秘密の会話っていいよね
ピピピピ
「んん·····」
一定のリズムで鳴る電子音が聞こえる。カーテンの隙間から差し込む陽の光で目が覚める。どうやら朝のようだ。
「あー·····」
ダメだ。意識がまとまらない。視界の端に映り込むスマホで時間を確認。
7:20
いつも通りの時間だ。
「いつの間に寝てたんだ」
昨日何してたっけ?
ぼんやりとする意識の中、昨日の夜のことを思い出していく。
確か·····
「あ·····」
早瀬さんと通話して、そこから·····あれ?
そこからの記憶が無いぞ。
もしかして·····。
「寝落ち·····してた·····」
拝啓、お母様。
私はどうやら初めての通話で寝落ちをしてしまったようです。
─────────────────────
「あー·····」
自己嫌悪中です。
あー、ホントなんで寝落ちなんてしたんだろう。
大丈夫かな?いびきとかしてないかな?
「颯?さっきからホントにどうしたの?」
「いや、大丈夫。なんにもない。ねぇお母さん、僕っていびきとか普段する人?」
「いびき?いや、特に聞いた事ないわよ」
あー、よかった。取り敢えずは大丈夫かな?流石に今回に限ってするなんてことないでしょ。
「そっか、ならいいや。それじゃあ僕、学校行ってくるから」
「あらそう?それなら行ってらっしゃい」
母の出送りを後に学校へと向かう。
タイミングが合ったら早瀬さんに寝落ちのこと謝ろう。
そして時は進み一限目の授業中
いつも通り授業を受けようと思ったらふと、先生が
「ん?そういえば早瀬は休みか?」
そんなことを聞いてきた。
そう、今日は朝から早瀬さんが来ていなかった。
大丈夫かな、と謎目線で心配をしたがどうやら
「せんせーい、夕は遅刻でーす」
らしい。
珍しい。僕が知る限り彼女は今まで遅刻などをしたことがなかったので少し同様したが、彼女も人間だ。遅刻することぐらいあるだろう。
別に気にすることも無いだろう。
·····
··········
···············
後でLANEで聞いて見ようかな·····。
別に変な事じゃないだろう。知り合いのことが心配で連絡することぐらいあるはずだ。
うん。変な事じゃない。
悶々と考え中
ガラッ
「はぁ、はぁ、すいません、遅れました」
息を切らしながらおそらく急いで来たのであろう早瀬さんがやってきた。
「おーう、次から気をつけるようになー」
「はい、分かりました」
普段から優等生な彼女の事なので先生も強くは言うつもりはないようだ。
「昨日はお楽しみでしたね」
「うるさい」
彼女の後ろに席がある相川さんが何を言ってるかは聞こえないがおおよそ挨拶かなんかだろう。
視線を黒板に戻すとふと視線。
横目で視線の方を見る。早瀬さんが目立たないようにスマホを主張している。スマホ?
再び視線を黒板に戻す。後で確認してみよう。
「それじゃあ、今日の授業はここで終わりだ」
授業の終わりを告げるチャイムがなり授業が終わっていく。
すかさず僕はスマホを手に取り確認していく。すると1件のLANEが。先程のやり取りから考えて送り先は
早瀬夕
おはよう
やっぱりそうだった。
横目で彼女の方を見る。彼女は友達と会話をしながら合間合間にスマホを確認している。器用なものだ。
坂本楓
おはよう
早瀬夕
昨日はよく寝れた?
坂本楓
うん。昨日は寝落ちしちゃってごめん
早瀬夕
いいよ。坂本くんのかわいい寝言が聞こえたよ
「え·····!」
危ない大声で悶絶しそうだった。。思わず顔を赤くし早瀬さんを見る。早瀬さんは僕を見てなんだか楽しそう。
早瀬夕
嘘だよ。特に何も言ってなかったよ
坂本楓
よかった·····!
いやほんとに良かったよ。寝言なんて何を言ってるかわかったもんじゃない。
なんだか悔しくなってきたので少しばかり反撃
坂本楓
でも昨日の早瀬さんもすごいイキイキしてて可愛かったよ。
これはホントのことだ。昨日の早瀬はどこか声のトーンが上がって可愛らしかった。新たなる早瀬さんを見た気がする。真正面からは恥ずかしくて言えないけど。
「ゴホッ!」
早瀬さんが思いっきり咳き込んだ。周りの人も驚いて心配している。
「あら、大丈夫ですか?」
「夕大丈夫!?」
「あぁ、ごめんごめん。少しむせただけだよ」
顔を赤らめて少し涙目になりながらバレないようにこちらを睨む。あ、その表情可愛い。
早瀬夕
ねぇ
坂本楓
ごめん。でもホントだよ
「おーい、次の授業始めるぞー!」
もう少しやり取りしたかったが、ここで休み時間は終わり。なんだか秘密のやり取りをしているみたいでとても楽しかったや。
「あ、それとお前らの担任の先生から連絡が1つ。今日の帰りに席替えをすると伝言を預かってたから言っておくぞー」
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