席替え
今日の授業が一通り終わり帰宅する時間。いつもなら帰宅したり、部活に行ったり各自で各々過ごすのだが今日は少し違う。皆ソワソワしながら担任の帰りを待っている。かくいう僕も少しソワソワしているのだが。
原因と言えばやはり、午前の授業で先生が言ったことだろう。
『あ、それとお前らの担任の先生から連絡が1つ。今日の帰りに席替えをすると伝言を預かってたから言っておくぞー』
ここの高校に入学してから初めての席替えである。ソワソワするのも無理は無い。
ガラッ
「はい皆~!席替えするわよ~!」
水無瀬先生が教室に入ったきた。
クラスのみんなが一斉に声を上げる。ある者は歓喜の声を、またあるものは友達と離れたくない為に悲観の声を。
「水無瀬ちゃん席は何で決めるのー」
「はいそこ!ちゃん付けしない!!席はくじ引きで決めるから名簿順で取って行ってね~」
クラスのお調子者が先生に質問する。水無瀬先生は今年ここの高校に着任したらしく、どこか幼い見た目からちゃん付けで呼ばれている。尚本人はちゃん付けで呼ばれるのを気にしている模様。可愛そうに。
先生が黒板にくじに対応する席を書いていく。
教室の1番左後ろ、窓際の主人公席なんて呼ばれている30番の席が狙い目か。いやでも前意外だったらなんでもいいや。
「それじゃあ私から行ってきますね」
「つぐみ行ってらっしゃーい!ねぇねぇ、夕はどこら辺に座りたいとかある?」
「んー、座りたいところか。そこまでこだわりはないけど」
「えー?とか言っちゃって、実はあったりー?」
「はいはい、いいから前向いときな」
軽くあしらう早瀬さん。周りの人も興味津々で聞き耳を立てている。彼女たちは人気なため気になるのだろう。
「いやー、やっぱり早瀬さんっていいよなぁ。まじで隣の席になりたいわぁ」
「何?お前早瀬さん狙ってんの?」
「いや、もしかしたら仲良くなれるかもじゃん。相川さんと柊さんは東堂と藤川がいるからあれだけど早瀬さんならワンチャンあるでしょ」
僕の席の近くの男子たちがそんな会話を。そういえばあそこのグループで彼氏がいないのって早瀬さんだけなんだよな。早瀬さんとの通話で知ったことだ。結構有名らしいけど全然知らなかったや。
「あれ?次坂本くんだよ~!」
「あ、今行きます」
そんなことは置いといて僕の番が来た。
後方から強い視線を感じる。
いや、そんなことはいい。
とりあえず前だけは嫌だ前だけは嫌だ!特に教卓の前のアリーナ席だけは嫌だー!
「ふぅ·····」
覚悟を決めよう。
てい!
25番
「あ·····。先生どうぞ」
「はーい、25番ね」
くじを返しながら元の席に戻る。
30番じゃなかったか·····。
悔やんでも仕方ない。黒板で24番の席の位置を確認していく。
「25·····25·····」
お、30番の右隣じゃん。これならまだ全然いい方だろう。
「あー、後ろまた埋まっちゃったねー。ねぇ夕どうしよう、もしかしたら前になっちゃうかも!?」
「·····30番。もしくは右の20番·····。いける。私なら必ずいける··········」
「あの夕?少々怖いのですが·····」
何やら難しい話でもしているのだろうか。物々しい雰囲気だ。
「はーい、どんどん行くよ~!」
そこからはスムーズに進んで行った。徐々に席が埋まっていき、半分をの席が埋まったところだ。ちなみに僕の右隣はクラスの大人しそうな人に決まった。
「は~い、早瀬さんの番だよ~」
クラスが静かになる。皆、早瀬さんがどこの席になるか気になるのだろう。
「右の20番は埋まった。残るは30番。いける私ならいける」
早瀬さんは小声でブツブツ
「あ、あの、みんなどうしたの~?」
クラスの異様な雰囲気に先生もタジタジです。
「ふぅ。これで·····」
早瀬さんが引いた!果たして何番なんだ!!!
「先生どうぞ」
「あ、はいぃぃ」
先生も中身を確認していく。生徒が今か今かと待っている!はたしてどうだ!?
「お!30番。良かったね~!人気な所だよ~」
30番だ!主人公席は早瀬さんの物だー!
「次は柊さんだよー!どんどんいこーう!」
·····
··········
待って?30番ってことは
僕が唖然としてると、クラスの人が柊さんのくじを見ている間に早瀬さんが近づいてきた。
そして通り過ぎる時に耳元で
「これからよろしくね。坂本くん」
思わず振り向いてしまった。早瀬さんは唇に人差し指を当てニッコリ。なんだか嬉しそう。
みんながくじに夢中でよかった。今の僕の顔を見たらなんて言われるかわかったもんじゃない。
腕で顔を隠すように机に伏せる。口角が上がってしまう。思った以上に嬉しかったようだ。
「見てみて夕!29番、夕の前だよ!しかも私の前にはつぐみ、隣には幸樹!」
「はーい、東堂くんは23番ね。藤川くんの前だからって喋りすぎないように」
「分かってますって、喋んないっすよ!」
「おぉ·····。これは·····」
「これまたすごい偶然ですね」
これは神のイタズラか、はたまた必然か
「·····嘘でしょ?」
それは誰にも分からない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます