れてきただけだし。」


なぜかそのドヤ顔は鼻の穴全開で、ジレンのその姿がおもしろくて俺が笑っていると、マンションの前にとある姿が見えて、俺は咄嗟にジレンと繋いでる手を離してしまった。


「タケル…お疲れ様。遅かったね?」


声のする方に視線をやるとそこには彼女が立っていて笑顔で俺に手を振っている。


ジレンは俺が手を離したのが不服だったようで今、俺の横で殺気立っていて彼女に威嚇するとプイっとそっぽを向き俺と目すら合わせない。


T「お…おつかれ…どうしたの急に?」


「え?いつも急に来たりしてたじゃん?あ…こちらが親戚の…?」


T「あ…うんそうそう。ほら、ジレン挨拶して。」


ジレンにそう言ってもジレンはうんともすんとも言わず、彼女を見ることなくよそに向かって頭だけを下げた。


T「ごめんね。こいつ人見知りでさ?すぐ仲良くなれると思うから。」


「ジレンくんよろしくね?」


彼女はジレンに手を差し出したが、ジレンはそれを軽く交わしてマンションの中へと入って行き、俺は気まずい空気となった彼女に気を遣いながらジレンの背中を追いかけた。


つづく

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