第10話
公園をあとにした俺たちは、ジレンの真っ黒い服と変わったデザインのスニーカーを買いに行き、ジレンがしょうが焼きが食べたいというので俺はジレンのために料理を作った。
ジレンはふとした時にウサギの野生の血が目覚めるのか、目つきが野生の目に変わる瞬間があったが、俺に忠告されてからは本人なりに俺の言うことを聞こうと努力しているようで、下唇をギュッと噛んで拳をグッと握って目覚める本能を堪えているようだった。
しかし…
こちらの本能はどうやら我慢出来ないようで…
T「ダメだって言ってるだろ!!こういう事は好きな人とだけやるんだよ!!飼い主とペットはこんな事しないんだって!!」
ベッドの中でジレンは俺の上に跨がり、鼻息荒く首筋にキスを落とす。
思わず力が抜けそうになる俺は必死でジレンに抵抗する。
J「我慢出来ない…隣で寝てて我慢しろって言う方が無理な話。」
T「じゃ、ソファで寝ろ!!」
J「彼女に…後ろめたいから俺とシたくないの?」
ジレンは俺の上に跨ったままそう問いかける。
T「こういう事は好きな人とだけするんだよ。俺は前の飼い主とは違う。エサ代を身体で払えなんて言わない。ジレンを飼うと決めた時に面倒見る覚悟をして連れて帰った。だからもうそんな事しなくていいんだよ…もっと自分のこと大切にしろ。」
J「じゃなんで、タケルくんは俺にキスしたの?」
ジレンは俺の両手首をベッド押し付け、あの揺れた瞳で俺を見つめながらそう問いかけ唇をかすめるだけのキスをする。
昨日までならその目を見れば同情心から胸が痛かったのに、たった数十時間しか経たない今ではその目に胸がドキッと跳ねる。
T「それは……」
J「タケルくんは俺のこと好きじゃない?」
T「好きだけど…」
J「ならいいじゃん…」
ジレンはそう言って俺の服をまくり上げて脇腹を撫でると唇に吸い付き俺はまた、そのままジレンに抱かれる。
頭ではこんな関係はダメだと分かっていても、目の前で俺に夢中になっているジレンを見ると、不思議と胸が高鳴ってしまう。
ジレンの顔が快感に歪み、甘い吐息をこぼせば俺は自然とジレンに手を伸ばしジレンは俺をギュッと抱きしめる。
俺はそんなジレンが愛しくてたまらなくて、ジレンを自分の腕の中に閉じ込めた。
散々ジレンに抱かれた俺は気怠さを纏ったままゆっくりと瞳を閉じた。
そして、次に目を覚ました時には…
ピピーッ!!ピピーッ!!
永遠に頭の中に流れる耳に響く機械音が俺を夢と現実を彷徨わせる。
もう少し…もう少しだけ眠っていたい…
そう頭の中で唱えた俺はハッとして目を一気に開け、飛び起きて横にあるスマホを見ると…
T「やばぁあぁぁあぁぁい!!寝坊したぁぁぁあぁぁあ!!」
時計は9時1分と表示され、もう既に始業時間が1分過ぎていた。
横には真っ裸のまま大の字で眠る俺の可愛いペット。
風邪をひかないようその身体に布団を投げ、俺は慌てて準備をするとジレンも起きたのかベッドの上でゴソゴソとしている。
T「ジレン!!俺、今から仕事だから!!今日はいい子にして待ってるんだよ!!」
J「やだよ…俺も一緒に行きたい…家で1人とか寂しい…死んじゃう…」
T「仕事だから仕方ないだろ!!困らせるなよ…」
顔を洗った俺は鏡の前で服を着ながらそうジレンに言った。
J「タケルくんの仕事ってなに?」
T「俺の仕事は…ペットショップの店員だよ。」
J「じゃ俺も行く!!」
T「えぇ!!!?」
ジレンはそう言って飛び起きると昨日、俺が買ってあげたばかりの黒い服に袖を通し準備をした。
つづく
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