第16話

マンションに着くとジレンは俺をソファに座らせてじーっと俺の瞳の奥を覗く。


T「ジレン…ごめん…。」


J「泣くなんてズルイ…泣いたらもう怒れなくなる。」


ジレンはそう言って俺の目に潤む涙を親指で拭う。


T「本当ごめん…あいつとはもう…別れたから…」


J「そう。あの女さ…他の男の臭い付けたままタケルくんに家に来て、タケルくんの目を盗んで俺にまで言い寄ってきたよ?」


ジレンにそう言われてさっき街中でみた彼女の映像が頭の中に思い浮かび、俺は肩を落とす。


J「だから、俺は男でも女でも関係なく抱けるけど、お前みたいなクソ女相手だと流石に勃たないって言ったら、ムキになって自分でブラウス破いて俺を殴って悪者にしようとした。タケルくんは自分があの女にとって数いる遊びの男のうちの1人ってこと今まで気づかなかったのかよ?」


T「気づかなかった…いい子だと思ってたから…」


J「好きではなかったんだろ?向こうが好き好き言ってきたから付き合っただけだろ?」


T「な…なんでわかるんだよ…?」


J「好きな相手じゃねぇから勃たないしイケないんだよ。はぁ〜考えただけでもタケルくんがあんな女とシたんなんてマジで腹立つ。」


ジレンはイライラを我慢するようにソファの背もたれを拳で殴りつけ、貧乏譲りが激しくなる。


俺はジレンに言われたことが図星すぎてなにも答えられず、俺は無言のまま絡まれた時に出来たジレンの顔の傷に伸を伸ばすと、ジレンはガシっとその手首を掴み俺を睨んだ。


J「俺に触れる前にちゃんと答えて欲しいんだけど。」


鋭い野性的な目で俺を見つめたジレンは渇いた口調でそう言った。


T「な…なにを……?」


微かに声が上ずったのはジレンに触れられている手首が脈を打ち、その瞳に溶かされてしましいそうなのを隠しているから。


するとジレンの鋭かった目は少し悲しそうな目に変わり弱々しい声で言った。


J「ほんとに俺のこと好き?」


その声が微かに震えていたのはきっと色んな人に裏切られ傷つけられてきた不安だろう…


出会ったあの日…


アザだらけのジレンを見た俺はジレンを守るそう思ったのに俺はこの手でジレンをぶって傷つけてしまった。


なのにジレンはまた…そんな俺のことを信じようとしてくれていて…


俺はジレンの目を見つめながら言葉を絞り出す。


T「うん…す……き…大好きだよ。」


そして、俺の言葉は全てを伝え切ると同時にジレンの唇によってその言葉を飲み込まれた。


この数日で心地よくなってしまったこの唇の温もり…


その温もりを感じるだけで涙が溢れ、ジレンの唇に溺れるように俺はジレンの身体に手を回す。


するとジレンは俺の身体を撫で、シャツの中に手を忍び込ませそのまま俺を抱き上げベッドに組み敷いた。


ベッドに横になったままジレンに触れられるとその場所が脈をうち全身が熱く疼く。


T「ジレン……早くシたい……」


J「んふ…今シてるじゃん…」


ジレンは長い前髪から綺麗な瞳を覗かせて笑って俺の頬を撫でる。


男の俺が男相手にそんな恥ずかしい言葉を言い、せがむのはもうこの身体がジレンに抱かれる喜びを肌で知っているから。


T「焦らさないで…早く…」


J「あんまり可愛いこと言わないで…手加減出来なくなる……」


ジレンはそういうと長い髪をかきあげ目を細めながら俺の唇に口付けを落とした。


つづく

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