第4話

数時間後


J「ねぇ本当に恋人いんの?恋人いるわりにキツキツだったよ?本当は初めてでしょ?」


俺の服を着て、俺の作った鍋を我が物顔で箸で突っつきながら、俺の初体験について詳しく聞いてくる俺の可愛いはずのペット。


その顔は憎いのか腹ただしいのかよく分からないが…


悔しいかな、ジレンの行為はめちゃくちゃうまくてこの世とは思えないほど気持ちよかった。


T「後ろは初めてに決まってんじゃん。俺の恋人は女なんだから。」


俺がそう言いながら水炊きの豆腐を自分のポン酢に入れる。


J「んだよ…ノンケかよ…最悪………あ!それ俺の豆腐!!」


俺が働いたお金で、俺がさっきスーパーで買ってきて、俺がこの鍋に入れて作った水炊きの豆腐なのに、何故かウチのペットは文句を言いながら、それを自分の豆腐だと言い張る。


この生意気なウサギ男…


今すぐ背中のホクロを連打してウサギにしてやろうか?


なんて俺は内心思いながらも、ジレンのポン酢の中にも豆腐を入れてあげた。


T「そんなことよりさ?なんで背中のホクロを押されたらウサギになるの?」


ずっと俺がジレンに抱かれ、快感に溺れながら考えていた疑問。


俺はずっと、こいつは本当にあの白くてモフモフのウサギだったのだろうかと考えていた。


J「ん?あぁ…金がなかった時に人体実験のバイトして、その実験が失敗だったみたいでこのホクロを強く押したらウサギになる身体になった。」


鍋を食べながらそう話すジレンはきっと俺とは住む世界が違ったんだと思う。


俺ならどんなに生活に苦しくても人体実験のバイトなんてしない。


なぜか平気な顔してそう話すジレンが、俺の目には少し寂しそうな顔にも見えて胸の奥が痛かった。


J「まぁ、ウサギだと腹減ったら草食っとけばいいから便利っちゃ便利だけどウサギになったら誰かがまた背中のホクロを押してくれるまで永遠にウサギの姿のままだから…性欲溜まるんだよね?おまけに人間に戻ってもウサギの性質は抜けないし…って…あ…ウサギの時はウサギとすればいいのか!!」


あの可愛い顔に騙されて、俺はジレンのこと少し心配し同情したけど前言撤回。


あの笑顔でアブノーマルな性事情を話すジレンに俺はついさっき犯されたんだと思うと大きなため息しか出なかったが不思議とだからか…と男を平気で襲ったジレンに納得した。


T「人間やらウサギやら忙しそうですね。」


J「そっちだって女抱くくせに俺にも抱かれるじゃん?まぁ俺はまだウサギとは未経験だから安心して。」


んなもん心配なんぞ微塵もしとらんわ!!


と俺は心の中で盛大に突っ込んだ。


今は俺の前で無邪気にニコニコと笑いながらくだらない事を言って鍋を食べてるジレンだが…


さっき見た体のアザと傷、そしてあの寂しそうな目を思い出したら俺はやっぱり胸の奥が痛くて苦しくて、ついジレンの頬についた米粒を取ってパクっと食べて甘やかしてしまう。


ジレンは俺のそんな行動が嬉しかったのか、ニヤニヤしながら前歯を出して笑っていた。


つづく

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